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髙田賢三の人生をクリエーションでたどる。大規模個展『髙田賢三 夢をかける』の4つの見どころ

photo by Takahashi Kenji

1970年代に世界に名を馳せたファッションデザイナー、髙田賢三。彼が生み出したブランド「KENZO」や、作品の数々が現代ファッションシーンに残してきた影響は大きい。2020年に惜しまれながらもこの世を去った髙田の没後初となる大規模個展が、東京オペラシティ アートギャラリーにて2024年9月16日(月・祝)まで開催中。本展の見どころを4つに分けて紹介していこう。

髙田賢三はどのような人生を歩んだのか

展示をより楽しむためにじっくりと読み込みたいのが、髙田の人生の歩みをまとめた詳細な年表だ。会場の壁面に展示されているため、作品と年表を見比べながら進んでいこう。

「髙田賢三 夢をかける」展
photo by Takahashi Kenji

入ってすぐの部屋は、彼が生まれた時代背景や幼少期に影響を受けたもの、文化服装学院時代、KENZOの立ち上げ前後のことが細かく記されている。

髙田は1939年に兵庫県姫路市で誕生。11歳の頃には姉の影響で雑誌『それいゆ』『ひまわり』を愛読し、ファッションに興味を持ち始めたという。その後、一度は大学に入るものの、19歳で文化服装学院に入学。のちに日本のファッションシーンをけんいんするキーパーソンとなるコシノジュンコやピンクハウスの金子功とともに学んだ。

「髙田賢三 夢をかける」展
1970, photo by Iwata Hiroyuki

若手デザイナーの登竜門である「装苑賞」を受賞したことで、髙田のファッションデザイナーとしてのキャリアはスタートする。その後、日本の企業に就職するも、休職届けを出して渡仏。そのままパリに拠点を移し、1970年には自らのブランド、KENZOを立ち上げる。欧米にはなかった斬新な美意識で、日本人デザイナーのパイオニアとしてスターダムを駆け上がっていく。

「木綿の詩人」と称された70年代

本展では主に二つの年代にフィーチャーし、作品を展示している。一つはKENZOを立ち上げた70年代だ。髙田は1970年4月にパリのパサージュ、ギャラリー・ヴィヴィエンヌにブティックをオープン。渡仏から5年後というスピードだった。

彼の名をヨーロッパに響き渡らせたのは、1970年春夏コレクションで発表した麻の葉模様のドレスだ。雑誌『ELLE』の表紙にばってきされ、日本の布地を使った新鮮な美しさで驚きを与えた。その次の秋冬コレクションでは、当時は春夏の素材として捉えられていた木綿を採用したことで、今までにない提案を行う。

「髙田賢三 夢をかける」展
photo by Takahashi Kenji

「木綿の詩人」と称された髙田は、日本的な素材や柄、着物のようなパターンを用いて服作りを行うことで、西洋的な美意識が基準とされていたファッション業界に風穴を開けた。「アンチクチュール」「ペザント・ルック」「ミリタリー・ルック」など、KENZOを代表する作風も見てとれる。

「髙田賢三 夢をかける」展
KENZO 1971-1972 A/W ©︎S0-EN, photo by Masubuchi Tatsuo

もう一つ、70年代のクリエーションを見ると気がつくことがある。ふんわりとしたボリュームスリーブやフリル、リボン。そしてアニメのようなポップなカラーリングなどが随所に取り入れられていることがわかる。今現在、日本が海外から評価されている「カワイイ」という要素が、ここからも脈々と受け継がれていることを感じられるだろう。

「フォークロア」で花咲いた80年代

日本を意識したクリエーションが続いた70年代から一転し、80年代はまるで世界旅行をするかのように様々な国のカルチャーを取り入れた作品が並ぶ。この時代の一大潮流であったフォークロアに着目したKENZOの服たちは、伝統的でありながら今見てもいろあせていない。

「髙田賢三 夢をかける」展
photo by Takahashi Kenji

髙田が世界の民族衣装をインスピレーション源にしたのは、多くの民族衣装に「四角い平面の布地」「直線裁ち」という、和服との共通点が見られたからだ。そこにヨーロッパで習得した立体裁断の技術を融合させることで、モダンでありながら生活に根ざした優しさを感じる服に仕上げている。

「髙田賢三 夢をかける」展
KENZO 1987 SS Bunka Gakuen Fashion Resource Center

1980年代といえば、日本人デザイナーである川久保玲や山本耀司がパリコレクションで活躍し世界に進出しだした時期。二人は「黒の衝撃」と呼ばれる西洋的な価値観を覆すコレクションで話題をさらったが、その一方で髙田は自身が得意とする多彩な色柄使いをさらに成熟させた「ニューカラー」と呼ばれるスタイルで独自の道を進んだ。

「髙田賢三 夢をかける」展
KENZO 1984-1985 AW Bunka Gakuen Fashion Resource Center

彼が得意とする鮮やかな花柄の作品を中心に数多くのトルソーを並べたフロアは、まさに圧巻の光景。自由をおうかすることで文化が成熟し始めた、80年代のエネルギッシュなパワーを感じることができるだろう。

見逃せない貴重なアイテムの数々

会場の中でも特に見逃せないのが、入り口に展示されている2体のルック。一つは髙田が1960年に「装苑賞」を受賞した時のもの。ケープのようなシルエットのショート丈ジャケットとひざ丈のペンシルスカートのアイボリーのセットアップだ。ベルトとトップスはターコイズカラーで合わせたバイカラーのルックは、その後の髙田のクリエーションにつながるものを感じる。

「髙田賢三 夢をかける」展
The 8th SO-EN Award winning works 1960 Bunka Gakuen Fashion Resource Center

もう一つは、1982年秋冬のショーに登場したウェディングドレス。約20年間にわたり集めたリボンを使い、「花」をテーマに制作した大作。ピンクの生地に全長200m、20種類以上の花柄のリボンを縫い合わせて作られている。このドレスは彼が手がけるKENZOとして最後となった、1999年に行われたショー「30ans」で山口小夜子が着用した。

「髙田賢三 夢をかける」展
KENZO 1982-1983 A/W photo by RICHARD HAUGHTON

会場を出た廊下には数々のデザイン画が展示されており、彼の筆跡を直に感じることができる。

「髙田賢三 夢をかける」展
photo by Takahashi Kenji

今とは異なり、日本人ファッションデザイナーが世界で活躍するには高いハードルがあった時代に、先陣を切って飛び出した髙田賢三。世界に名を残したファッションデザイナーの軌跡をその目で確かめて。

text: Azu Satoh

・村田晴信が語る「ミラノと東京で模索した、日本人が作る素敵なドレスとは」
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お問い合わせ先

東京オペラシティ アートギャラリー
https://www.operacity.jp/ag/

関連情報
  • 髙田賢三 夢をかける


    会期:2024年7月6日(土)〜9月16日(月・祝)
    会場:東京オペラシティ アートギャラリー
    開館時間:11時〜19時(最終入場は18時30分)
    休館日:月曜日(祝日の場合は翌火曜日)、8月4日(日・全館休館日)
    入場料:一般 1600円/大学生・高校生 1000円/中学生以下無料
    https://www.e-tix.jp/takadakenzo/
    巡回:2025年4月12日(土)~7月21日(月・祝)姫路市立美術館

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