カルティエと日本の大規模展が開幕! 400点以上におよぶジュエリー&アートでたどる50年の歴史

今年は「カルティエ」が、日本に最初のブティックを開いて50年の節目。これを記念した、展覧会「カルティエと日本 半世紀のあゆみ 『結 MUSUBI』展 ― 美と芸術をめぐる対話」が7月28日まで開催中だ。舞台となるのは、左右対称の構造で知られる東京国立博物館 表慶館。歴史的建造物の中をたどりながら見つけた、カルティエと日本の歩みとは?

今年は「カルティエ」が、日本に最初のブティックを開いて50年の節目。これを記念した、展覧会「カルティエと日本 半世紀のあゆみ 『結 MUSUBI』展 ― 美と芸術をめぐる対話」が7月28日まで開催中だ。舞台となるのは、左右対称の構造で知られる東京国立博物館 表慶館。歴史的建造物の中をたどりながら見つけた、カルティエと日本の歩みとは?
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東京国立博物館 表慶館の中心に展示されるのは、若手アーティスト澁谷翔によるインスタレーションだ。本展のポスターも手掛けた澁谷は、「ニューヨーク・タイムズ」紙を使った作品で知られるNY在住のアーティスト。カルティエ現代美術財団が発足した1984年生まれの彼に、展覧会の幕開けを飾るという白羽の矢が立った。
カルティエより依頼を受け、歌川広重と『東海道五十三次之内』(1832)にオマージュを捧げるというコンセプトのもと、東京・日本橋から出発し、47都道府県を旅した澁谷。「歌川広重が生きていた頃と違い、僕の絵を見てここに行きたいというものにはならないが、空の景色であれば誰もが思いをはせることができるのではないかと考えた」とその地で見た、空の景色を題材に毎日、その地の日刊紙の一面に描いた50作品の連作を仕上げた。

中央ドームの天井までの吹き抜けが特徴のモザイクタイルのエントランスホールに入ると、四面に50枚の新聞紙がグラデーションを帯びて広がる。カルティエが日本で重ねた50年の年月とも重なるようだ。
向かって右側の展示室では170点以上の展示を通して、芸術と美へのオマージュと両者の対話をたどっていく。最初の展示室「コレクションから創造へ:共鳴と照応」では、ルイ・カルティエの日本美術コレクションから着想を得たコレクションの数々が、着想源となった古美術も交えながらずらりと展示。手鏡の形、神社の建築、印籠などさまざまなものが、カルティエの歴史の中に潜んでいるさまが見られるほか、なかでも大きな影響を与えたであろう型紙のモチーフが落とし込まれた2024年の新作腕時計も展示されている。

杉本博司の「春日大社藤棚図屏風」が出迎える「自然への賛歌:モチーフとスタイル化」では、動植物をモチーフにしたジュエリーや、19世紀末にヨーロッパに紹介された日本古来の藤の花をかたどるブローチを展示し、杉本の作品とも呼応した空間設計が印象的だ。
日本では5回の展覧会を行ってきたカルティエ。その展覧会をたどる展示が階段の上の一室に設けられた。中でも2009年に同じく表慶館で行われた展示で、パティアラのマハラジャが所有したネックレスや、ウィンザー公爵夫人が所有した「パンテール」ブローチ、庭園美術館で開催された展示で上陸した「スクロール」ティアラなど。眼福とも言える作品の数々に圧倒されるだろう。

日本でのイベントを開催するたびに、紡ぎ続けた日本との関係性。その歴史を包括する部屋「1974-2024:日本におけるカルティエー共有される同時代の精神」もある。ここでは、日比野克彦に依頼したトリニティ リングを想起させる作品「Glass object TRINITY」(1997)や、香取慎吾が手掛けたタンク ウォッチ100周年の絵画「時間が足りない:need more time」(2017)など、貴重なアートワークを一望できる。
アーチ天井を見上げることのできる2階の吹き抜け回廊からは、カルティエ現代美術財団と日本のアーティストたちとの対話にスポットを当てる。財団と縁のあるアーティストたちを横尾忠則が描く、ポートレートシリーズがそのスタートを切る。

創造の実験室でもあるというカルティエ現代美術財団。領域にとらわれない自由な方針で、これまで招致してきた日本人アーティストも多岐にわたる。展示室「境界を超えて:複数の創作分野の探求」では、エイポックの前身ともなった三宅一生の「ジャスト・ビフォー イッセイ ミヤケ1998年春夏コレクション」(1997)や北野武による「Untitled」(2021-22)、中川幸夫の「闡(ひらく)」(1976)などを通して、その多彩な表現を目撃できる。
「カルティエ現代美術財団と写真 — 展覧会/コミッション/コレクション」では、カルティエ現代美術財団でパリ初の個展をひらいた荒木経惟、杉本博司、そして同地で展示を幾度か行ってきた森山大道といった写真界の巨匠の作品がならぶほか、カルティエ財団のコミッションワークとして制作された川内倫子の写真を紹介。

展覧会を通して思い起こされる、特別な記憶の物語を集積した最後の展示室「カルティエ現代美術財団が語る日本と日本人アーティストとの物語」へと続く。ここでは、北野武がカルティエの職人たちと制作した彫刻のオブジェや、当時21歳だったアーティスト松井えり菜の肖像画(2003、2004年)、そして、ビデオを通して石上純也による2005年の個展を紹介。アーティストたちとの対話から生まれた、さまざまな軌跡が作品や、その他の特別制作を通して奥深く響く。

最後に、展覧会会場にはところどころに、インスタレーションが用意され、来場者は予期せぬアートに遭遇できる。真ちゅう製の優美な手すりが象徴的ならせん階段の壁に描かれた束芋による「flow-wer arrangement」(2008)は、人体の一部に草木を生けるドローイング作品で、ビデオインスタレーションとして、時折花が発光し、幻想的な雰囲気に包みこむ。また、日本初展示となる、宮島達男のインスタレーション「Time Go Round」(1995)も見逃せない。フランス個展の際に、カルティエ現代美術財団が制作を依頼したもので、時間と無限空間の瞑想的な旅に誘う。さらに、北野武の新作絵画(2018-2023)も初展示されている。
全120点にもおよぶ「カルティエ コレクション」とプライベートコレクション作品、50点以上のカルティエのアーカイブ、28名のアーティストの協力、そして150点以上の現代アーティストによる作品(50周年を記念してカルティエが制作依頼をした50点を含む)。数字を並べるだけでも膨大で貴重なピースがそろう本展。足どりをたどると、カルティエがどれだけ日本人に寄り添ってきたのか、そしてカルティエにとって日本がどれだけインスピレーションの宝庫だったのかを体感できるだろう。
text: Mio Koumura
・「カルティエ」と日本の50年をひもとく展覧会が東京国立博物館で開催
・カルティエブティック 麻布台ヒルズに新店舗がオープン
「カルティエと日本 半世紀のあゆみ『結 MUSUBI』展―美と芸術をめぐる対話」
会期:~7月28日(日)
休館日:毎週月曜日、7月16日(火)※7月15日(月・祝)は開館
開館時間:9時30分~17時、金・土曜日は19時まで(入館は閉館の30分前まで)
会場:東京国立博物館 表慶館
〒110-8712 東京都台東区上野公園13-9
観覧料:一般¥1,500、大学生¥1,200
お問い合わせ先:ハローダイヤル 050-5541-8600
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