出会う人すべてが運命の人?『パスト ライブス/再会』は観るとすべての選択や後悔を抱きしめたくなる人生肯定映画
Copyright 2022 © Twenty Years Rights LLC. All Rights Reserved
みなさんは「ソウルメイト」という言葉を知っているだろうか? 日本語では「運命の人」という意味だ。この言葉をロマンチックな意味で認知している人が多いと思う。映画『パスト ライブス/再会』も、12歳で離れ離れになった幼なじみのふたりが、24年の時を経て再会する7日間を描いたラブストーリーなので、きっとお互いにソウルメイトだと再確認し、再び恋が盛り上がる物語に違いない。私はそんな気持ちで劇場に向かっていた。しかし、映画界の最先端を突き進む、アメリカの独立系エンタテインメント企業A24と韓国CJ ENM初の共同製作で贈る映画だ。そんな気持ちは全く予想もしていなかった形で裏切られることになる。
Copyright 2022 © Twenty Years Rights LLC. All Rights Reserved
『パスト ライブス/再会』では大きなテーマの軸として“イニョン”という韓国語が登場する。日本語では運命や縁、摂理という意味を持つ。知らない人とすれ違った時に、偶然袖が触れ合う瞬間が訪れるのは、前世で二人のあいだに何かがあったから…という主人公・ノラが好きな哲学だ。仏教に親しみがある人はこの考えを理解できるだろう。偶然のように思えるすべての出来事は“イニョン”が作用している、という哲学がこの映画の核である。
“イニョン”は24年後に再会した運命のふたりだけに作用するものではない。一度きりの人生、限られた時間の中で出会ったすべての人との間に“イニョン”があるという。あの時、こうしていたらふたりの恋はもっと上手くいったはず…、別の選択をしていればもっと幸せになれたはず…といくつもの「もしも…」を考えたことがある人にとって、この“イニョン”という哲学はあなたのすべてを肯定し、抱きしめてくれるだろう。出会う人すべてが運命の人。運命を大きく変えてくれる出会いだけでなく、あなたの気分を害するような人であっても、あなたの物語を彩るために登場しているのかもしれない、と人生を豊かにする視点をもたらす哲学に出会える。
大事な時に勇気が出なかった過去の自分、こんなはずじゃなかったと正しい選択をできなかった自分を責める罪悪感に苦しむ夜もあったが、その瞬間正しいと思って決めた選択に間違いなんてひとつもないと教えてくれるかけがえのない大切な映画となった。
Copyright 2022 © Twenty Years Rights LLC. All Rights Reserved
すれ違い続ける恋を見守るラブストーリーだと「あと1センチの恋」や「ビフォア・サンライズ 恋人までの距離」シリーズなどが代表的だが、『パスト ライブス/再会』は恋の切なさだけでなく、人が生きる意味や永遠に失うことのない真実の愛について描かれる。
ノラは幼い頃に移住した韓国系カナダ人。物心ついた頃から人生の目標を立て、着実に夢を叶えていく野心家で、恋と夢の実現を両立させるかっこいい女性だ。監督のセリーヌ・ソンは恋愛映画の主人公の女性の多くは、自身を確立する前の悩めるキャラクターが多い中、情熱も芯の強さも、安定感もあり、時折12歳の少女のような表情も見せる…。そんな主人公を演じられる俳優を探していたところ、グレタ・リーに出会ったという。グレタ・リーは本作をきっかけにファッションアイコンとしても魅力を放ち、ロエベ フレグランスの広告塔にもなっており、今後も注目していただきたい俳優のひとりだ。
アカデミー賞ではロエベの2024年秋冬コレクションのドレスを着用したグレタ・リー(スタイリングはDanielle Goldberg)。作品賞と脚本賞にノミネートした監督セリーヌ・ソンも全身ロエベのカスタムタキシードスタイルで登場し、存在感を放った(スタイリングはBritt Theodora)。
いくつにも重なる“イニョン”があるから、私は今ここにいる。この人生を選んでいなければ出会えなかったすべての人や瞬間に感謝が湧き上がってくる美しいラストはぜひ劇場で。あなたにもこの『パスト ライブス/再会』がイニョンとして人生に輝きを与えてくれることを願っている。
text: DIZ
・語らずにはいられない⁉️ 各界から絶賛されるアカデミー賞受賞作「落下の解剖学」
・アカデミー賞2024ノミネート全リスト『オッペンハイマー』が最多13部門