「シャネル・ネクサス・ホール」で写真家ジョージ ホイニンゲン=ヒューンの日本初個展を開催
Divers, Swimwear by Izod, 1930 ©The George Hoyningen-Huene Estate Archives
「シャネル・ネクサス・ホール」は、アート、ファッション、映画の結びつきを写真で表現した先駆的なフォトグラファーであるジョージ ホイニンゲン=ヒューン(1900-1968)の日本初個展「Master of Elegant Simplicity:ジョージ ホイニンゲン=ヒューン写真展」を、2024年2月7日(水)から3月31日(日)まで開催。代表的なファッション写真に加え、シャネルとの交流を物語る作品や、著名人のポートレート、旅先での風景を収めた作品など、約65点を紹介する。
ジョージ ホイニンゲン=ヒューンは、幼少期をロシアのサンクトペテルブルクとイギリスのロンドンで過ごし、1920年にフランスのパリに定住。キュビズムの画家であるアンドレ ロートから教えを受け、姉が手掛けるファッションメゾンのためのスケッチを描いていたところ、『ヴォーグ』誌にその才能を認められ、写真撮影用の背景やセットの制作に携わる。
そして、1926年頃から自身で写真を撮るようになると、たちまち『ヴォーグ パリ』誌のチーフフォトグラファーに抜てきされる。
彼の作品は、スタジオの照明を巧みに操ることでモデルのシルエットを立体的に写し出し、豪華なファブリックの質感を際立たせると共に、アールデコ、新古典主義、バロック様式など、時代を問わず偉大な建築家や画家たちからインスピレーションを得たさまざまな要素が取り入れられている。
また、クチュール写真に、動きと同様にモデルの自然なたたずまいといった要素をもたらした最初のフォトグラファーの一人であり、「モデルは女性であり、石こう像ではない」とコメントを残したように、どのモデルとも一人の人間として向き合っていた。
ガブリエル シャネルとの出会いは、彼がパリに定住した1920年代初頭のこと。
ファッション誌のためにシャネルを撮影した際には、シックなモノクロームのスーツからリラックスしたビーチウェア、豪華なイヴニングドレスまで、シャネルのデザインの美しさやその輝きを余すところなく捉えている。
サルバドール ダリ、ジャン コクトー、クリスチャン ベラール、セルジュ リファールなど、マドモアゼルを取り巻く多くの仲間たちとも親交を深め、『ヴォーグ』誌を離れて『ハーパーズ バザー』誌で働くようになってからも、シャネルのルックを撮り続けた。
さらにファッションの領域を超え、ハリウッドスターのポートレートを制作したほか、アフリカ、ギリシャなどの世界各地のすばらしい風景をとらえた写真集も制作している。
本展は、20世紀のスタイルを象徴する2人のつながりをたたえると共に、日本で初めてホイニンゲン=ヒューンの作品を大規模に展示するものである。
text: Tomoe Tamura
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