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齋藤精一氏が語るクリエイティブの現在と未来

クリエイティブの現在、そしてどんな未来へ向かうのか──。クリエイティブディレクターでパノラマティクス主宰・齋藤精一氏が「POWER OF CREATIVE」をテーマに講演し、クリエイティブのこれまでと現在、そして未来の姿について語った。本講演は、「YOMIURI EXECUTIVE SALON(YES)2023」のメインイベントとして、2023年10月23日に東京・六本木のアカデミーヒルズにて行われた。

時代とともに進化し続けるクリエイティブ

2023年度グッドデザイン賞審査委員長や、2025年開催「大阪・関西万博EXPO」の共創プログラムディレクターを務め、ものやコトのデザイン、プロデュースなどクリエイティブな取り組みの最前線を走る齋藤精一氏。齋藤氏は、まず現在のクリエイティブの在り方についてこう切り出した。

「昨今、時代の流れとともにクリエイティブの在り方が変わってきています。1980年代、“クリエイティブは、しかるべき訓練を受けた人たちが成すもの”でした。それぞれがプロフェッショナルとして孤立して存在していて、業界も分野ごとにくっきりと縦に分かれていたんです。でも、いまは、ものづくりをするにしてもイベントをするにしても、“ひとつの分野だけで完結させる”ということが少なくなり、それぞれの知見や考え方を“シェア”する動きがみられるようになりました。モビリティ、ものづくりなど、多様な分野が情報を共有しながら緻密につながっていて、その相乗効果でクリエイティブが生まれる。僕の仕事は、そのつなぎ目になることです。2つ以上の異なる分野をどういう角度からつなぎ、いかに面白くするか、そこにやりがいを感じます」

クリエイティブディレクターとしての自身の思いをそう話したうえで、世の中の価値観の変化もまたクリエイティブに大きな転換点をもたらしていると続ける。

齋藤精一氏、パノラマティクス説明

「いまもっとも重要とされている価値観は、“豊かさ”です。ソーシャルという言葉が徐々に使われるようになった2000年頃から、人々は、社会に豊かさを求めるようになりました。そこから時が経ち、コロナ禍を経て、現在では心身と社会的な充実の両方を追求する“ウェルビーイング”や、共有の新しい形である “コモンズ”といった豊かさの指標が浸透してきています」

この“豊かさ”を重視する価値観によって、主にビジネス面において、クリエイティブはさまざまな変化を遂げている。

「まず大きな変化として、サステナビリティという新たな指標が加わりました。それから、シェアの考え方が主流となったことで、デジタル実装が強化されたこと。さらに、社会への影響を意識したマーケティング戦略が顕著になったことなどが挙げられます」

企業や団体によるクリエイティブな取り組みは、社会の求める“豊かさ”に応えるためのもの、社会課題に対してどう向き合うのかを示すものへと変わってきたのだ。変化は、これだけではない。

「DX化の影響を受けて、クリエイティブな取り組みに対する投資にどういうリターンがあるのかが可視化されてきたのも、ポジティブな変化のひとつ。近年ではソーシャルデザインやローカルデザインといった、社会や街にポジティブな変化を与える活動を行う企業も多くみられます」

自分たちの活動をまるごと広告化してブランド価値を高めるというスタイルが、現在の企業ブランディングの主流になりつつあるのだという。クリエイティブのつなぎ目を担う同氏は、こういったブランディングの流れについて、次のように話す。

「僕が何よりも大切だと思うのは、ブランド価値を高めるだけでなく、その取り組みがきちんと地域に還元されること。たとえば地域材を利用して建物を建てることで、地域にも利益が出るとか。そういったふうにアートと地域が結びついていけばいいですね」

Profile

齋藤精一(さいとうせいいち)

クリエイティブディレクター、パノラマティクス主宰
1975年神奈川県生まれ。建築デザインをコロンビア大学建築学科で学び、2000年からニューヨークで活動を開始。03年の越後妻有アートトリエンナーレでアーティストに選出されたのを機に帰国。フリーランスとして活動後、06年株式会社ライゾマティクスを設立。16年から社内の3部門のひとつ「アーキテクチャー部門」を率い、2020年社内組織変更では「パノラマティクス」へと改める。2020年ドバイ万博日本館クリエイティブ・アドバイザー。2025年大阪・関西万博EXPO共創プログラムディレクター。2023年グッドデザイン賞審査委員長。

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