×

初代尾上眞秀が初舞台。舞台を華やかに彩る祝幕は「シャネル」が制作をサポート

初日にさきがけておこなわれた祝幕のお披露目会見で幕を実際に見た眞秀は、「写真で見た時にはドットのプリントかと思ったけど、近くで見たら布を貼ってあってびっくりしました。カラフルなのが好きだから、僕的にはすごく好き」と気に入った様子。眞秀の祖父で人間国宝の尾上菊五郎も「面白い色遣い。眞秀が演じる岩見重太郎も皆さんと相談しながら作っておりますが、こういう斬新なデザインの幕のなかでお芝居ができるのは幸せと思っております」と感想を述べた。

祝幕のシャネル
〈左から〉現代アーティストのグザヴィエ・ヴェイヤンと初代尾上眞秀。ヴェイヤンは眞秀の両親とも親しく、眞秀の成長を見守ってきた。「自分が習得していない言語を話す子どもたちを見ると神秘的なものを感じる。歌舞伎の舞台での彼には、その神秘的な力を何十倍にも感じる」とコメント

色鮮やかなシルクオーガンザ約8,900が舞う

デザインについてグザヴィエは「デリケートでシンプルに、軽やかに流れるようなものを作りたかった」と述べ「幕が舞台に引かれたときをイメージして、奥行きよりも横幅が広く、花道が設けられた特殊な形状の歌舞伎の舞台の距離感を表現したいと思いました。近くで見ると抽象的ですが、遠くから見ると具象的に見える。私たちをとりまく環境のメタファーでもあります」と説明した。

軽やかに見えるのは、シルクオーガンザのパーツが上部3点のみで留められており、パーツがひらひらと揺れるからだ。幕を実際に制作したモンテックスのアーティスティック・ディレクター、アスカ・ヤマシタによると、伝統的な刺繍ではなく、洋服のタグ付けに使われるタグガンを用いて留めているという。

「シルクオーガンザをスパンコールのように使いたいというのはグザヴィエからのリクエストでした。全体をつけるのではなく、上部だけ留めるのは詩的だと思いました。手縫いではなく、タグガンを使ったのは、グザヴィエが『手作業(作品の意図に合わせ)ではなく工業的なシステムで作ってほしい』と望んだから」とヤマシタは話した。タグガンを制作に用いるのは、もちろん初めてだ。

グザヴィエがフェルトペンで描いたデッサンをコンピューターソフトでピクセル化し、円形にカットしたシルクオーガンザ約8,900枚で再現。25.4m×5.3mの幕は12枚のパネルに分けてフランスで制作され、日本で一枚の引き幕に仕上げられた。

「制作中は全体を観ることができませんでしたから、舞台に引かれた幕とパーツの動きをみて感動しました」とヤマシタ。職人約30人が800時間を費やして完成したというのは、さすがメティエダールのアトリエだ。

リンクを
コピーしました