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「ゲラン」新メイクアップクリエイティブディレクター、ヴィオレットはインフルエンサーで起業家で一児の母

インスタグラムのフォロワー数42.3万人を誇り、自身のブランド「VIOLETTE_FR」の起業家としても知られ、今、美容好きの女子たちにとって憧れの存在であるヴィオレット。その彼女が「ゲラン」の新メイクアップクリエイティブディレクターに任命されたというニュースは、驚きとともに瞬く間に業界中に広がった。メイクアップアーティストとして、起業家、インフルエンサー、そして一児の母としてマルチな才能を持つヴィオレットにインタビュー。その魅力に迫る

──メイクアップアーティストになったきっかけと、これまでの活動について教えてください。

VIOLETTE(以下、V) もともとメイクや美容に興味があったわけではないのです。パリでアートとファッションを学ぶうちにたまたまメイクの面白さに気付きました。ある日、メイクアップアーティストの友人に誘われたパーティーで彼女の仕事を目の当たりにしたのですが、まるで顔に絵を描くように、服をデザインするようにメイクをする光景を見て面白いと思ったのです。ただ普通のメイクの仕事はしたくない、何か感情に訴えかけるアーティスティックな仕事がしたいと思い、19歳で渡米しました。パリからニューヨークへ行った当初はまだメイク道具を買うお金もなく、顔料のみを購入して自分でパレットを作って仕事をしていたのですよ。

ニューヨークではメイクだけでなく、セットデザインからフォトグラファーの仕事まですべてを監修し、より芸術的な作品を作り上げました。次第にさまざまなファッション誌から声がかかるようになって、パリに戻って26歳でディオールのメイクアップデザイナーに抜擢されました。2015年から再びアメリカに移住し、33歳でエスティーローダーのグローバルビューティーディレクターに就任、セフォラやドゥ・ラ・メールのコンサルティングなど数々のチャンスを得ました。

──自身のメイクブランド「VIOLETTE_FR」をアメリカで2021年4月に立ち上げましたね。どのような経緯があったのでしょうか?

V 実は、どうしても自身のメイクブランドを作りたいという夢がありました。ただフランスは若き起業家にとって厳しい現状があり、また美しさに対する一定の定義が常に存在していることに限界を感じていました。美に対して多様性があり、私のインスピレーションの元でもある、そして何よりも若者のビジネスに理解があるアメリカの土地でブランド作りを挑戦したいと考えたのです。実際、私はフランス製の車ですが、ガソリンはアメリカ製と言ったところですね。(笑)

ただし、それは容易なことではなく、ビジネスの経験のない若いフランス人メイクアップアーティストの女性にお金を出してくれる投資家を探すのに大変苦労しました。数ヵ月、資料作りとプレゼンに明け暮れ、ようやくロサンゼルスで最高のビジネスパートナーを見つけることができたのです。ちょうどその時期は妊娠中だったのですが、最後の最後までサポートしていただき、今年の4月にようやくアメリカと欧州でローンチすることができました。

ヴィオレットはディオール、エスティ―ローダーはじめ数々の美容ブランドで要職をつとめ、念願の自身のブランドを今年4月に立ち上げた

──「ゲラン」からメイクアップクリエイティブディレクターの話を受けた際、どのように感じましたか?

V 実はお声がけいただいた時はまさに自身のブランドを立ち上げたばかりで、両立は難しいのでは? と考えました。さらにコロナ禍で第一子を出産し、自分のブランドもスタートアップの段階、ラボはどこもコロナで閉まり、人に会えずすべてZOOMで会議をする中、クリエイティブで繊細な私はとてもそのような大役をお引き受けできる精神状況ではないと考えていたのです。しかし一方、フランス人として考えてみると、やはりこのような歴史あるブランドから声をかけていただいたことは大変名誉なことで、チャンスだと思いました。その後ゲランとブランドの過去と未来の話をたび重ねていくなかで、ではやってみよう! と決心がついたのです。

最初はゲランの仕事と自身のブランドのクリエイター兼社長としての超多忙な日々が想像できなかったのですが、今は私のパッションと仕事の際に出るアドレナリンが効いてか、うまく両立できるようになっています。

──あなたのパワーの源と、成功の秘訣は?

V 私のモットーに「The Sky’s the limit(不可能なことは何もない)」という言葉があります。自分で限界を作らないことが私をどこまでも前に進めてくれています。

そして本当に何かを成し遂げるためには3つの要素が必要だと考えています。まずは徹底的に朝から晩までハードワークをすること――実際にはするしかないのですが(笑)。次に他人の忠告に対してしっかり耳を傾けることです。人の意見を聞かないと、時に独りよがりな結果になってしまいます。そして最後に自分の芯の部分は絶対にぶれない強さを持つことです。それをなくすとクリエイティブなことができなくなりますからね。(後編に続く)

【インタビュー後編・「ヴィオレットが目指す未来」はこちら】

Profile

須山佳子(聞き手・構成)

すやま けいこ marie claireパリ特派員。東京生まれ、パリ在住20年。大学を卒業後パリに渡り、INSTITUT FRANCAIS DE LA MODEでファッション経営のMBAを取得。ファッション界で働いた後、日本の美容とライフスタイルブランドを欧州市場へ紹介するコンサルティング会社と、ECサイトhttp://www.bijo.parisを立ち上げる。高級デパート「 ル・ボンマルシェ」に定期的に招待され、年に数回ポップアップを開催している。公式Instagram:http://@keikosuyama_paris

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