ダミアーニ・グループCEOが語る、ラグジュアリーの本質と一貫性

ダミアーニ・グループCEOジェローム・ファヴィエ氏(スイス・ジュネーブで)
1924年創業のイタリアジュエリーブランド、ダミアーニを中核とするダミアーニ・グループは、2026年3月期に増収を維持し、通期売り上げは初めて4億ユーロを突破した。市場環境の不確実性が高まる中でも成長を続ける同グループについて、ジェローム・ファヴィエCEO(最高経営責任者)に話を聞いた。

ダミアーニ・グループCEOジェローム・ファヴィエ氏(スイス・ジュネーブで)
1924年創業のイタリアジュエリーブランド、ダミアーニを中核とするダミアーニ・グループは、2026年3月期に増収を維持し、通期売り上げは初めて4億ユーロを突破した。市場環境の不確実性が高まる中でも成長を続ける同グループについて、ジェローム・ファヴィエCEO(最高経営責任者)に話を聞いた。
──ラグジュアリー産業全体では、コロナ渦後の急激な回復を経て、世界的に成長の鈍化が見られます。
業界全体の成長減速にはさまざまな要因があります。地政学的、あるいは経済的な不確実性もその一つです。ただ、それだけではありません。一部のブランドやグループは拡大を続ける中で、ある種のピークに達しているとも感じています。
矛盾するようですが、「ラグジュアリーは産業であってはならない」というのがダミアーニの考えです。ラグジュアリーとは、クラフツマンシップ、特別性や希少性、そして何よりも「本物であること」にほかなりません。その本質は、大規模で企業的であることとはむしろ対極にあります。
私たちが市場トレンドを上回る成長を実現しているのは、家族経営という形を維持しながら、こうした理念を一貫して守っているからだと考えています。
──クワイエットラグジュアリーの価値観の広がりに代表されるように、消費者のニーズが変化しています。
それこそが、私たちの成功のもう一つの理由です。ダミアーニのスタイルは、洗練されたデザインと品格を備えたイタリアンエレガンスそのものです。見せびらかすこともなく、過度に装飾的でもない。しかし、決して退屈でもクラシックすぎるわけでもありません。個性を持ちながらも、タイムレスなエレガンスを感じさせます。それらは戦略ではなく、ダミアーニというブランドの本質です。
ダミアーニにとって日本は特に重要な市場です。消費者の好奇心が旺盛で、「本物のラグジュアリー」への関心が高いからです。私たちは、ダミアーニが「真のイタリアンラグジュアリー」であるということを、もっと伝えていく必要があると考えています。
──近年は多くのラグジュアリーブランドがハイジュエリーに注力しています。
ハイジュエリーはダミアーニにとってもきわめて重要で、私たちのDNAに刻まれています。創業100周年を記念した100点のコレクション(2024年)、イタリアへのオマージュである「Ode all’Italia」(2025年)に続き、今年はアート作品に着想を得た新作ハイジュエリーコレクションを発表します。
石の厳選からデザインに至るまでを手がけるのは、ジョルジョ・ダミアーニです。これらの作品を通じて、宝石の希少性と創造性の両面を感じていただけるはずです。


──ハイジュエリーは、職人技が凝縮したものでもあります。
ハイジュエリーは、私たちのクラフツマンシップの究極の表現です。金細工の町ヴァレンツァに創業当初から工房を構える私たちは、次世代育成のために「ダミアーニ・アカデミー」というインターンシッププログラムを設け、毎年30~35人程度の学生を受け入れています。修了後の義務はありませんが、大半の学生がそのままダミアーニで働くことを選びます。この取り組みは、有能な職人の育成と技術の継承に直結しています。
──ジョルジョ・ダミアーニ氏は2025年のインタビューで「情熱こそが誇り」と答えました。マネジメント層と職人はどのように情熱やビジョンを共有しているのでしょうか?
ダミアーニファミリーもヴァレンツァに暮らし、工房で職人たちとともに働いています。ただし、情熱は誰かに強制できるものではありません。工房には75~80歳のシニア職人もおり、彼らの息子、さらに孫まで、3世代にわたって同じ場所で働く例もあります。そうした人々の姿そのものが、若い世代にとっての手本となり、自然と情熱を生み出しているのだと思います。
それから、創造的で芸術性の高い仕事に携われることも、職人にとって非常に重要です。そうした環境を求めて、ダミアーニに加わる職人も少なくありません。

──ブランドのコミュニケーションにおいて、セレブリティやアンバサダーの影響力が増しています。
ダミアーニは2025年、K-POPボーイズグループ Stray Kidsのメンバーである I.N(アイエン)をグローバルアンバサダーに起用し、新しい世代へのアプローチを強化しています。彼とは単なる契約関係ではなく、ダミアーニファミリーの友人としての関係を築いています。最近のビデオクリップで彼がダミアーニのジュエリーを着用していましたが、それは契約にもとづくものではなく、彼自身のブランドとファミリーへの愛着によるものです。
ファヴィエCEOには2024年、2025年にも取材している。その間、市場環境は大きく変化しているが、今回も一貫して成長への手応えを語った。強調されるポイントは毎年変わらない。それは、ダミアーニというブランドが持つ揺るがない本質を表している。
interview & text: Shunya Namba @Paris Office
ジェローム・ファヴィエ Jerome Favier
リシュモングループなど、20年以上にわたり高級ジュエリー・ウォッチ業界でのキャリアを重ね、2018年からダミアーニ・グループの副社長兼最高経営責任者(CEO)として、ダミアーニファミリーとともにブランドを率いている。
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