「ディオール」2025年フォール コレクションショーが京都で開催
2025.5.31

©DIOR
マリ・クレール編集長、田居克人が月に1回、読者にお届けするメッセージ。ユネスコの世界遺産に認定されている東寺の庭園で、京都の職人技とコラボレーション。
2025.5.31

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マリ・クレール編集長、田居克人が月に1回、読者にお届けするメッセージ。ユネスコの世界遺産に認定されている東寺の庭園で、京都の職人技とコラボレーション。
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「大阪・関西万博」が4月13日に開幕しました。それに合わせたのでしょうか、3月から4月は海外ラグジュアリーブランドの日本でのイベントが続き、またそれに伴い海外からの要人の来日も多く、またいつになく関西方面での取材が増えています。
フランス館では「LVMH」がメインパートナーに就任し、傘下の「ルイ・ヴィトン」「ディオール」「セリーヌ」「ショーメ」「モエ・ヘネシー」の五つのメゾンが卓越した職人技と創造性を讃える常設展示や特別展示を展開する予定です。「ディオール」の常設展示は、東京都現代美術館で2年前に開催された「クリスチャン・ディオール、夢のクチュリエ」展の興奮を彷彿(ほうふつ)とさせてくれるもので、展示方法がとても美しく迫力あるものでした。
また翌々日は世界遺産である京都の東寺の庭園で「ディオール」の2025年フォール コレクションショーが開催され、まさに関西にファッション関係者が集結しているような状況でした。

日本で初めてファッションショーを開いた海外のクチュリエは1953年のクリスチャン・ディオールでした。東京、大阪、京都、名古屋で開催したのです。それ以来「ディオール」と日本との関係はどんどん深まっていきます。1954年秋冬 オートクチュール コレクションでは京都の龍村美術織物の生地を用いて「Utamaro(歌麿)」というコートを発表。1959年に行われた現在の上皇ご夫妻のご成婚の際のドレスも「ディオール」によるものです。歴代の「ディオール」のクリエイティブ ディレクター、マルク・ボアンやジョン・ガリアーノの発表したコレクションにも日本の影響を見て取れます。

今回、ショー当日の午前中には「ディオール」の現クリエイティブ ディレクターであるマリア・グラツィア・キウリ、コレクション製作にかかわった龍村美術織物の龍村育社長、田畑染飾美術研究所の田畑喜八代表取締役会長、福田工芸染繍研究所の福田喜之代表によるプレスカンファレンスも開催されました。彼らが一様に話したのは、「あくまでも着る人が主役、着る人がどれだけ美しく見えるか、また満足していただけるかが一番」という点。普通に考えるとただの異国趣味やエキゾチシズムだけになってしまいがちですが、そうはならずうまく消化された形で表現できたのはマリア・グラツィア・キウリと日本の側の「対話」が十分になされた結果だと思います。ゆったりと体を包み込むようなラインや、日本庭園からヒントを得たフローラルパターンなどが登場し、「ディオール」のサヴォワールフェール(匠の技)と日本の職人技との強い絆、リスペクトを感じさせるコレクションでした。

京都のそんな歴史のある「ディオール」のショーには日本からだけでなく、海外からも多くのセレブリティやアンバサダー(ドラマ「SHOGUN 将軍」のアンナ・サワイやソフィ・マルソーら)が招かれ、大変華やかな雰囲気で開催されたのです。
境内の砂利道をキャットウォークとして利用したショーの後には、シャンパーニュやちらし寿司なども供され、あいにくの寒さにもかかわらず、用意されたブランケットを羽織りながら遅くまで盛り上がっていました。東寺側も夜にもかかわらず、本尊の薬師如来や日光菩薩や月光菩薩など数十体に及ぶ仏像が安置される金堂を特別に開放し、招待客へのサービスに充てていました。非常に興味深かったのは「ディオール」の創設者クリスチャン・ディオールが生前、コレクションショーで日本に伝わる古く稀少な古代裂(こだいぎれ)を再現した「龍村」の生地を使用したのですが、今回のコレクションで「ディオール」のクリエイティブ ディレクターのマリア・グラツィア・キウリがやはり「龍村」で選んだ生地は、クリスチャン・ディオール自身が選んだ生地と同様の柄でした。彼女が「ディオール」というブランドを真に理解しているのだと感じずにはいられませんでした。ショーに登場したのは約70体、モデルたちもショーのために海外からよばれていて、「ディオール」のショーにかける意気込みがいやが上にも伝わってきました。

日本でも伝統工芸を盛り上げ、さらにブランド化しようという動きがあります。今回の「ディオール」のショーはとても大きなヒントになったのではないか、そんな気がするコレクションでした。
2025年5月29日
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©︎marie claire
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