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作家・山内マリコがフェミニズムの視点で描くマリリン・モンロー「再評価されるべき女性」

山内マリコさんの最新作『マリリン・トールド・ミー』は、まさにフェミニズムの入門編として手にしたい至極の一冊だ。マリリン・モンローにひきつけられた理由と共に、作家として女性としてもがいていた20代、書きたいものが明確に見えてきた30代、そして現在地について話を聞いた。

マリリン・モンローをジェンダー的な視点でひも解いていく

──『マリリン・トールド・ミー』は、伝説のハリウッドスターであるマリリン・モンローと、コロナ禍で孤独な大学生活を送る杏奈が、時空を超えて交錯するストーリー。没後62年のマリリン・モンローをテーマの小説にしたいと思った理由とは?

1970年代のウーマンリブ活動家、田中美津さんによるフェミニズムの名著『いのちの女たちへ とり乱しウーマン・リブ論』を読んだときに、「マリリン・モンローのような女」と書かれた箇所があって、どうも心に引っかかったんです。実際のマリリン・モンローは、本当に誰もが想像するセックス・シンボルのような人物だったのかな? と。その時、マリリン・モンローという存在をフェミニズムの視点からみてみたい、という気持ちが湧いてきました。

その後、2021年に雑誌『文藝』から「怒り」というテーマで執筆依頼を受けたのですが、当時はまさにコロナ禍まっただ中。「今一番怒っているのは、大学生だろう」と思いました。その時「怒り」というテーマと、ずっと心の中で温めていたマリリン・モンローが結びついて、この物語が誕生したんです。

──主人公の杏奈はマリリン・モンローについて書かれた本を読んだり、国立国会図書館で雑誌記事を探したりしますが、山内さんもマリリン・モンローについてかなりリサーチされたのですか?

杏奈がマリリンについて調べる経緯、これはほぼ私と同じですね。以前から、マリリン・モンローについて調べてみたいという気持ちがあったので、この小説を書くというのにかこつけて、マリリンについて書かれた本をたくさん読みました。

最初に読んだ本は、著者である男性の視点でしか書かれていなくて、とても嫌な印象を受けました。ほかに色々読んでみても、書き手がマリリンについて先入観を持っているせいか、なかなかマリリンの実像にたどりつけなくて……。

2017年に出版され、女性の著者が書いた『Marilyn in Manhattan: Her Year of Joy』を読んだとき、ようやく輪郭がつかめてきました。今までは、どちらかというと安直に被害者的なイメージで捉えられていたマリリン像が、この本ではすごく刷新されていたんです。

マリリンは、女優としての契約をしてお給料が入るようになったら、書店で「つけ」で本を買うことができる口座を開設して、たくさんの本を買っているんですよ。マリリンはものすごい読書家で、勉強家だった。マリリンが所有していた本のリストを見ると、よりマリリンの等身大の姿が浮かび上がってきて。そうやって少しずつ、“金髪のおバカさん”のような旧来のマリリン像をはぎとって、新しいマリリン像を造形していきました。

──作品の中には、マリリン・モンローのセリフも多く出てきますね。これはどうやって書いていったのですか?

亡くなった人に勝手にしゃべらせるのは不遜なことだと思っていたのと、マリリン本人の意図と違うことは言わせたくないという思いがありました。なので、もちろん全部というわけにはいきませんが、小説の中に登場するマリリンの言葉は、できるだけマリリンの名言集などに載っている言葉から引用するようにしました。

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Profile

山内マリコ(やまうちまりこ)

1980年富山県生まれ。2008年に「女による女のためのR-18文学賞」読者賞を受賞。12年、受賞作を含む短編集『ここは退屈迎えに来て』を刊行してデビュー。その他の著書に『選んだ孤独はよい孤独』『あのこは貴族』『一心同体だった』『すべてのことはメッセージ 小説ユーミン』など。家庭内男女平等を目指した著者が、結婚生活を赤裸々につづったエッセー『結婚とわたし』(ちくま文庫)も好評発売中。9月下旬にKADOKAWAよりエッセイ『きもの再入門』が発売予定。

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