作家・山内マリコがフェミニズムの視点で描くマリリン・モンロー「再評価されるべき女性」
2024.8.2
2024.8.2
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──作家の柚木麻子さんとお二人で責任編集をした雑誌『エトセトラ』の田嶋陽子さん特集も記憶に新しいですが、なぜ田嶋陽子さんを特集したいと思ったのですか?
『エトセトラ』で責任編集長のお話を受けたとき、ちょうど田嶋陽子さんの『愛という名の支配』という本を古本屋で見つけて読んでいたんです。これが、めちゃくちゃ面白くて。
まだフェミニズムに目覚めていない人が、フェミニズムの本を読んで、スッと理解できるかと言われたら、結構難しいんですよね。私が最初に『女ぎらい ニッポンのミソジニー』を読めたのは、いろんなところでフェミニズムの切れ端みたいなものをキャッチしていたからに過ぎなくて。
それで言うと、田嶋さんの『愛という名の支配』は、ご自身の人生を開示する形で書かれているので、ものすごくわかりやすいんです。田嶋先生ご自身も、40歳近くになってようやくフェミニズムを理論的に解釈して救われたとおっしゃっていて。それもあって、本なんか読まないおばちゃんたちにもフェミニズムを広めようという矜持(きょうじ)でテレビに出ていた方なので、誰が読んでもフェミニズムのことがわかるように書かれています。
それでエトセトラブックス代表の松尾亜紀子さんに「田嶋陽子さんの特集をやりたい」とお話ししました。やるなら私1人ではなく、ユズコ(※柚木麻子さん)と一緒にみこしをかついだ方が楽しいし、説得力も増すし、広まるだろうと思って。
田嶋先生が出演されるシャンソンのライブに直撃して、花束を渡して接近しました(笑)。思った通りポジティブで、裏表なくストレートで、包容力のある方。すっかりファンになって、去年も三越劇場のコンサートに行きました。

──この特集をきっかけに、田嶋陽子さんの再ブームが巻き起こりました。
田嶋陽子さんというと、90年代のテレビ番組『ビートたけしのTVタックル』でおじさんたちとけんかしている、怒っているフェミニストという印象が強いんです。でもそれはテレビが作り出した虚像。そういうネガティブなイメージを払拭できるような光の当て方ができるといいなと思いました。
──『マリリン・トールド・ミー』で描いたマリリン・モンローとまさに同じですね。
田嶋さんを特集したときに、世間的に誤解され、実際とは違うイメージが植え付けられている方を、アップデートされた今の価値観で語り直したり、光を当て直したりすることには、大きな意味があるんだと実感しました。
コロンブスが象徴的ですよね。私が子供の頃はアメリカ大陸を発見した偉人という扱いでしたが、今はヨーロッパ至上主義、白人至上主義的な歴史への反発があり、銅像が撤去される渦中の人物。現在の価値観によって、過去の人物の評価も様変わりします。
マリリン・モンローも語り直されるべき存在だし、今これだけ価値観がアップデートされているのに、いまだにセックス・シンボルの記号化は止められない。レジスタンスする意味でも、物語を通してマリリンの真の姿を届けたいと思っています。
interview & text: Akiko Yoshida photo: Tomoko Hagimoto
『マリリン・トールド・ミー』(河出書房新社)1,870円
https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309031859/
山内マリコ(やまうちまりこ)
1980年富山県生まれ。2008年に「女による女のためのR-18文学賞」読者賞を受賞。12年、受賞作を含む短編集『ここは退屈迎えに来て』を刊行してデビュー。その他の著書に『選んだ孤独はよい孤独』『あのこは貴族』『一心同体だった』『すべてのことはメッセージ 小説ユーミン』など。家庭内男女平等を目指した著者が、結婚生活を赤裸々につづったエッセー『結婚とわたし』(ちくま文庫)も好評発売中。9月下旬にKADOKAWAよりエッセイ『きもの再入門』が発売予定。
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