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作家・山内マリコがフェミニズムの視点で描くマリリン・モンロー「再評価されるべき女性」

フェミニズムと出会って、視界がクリアになった

──マリリン同様、山内さんもかなりの読書家と聞きました。それも、小説だけでなく専門書や学術書など幅広いジャンルの本を読まれるとか。

「本=小説」というくらい小説一辺倒でしたが、自分も小説を書きはじめた 20代半ばから、自分の書きたいものを明確にするために、読書の幅を広げて、小説以外の本も読むようになりました。文芸批評や映画批評、学術書とまではいかなくても人文系、社会学の本ですね。特に30歳前後の頃からは、フェミニズムの本を読むようになりました。

読んでいていちばん楽しいものは小説なのですが、知的好奇心をくすぐられるような本であれば、どんなジャンルでもガンガン買うし、ガンガン読みます。遅読なので、本を買う速度に読書量が追いついていないのですが(笑)。

──30歳くらいのときにフェミニズムの本を読むようになったそうですが、何かきっかけがあったのですか?

その頃、自分自身が欲しているものがフェミニズムだと分からなかったので、手探りであらゆる本を読んでいました。ある時、紀伊國屋書店でもらってきた「scripta」を読んでいたら、社会学者の上野千鶴子さんが『女ぎらい  ニッポンのミソジニー』を連載されていて、自分が知りたかったのはこれなんだ! と、やっとたどり着きました。フェミニズムと出会ったことで、書きたいもの、書くべきものがクリアになりました。

私は90年代の女子高生ブーム時代に高校生時代を過ごしたので、当時は「自分たちが最強」と思い込んでいたんですよ。アメリカの連続ドラマ『SEX AND THE CITY』のように、大人になったら恋愛も仕事も自分主体でやっていくんだと思っていました。ところが社会に出る年齢になったら、世の中は“めちゃモテ”ブーム全盛期。女は男に選ばれる立場だという無言の圧を感じるように……。2000年代はバックラッシュが吹き荒れていた時期でもあり、10代と20代でものすごい振り幅を行き来したので、なかなかフェミニズムにたどり着けなかった世代なんだと思います。

──フェミニズムとの出会いは、山内さんの人生の中で大きなターニングポイントだったんですね。

視力が上がった! というくらい、社会の構造がよく見えるようになりました。そしてフェミニズムが背骨にあると、自分で自分を幸せにできる主体的な存在になれるので、生きやすくなりました。

27歳でR-18文学賞読者賞をもらった時、私は大学時代にスパークした女友達との友情について書きたいと思っていたのですが、当時は女性同士の友情は一般文芸で書くようなテーマではなく、少女小説で扱うような、一段低いものだと見られていました。担当編集の方にも「女性作家には恋愛小説を書いてほしい」と言われてしまった。私自身も「そっか、そうだよね」と、疑問も持たずに説得されてしまいました。

ですが、上野さんの本を読んだときに、私がずっと書きたいと思っていた女性同士の友情も、立派なフェミニズムだったんだとようやく言語化できるようになりました。

だからこそ、フェミニズムと出会う前の私のような女の子に、本を通して、フェミニズム的な物の考え方や見方を知ってもらえたらいいなと思っています。読書が苦手な人でも読みやすい小説の中で、そうとは言わずにフェミニズム的な物の見方を読者の方に届ける。それが自分がやりたい仕事だし、やるべき仕事だと自負しています。

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Profile

山内マリコ(やまうちまりこ)

1980年富山県生まれ。2008年に「女による女のためのR-18文学賞」読者賞を受賞。12年、受賞作を含む短編集『ここは退屈迎えに来て』を刊行してデビュー。その他の著書に『選んだ孤独はよい孤独』『あのこは貴族』『一心同体だった』『すべてのことはメッセージ 小説ユーミン』など。家庭内男女平等を目指した著者が、結婚生活を赤裸々につづったエッセー『結婚とわたし』(ちくま文庫)も好評発売中。9月下旬にKADOKAWAよりエッセイ『きもの再入門』が発売予定。

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