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【鹿島茂と猫のグリの「フランス舶来もの語り」】フランス人にとってチョコレートと言えばムーニエちゃん!

立春まぢか

2月の最大イベント、バレンタインデーにちなんで今回はチョコレートのお話。フランス文学者の鹿島茂さんが愛猫のグリ(シャルトリュー 10歳・♀)とともに、フランス人の記憶に深く刻まれているというフランスのチョコレートについて紹介します

チョコレートは大金持ちだけのもの

最近のバレンタインデーではプレゼントする品はチョコレートでなくともいいらしいが、それでも、女の子たちは、本命の男の子に対しては、よりレアーもののチョコレートをと、血眼になって探しているようだ。

ところで、チョコレートといえば、19世紀の前半まで、チョコレートはすべて手作りの限定品だった。なぜかというと、チョコレートというのは、カカオと砂糖を混ぜて作るものだが、このカカオと砂糖を均質にすりつぶして混ぜることが極度の熟練を要して、大量生産にはむかなかったからだ。

そのため、チョコレートは大金持ちだけが賞味できる高価な嗜好(しこう)品、ときには媚薬(びやく)とさえ考えられていた。

ところが、1855年のパリ万博に出品されて金賞を獲得したドゥヴァンク社のチョコレート製造機の出現で様相は一変する。すなわちカカオ豆の洗浄・焙煎(ばいせん)からタブレットの包装までの全工程をオートメーションで行なうドゥヴァンク社の機械は、これまでむずかしいとされた粉砕・撹拌(かくはん)の工程を苦もなく処理して、どんな手作りチョコレートにも負けない製品を短時間で製造したのである。

この製造機を使ってチョコレートの大量生産に乗りだしたのが、フランスのチョコレート・メーカー、ムーニエ社の2代目の社長エミール・ムーニエである。

Profile

鹿島茂

かしましげる 1949年横浜生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。専門は19世紀フランスの社会生活と文学。1991年『馬車が買いたい!』でサントリー学芸賞、96年『子供より古書が大事と思いたい』で講談社エッセイ賞、99年『愛書狂』でゲスナー賞、2000年『職業別パリ案内』で読売文学賞、04年『成功する読書日記』で毎日書評賞を受賞。膨大な古書コレクションを有し、東京都港区に書斎スタジオ「NOEMA images STUDIO」を開設。書評アーカイブWEBサイト「ALL REVIEWS」を主宰

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