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1月6日にソラマメを当てたら女王様になれる!【鹿島茂と猫のグリの「フランス舶来もの語り」】

2023年のベトナムは猫年なんですって!

Bonne année!(あけましておめでとうございます!)お正月にはおせち料理やお雑煮など、この時期ならではの食べ物がありますが、フランスには1月6日に食べるスイーツがあるんだとか。いったいどんなお菓子なのか、フランス文学者の鹿島茂さんが愛猫のグリ(シャルトリュー 10歳・♀)と解説します

「東方三博士の日」に食べるガレット・デ・ロワ

娘がまだ子供のころ、正月の六日に、パリのパン屋で買ったガレット・デ・ロワ(galette des Rois) というパイ菓子を食べていて、こう言った。

「お父さん、何か石みたいなものが入っていたよ」

そうか、すっかり忘れていた。今日は、幼子イエスがベツレヘムで東方の三博士 les Rois の訪問を受けたことを記念するカトリックの公現祭(こうげんさい・ Epiphanie)だったのだ。

「それはね、石じゃなくて、大当たりのマークで、王様や女王様になれるというしるしだよ」

この日、1月6日は「東方三博士の日 (jour des Rois)」ともいい、子供たちはみんなでガレット・デ・ロワを切って食べることになっている。中に〈ソラマメ feve〉と呼ばれる陶器製の人形あるいは王冠が入っていた子供がその場で王様 (Roi)か女王様(Reine)になって遊ぶことができるのだ。

南フランスでは、中にあるのは本物のソラマメだが、それ以外の地域では、ソラマメの代わりに赤ん坊を産着で包んだ人形(幼子イエス)が入っている。最近では、人形ではなく、キングの王冠かクイーンの王冠そのものが入っているようだ。娘が当てたのもこの陶器製の王冠だった。

Profile

鹿島茂

かしましげる 1949年横浜生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。専門は19世紀フランスの社会生活と文学。1991年『馬車が買いたい!』でサントリー学芸賞、96年『子供より古書が大事と思いたい』で講談社エッセイ賞、99年『愛書狂』でゲスナー賞、2000年『職業別パリ案内』で読売文学賞、04年『成功する読書日記』で毎日書評賞を受賞。膨大な古書コレクションを有し、東京都港区に書斎スタジオ「NOEMA images STUDIO」を開設。書評アーカイブWEBサイト「ALL REVIEWS」を主宰

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