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手袋で毒殺? カトリーヌ・ド・メディシスの罠【鹿島茂と猫のグリの「フランス舶来もの語り」】

防寒だけでなく、ファッションの一部としても手袋は真冬のマストアイテム。今回はその手袋にまつわるちょっと怖いエピソードを、フランス文学者の鹿島茂さんが愛猫グリ(シャルトリュー 10歳・♀)とともに紹介します

手袋はオシャレのために生まれた

真冬のパリに出掛けるときに絶対に欠かせないのが手袋だ。

パリは東京よりもはるかに緯度が高いから、寒さの質がちがう。指の先まで凍りつき、「かじかむ」という言葉はこんな場合に使うのだと思ったりする。こういうときには、どこのだれかは知らないけれど手袋を発明してくれた人に心からありがとうと言いたい気持ちになる。

しかし、手袋の歴史をひもといてみると、手袋が進歩したのは、つまり親指以外の4本の指をまとめて包むミトンではなく、5本の指が分かれたタイプが出現したのは、防寒用以外の目的で手袋が使われるようになってからのことらしい。

すなわち、宗教儀式で祭壇に手で直接触れないようにするためと、もう一つはオシャレのためである。

なかでもオシャレ手袋の歴史に大きな足跡を残したのが、メディチ家からフランスのアンリ二世に嫁いだカトリーヌ・ド・メディシスである。

カトリーヌはさほどの美人ではなかったが、手足とりわけ手が美しいのが自慢で、お抱えの調香師ルネにハンド・クリームを調合させ、夜寝る前には必ずこれを手にすり込んで、同じくルネの作った特製のなめし革の手袋をはめて床についたといわれる。これが手袋流行のきっかけになった。王妃の身にまとうものならなんでも右へならえするのが宮廷人のつねだからである。

ところが、のちにそれが徒(あだ)になって命を落とす者が現われた。なぜか?

Profile

鹿島茂

かしましげる 1949年横浜生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。専門は19世紀フランスの社会生活と文学。1991年『馬車が買いたい!』でサントリー学芸賞、96年『子供より古書が大事と思いたい』で講談社エッセイ賞、99年『愛書狂』でゲスナー賞、2000年『職業別パリ案内』で読売文学賞、04年『成功する読書日記』で毎日書評賞を受賞。膨大な古書コレクションを有し、東京都港区に書斎スタジオ「NOEMA images STUDIO」を開設。書評アーカイブWEBサイト「ALL REVIEWS」を主宰

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