【国際女性デー】女性アーティストの功績を可視化「AWARE」が目指す美術史のジェンダー平等
Video still,film by Sophie Caron,illustration by Louise Nelson ©AWARE
これまで美術史に記されてこなかった女性アーティストの功績に光をあて、可視化していくフランスの非営利組織「AWARE」。2024年に日本チームが発足し、ウェブサイトに日本語セクションが誕生した。日本代表でインディペンデント・キュレーターの天田万里奈さんが語る、活動の意義とは。
「AWARE(Archives of Women Artists, Research and Exhibitions)」は、美術史家のカミーユ・モリノーさんらによって2014年にフランスで共同設立された。その功績が認められ、今年1月よりパリのポンピドゥーセンターの一部門として運営されている。
カミーユ・モリノー
パリを拠点に活動するキュレーターであり美術史家。「AWARE」の共同設立者兼ディレクターを務める
Valerie Archeno ©AWARE
天田万里奈
AWARE日本代表。インディペンデント・キュレーター、アート・プロジェクト・プロデューサーであり、国際的なアート・キュレーターや専門家と協力して日本の多様性を推進する非営利団体SPECTRUMの共同設立者
Marie Liesse
──AWAREはなぜ結成されたのでしょうか。
「美術の世界では女性アーティストは周縁化され、美術史にきちんと歴史を刻まれてきませんでした。そういった意味から文化的、歴史的な意味を検証し、女性アーティストに光を当てる必要がありました」
──こうした動きのきっかけは。
「共同創立者の一人のカミーユがポンピドゥーセンターのキュレーターだった2009年に女性アーティストの作品のみの展覧会を開催しました。来場者は約250万人にのぼり、成功を収めましたが、その準備の段階で、女性たちの作品や歴史について情報が不足していることが反省点となりました。作品や情報をアーカイブ化していくことの必要性が明らかになったのです」
Video still,film by Sophie Caron,illustration by Louise Nelson ©AWARE
上村松園 「母子」
重要文化財 東京国立近代美術館所蔵
「AWARE」のウェブサイトのデータベースには、メキシコを代表する女性画家、フリーダ・カーロから、美術家として国際的に評価された最初のアフリカ系アメリカ人女性、エドモニア・ルイス、近代日本を代表する画家で女性として初の文化勲章を受章した上村松園まで、多数の女性アーティストの功績が、表現媒体や国の制限なく幅広く集められている
──男性アーティストと大きな格差があるのでしょうか。
「2025年に日本のアート領域におけるジェンダーバランスを調べたところ、美術大学の男子学生はわずか27%にもかかわらず、展覧会や評価の場に立つアーティストの多くは男性です。過去10年間に日本の美術館で開催された個展の約77%は男性アーティストによるものであり、主要な美術賞の約74%も男性に授与されています」
──こうした状況でアーカイブを作る意味とは。
「男性との不均衡を正していくうえでも、アーカイブがないと展覧会も開催されにくいし、研究の対象にもなりにくいのが実情です。こうした悪循環を断ち切り、女性アーティストの功績を可視化し世界的に発信するプラットフォームを作っていきます。その変化がもたらす未来へのインパクトも大きいのです」
現在、サイトは英語、フランス語、日本語の3カ国語で運営され、世界で500人以上の寄稿者がおり、約1400人のアーティストが紹介されている。
ウェブサイトには、日本語セクションも開設されている。日本の女性アーティストに焦点を当て、その作品や活動を紹介するとともに、研究記事など学術的・教育的なコンテンツを提供
──ウェブサイトの日本語セクションはどのような内容でしょうか。
「国内外の人たちが日本の女性アーティストを発見し、略歴や記事にアクセスするための入り口です。日本画家の片岡球子や現代美術家の内藤礼ら、多様なアーティストの略歴を掲載しています。研究記事はこれらのアーティストのキャリアや作品を、より大きな芸術運動やフェミニズムの思想という文脈に位置づけていくことで、理解を深めていけるはずです」
女性アーティストやジェンダー学についての調査研究を広く普及させるために、国際的な機関、大学、美術館などと連携し、シンポジウムや座談会、セミナーも積極的に開催している
© Nozomu Okada courtesy of T3 PHOTO FESTIVAL TOKYO
──今後の活動を教えてください。
「日本のアートに関する情報収集と国内外への発信などを推進する国立アートリサーチセンターと連携し、日本における女性アーティスト研究を推進するためのリサーチフェローシップを始動させました。また、日本において、工芸や建築分野で活躍する女性の紹介にも取り組んでいきます」
聞き手:マリ・クレールデジタル編集長 宮智 泉
・時代がようやく追いついた、ヒルマ・アフ・クリントの軌跡