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料理とデザイン、アートが交差する「食卓の芸術」で物語を紡ぐ パリのフードデザイナー、マリ・ユキ・メオン

ある時は新作フレグランスの発表会のディナー。また、ある時はラグジュアリーブランドのパーティーのフィンガーフード。パリ在住のフードデザイナー、マリ・ユキ・メオンさんは、「食事」を通してブランドの物語やメッセージを伝えている。

エルメスが6月13日、上海で2025-26年秋冬コレクションの第2章と位置づけるファッションショーを開催、世界各国から招待客が集まった。ショーの終了後、メオンさんは招待客向けのビュッフェ、そして展示会でのフィンガーフードをデザインした。

ユキ・マリー・メオン エルメス 上海
エルメスの上海でのイベント

テーブルを飾ったのは、ヨーグルトとライチのムースタルト、ラタトゥイユと生ハムの冷やし中華、塩バターキャラメルを詰めた揚げゴマ餅団子など。ショーのテーマである「ドレサージュ・トレサージュ」のモチーフや、ショー会場で使用された回転するパネルや色彩などを取り入れつつ、「パリと上海の交流」をイメージしながら、食材選びや食事の並べ方も考えていった。「このような世界的なイベントに関わることができたことは、とってもうれしい」

ユキ・マリー・メオン ロエベ
ロエベ

メオンさんはパリを拠点に、さまざまな世界を「食」で表現している。パーティーのほか、ランチやディナーなど、企業の依頼を受けて、ブランドの世界観やメッセージを「見て味わってもらう」形で伝えていく。依頼主はラグジュアリーブランドから、文化施設や団体までと幅広い。プラダ、グッチ、ルイ・ヴィトン、ロエベ、ショーメ、ブシュロン、エルメスなど、名だたるブランドがクライアントで、発表の場もフランスを離れて、海外ということもある。

近年、デザインと食事の結びつきは深くなっており、表現方法のひとつとしての食事に注目が高まっている。「かつてはブランドのイベントの一環として食事があったとしても、レストランに行くか、普通のケータリングを活用するかでしたが、今はどんな場所でどんな料理をどのように出すかもメッセージを伝える手段となっており、重要になってきています」

マリ・ユキ・メオンさん

メオンさんは、フランス人の父親と日本人の母親のもとに生まれた。幼少期を東京で暮らし、18歳の時に、ひとりでパリに移り住んだ。インテリアデザインを学び、ディオールやシャネルなどラグジュアリーブランドの店舗デザインを約10年間、担当してきたという。

そして、新たな世界として選んだのが「食」の世界だ。好きだった料理に情熱を注いできた彼女は、料理人のCAP(職業適性証)を取得し、パリのビストロでインターンを経験した後、2017年に、自身の会社である「Manger Manger」(Mangerはフランス語で「食べる」の意)を設立した。

ただ、料理の仕事といっても、レストランを持ちたいわけではなかった。目指したのは、ただの食事ではない。メオンさんの創造性を表現し、伝える手段としての「食」の世界だった。

ユキ・マリー・メオン エルメス 上海
エルメスの香港でのイベント
icicleのイベント

クライアントの世界観やイメージをインスタレーションやパーティーなどの場で「見て、味わう」という形で表現する。ひとつひとつのプロジェクトがオーダーメイド。ひとつの企画に3~4か月はかかる。リサーチをして、絵を描き、実際に料理も作ってみる。デザイナーや担当者らとコミュニケーションをとり、アイデアを交換し、形作っていくことが楽しいのだという。

こうした仕事を支える美意識の源に日本の食の世界がある。幼いころから料理が大好きで、漫画やアニメよりもテレビから流れてくる料理番組をじーっと見ていることもしばしばだったという。

ユキ・マリー・メオン ロエベ
ふたつに割った竹の中に整然とだんごが並ぶ( Low Classicのイベント)


「竹を使った流しそうめんを思い出して、あるブランドでは2メートル以上もある竹を10本もオーダーして、ふたつに割り、おだんごを並べたこともありました」

メオンさんのアトリエにも、日本的な要素がちりばめられている。壁には小さなブラシやひしゃく、卓上ほうきなどがきれいに飾られ、棚には雪平鍋や、竹で編んだ様々な大きさのざるも置いてある。

アトリエの壁面には小型ほうきやひしゃくなど。飾り方にも「間」が

料理にはどこかに日本的な要素が入っていることもあれば、料理の盛りつけに「間」を感じさせることがある。

「『間』は食材と同じくらい大事。自分の中で、どこかに和食が、日本が生きてるんです」

大事にしている「HOW TO WRAP FIVE EGGS」

大事にしている本も見せてくれた。「HOW TO WRAP FIVE EGGS」。アートディレクターの岡秀行が木、わらや笹(ささ)の葉などを使って、日本に昔から伝わる「包む文化」を紹介した写真集の英語版。こうした日本的な要素も、メオンさんのインスピレーションのもととなっている。

日本に帰ってくると、いろいろと見てまわるが、豪華でファンシーな店やものにはあまり関心がない。逆に、下町の居酒屋や昔ながらの和菓子などにひかれるものがある。

「京都で湯葉の刺し身を食べた時にも、味とプレゼンのしかたのシンプルさと美しさにキュンときました」

ジオラマのような漬けものの盛り合わせや、天ぷら店で海老の天ぷらを食べたあとに、頭だけ揚げて、白い紙のうえにちょこっとのってくる様子に感動する。こうした目にとまる「美しさ」が独自の世界を作り上げる要素となっていく。

ユキ・マリー・メオン ブシュロン
ブシュロンのイベントでの一皿

「食で創造的な世界を作っていくのは楽しい。そして実際にパーティーなどの場でお客さまが見て、食べて、心が動くのが何よりうれしいんです」

text: 宮智泉(マリ・クレールデジタル編集長)

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