「ひとりディナー」は悲しくない、むしろ開放感がある
2025.6.30

laura brambilla / iStock.com
「ソロ活女子」「おひとりさま」といった言葉が定着している日本でも、夜、ひとりで外食することには抵抗がある人がいるかもしれないが、夕食は家族や友人とわいわい楽しくという文化が根付くイタリアでは、それはなおさらのこと。しかし最近、「ソロディナー」が静かなトレンドとなっているという。マリ・クレール インターナショナルのイタリア版デジタル記事よりお届け。
2025.6.30

laura brambilla / iStock.com
「ソロ活女子」「おひとりさま」といった言葉が定着している日本でも、夜、ひとりで外食することには抵抗がある人がいるかもしれないが、夕食は家族や友人とわいわい楽しくという文化が根付くイタリアでは、それはなおさらのこと。しかし最近、「ソロディナー」が静かなトレンドとなっているという。マリ・クレール インターナショナルのイタリア版デジタル記事よりお届け。
ひとり用のテーブルは悲惨ではなく、セクシー(ほぼ)だ。この新しいトレンドはアメリカ、日本、そしてイタリアでもゆっくりと広がっている。しかし「ソロディナー」の真の試練は、スマートフォンを放り投げて、本を取り出すことだ。
「ひとりで外食するのは悲しいことではない。セクシーなことだ」。そう言っているのが、『British Vogue』でコラムを執筆するライターで、料理専門家、インスタグラムで4.3万のフォロワーを持つインフルエンサー、Slutty Cheffであれば、私たちは信じざるを得ない。どこに行くか、いつ会うかの議論はなし、何を食べるかについての妥協も、無理な会話もなし。それどころか、自分の考えに浸り、周囲を見回し、味わい、楽しむ時間がずっと増える。要するに、レストランで何名様ですか?と聞かれて、「ひとりです」と言うのは、負け組ではない。それは力強い宣言だとSlutty Cheffは言う。ほぼアナーキーで自由な行為だ。特に、それを言うのが女性だとすれば、なおさらだ。
このトレンドは急上昇中だ。「ソロディナー」、つまりおひとりさまでの夕食は、ますます人気を集めている。これはコロナ禍のロックダウンで、私たちが鍛えられたことに関係があるかもしれない。事実、ひとりで夕食をとることに対する不信感や偏見は消えつつある。少なくともアメリカや日本のような国では、レストランでひとり分の席を予約する人が、過去2年間でそれぞれ29%と23%に増加している(調査は予約サイトOpenTableによる)。昨年だけの数値でも、ドイツで18%、イギリスで14%増加している。シングルが増加していることは既に周知の事実だとすれば、これらの数字は十分納得できる。そして、予測によると、自分だけで外出する人の数は、選択や必要性の両方から、さらに増加する見込みだ。
イタリアでは国民の29%が、普段はひとりで食事をしていると回答
イタリアでは、少し事情が異なる。この夕食のトレンドは、まだ完全に定着していない。文化的な抵抗感、食にまつわる、親しみやすさや温かさの概念、そしていくつかの固定観念のほうが勝っている。映画やテレビシリーズの影響で、ニューヨークのレストランのカウンターに座って軽食と飲み物を楽しむことは、私たちにも十分可能だ。しかし、日本のチェーンレストラン「一蘭」のような個室ブースで食事をするのは、イタリア人にとっては難しいだろう。両側にパーティションのある壁に向かい、狭く、孤立した作業スペースのような場所は、楽しい体験ができる場とは程遠い。しかし、私たちイタリア人の29%が、普段ひとりで食事をしていると答えている(出典:マーケティン会社Mintel)。レストランはこれに気づき始めている。そして、公共の場でお皿の前にひとりで座るという最後のタブーが崩れようとしているのだ。
最後のタブー——公共の場でひとりで食事をする——が崩れようとしている
それは見方次第だ。私たちは孤立や人間関係の困難の表れに直面しているのか、それとも自分だけの空間を勝ち取る健全な一歩なのか? 「ひとりで食事をするのは一種のタブーです。そのタブーから抜け出すことはポジティブなことです」と、心理療法士のNicoletta Suppa(ニコレッタ・スッパ)氏は説明する。
「もちろん、安心感があり、問題がなく、物事が順調なときは簡単です。要するに、最近フラれたばかりなら、孤独で捨てられたように感じ、レストランでひとり食事をするのは本当に難しいかもしれません」。特に夕食だろうか? 「はい、ランチと夜の外出には大きな違いがあります。仕事中の手軽なランチは、短時間で済むので問題はありません。夕食に出かけるのは別物です。依然としてロマンチックなデートや記念日のイメージと結びついており、会って、話をして、一日を締めくくるものです。現代でも、他人の目を気にすることなく、自立や自分へのご褒美として捉えるのは難しいものです。特に女性にとっては、なおさらです」とスッパ氏は強調する。
彼女たちには多くの抵抗がある。英紙『The Guardian』のコラムニスト兼料理批評家、Grace Dent(グレイス・デント)は、いつもひとりで食事をし、場合によっては解放感や喜びを感じると語っている。逆に、彼女は不安を感じることもある。「2001年にロンドンで初めて試したとき、ソーホーで、7分もたたないうちに、お金でセックスに誘われました」と回想している。確かに、時代は変わった。しかし、デント氏は、自分が独身と見なされる場所で、ひとりで席につくのは、まだある程度の勇気が必要だと指摘する。少しの不安を感じることは問題ではなく、それを乗り越えることは可能だ。
この点では、ミレニアル世代とZ世代のほうが得意だ。彼らは、実際の同伴者なしで、夕食に出かけ、問題なく過ごせるようだ。ただし、常に離れられない友人がいる。スマートフォンだ。「スマートフォンに貼りつくようにして食事をしていると、常に接続されているような状態です。それは本物の体験ではありません」とスッパ氏は指摘する。あなたは他人の判断から自分の身を守るために、スマートフォンを盾として使っているのだ。質問。スマートフォンがなくても、同じように落ち着いていられる?
ひとりで食事ができるなら、何でもできる。それは試金石だ
かつて誰かが言ったように、レストランでひとり食事ができるなら、何でもできる。それは試金石だ。そこから始めて、やがてひとりで旅行や映画館、パーティーに同伴者なしでも行けることに気づく。それはイタリアで生まれ育った人にとっての挑戦だ。「ヨーロッパの他の地域やアジアとは大きな違いがあります。ここではそういう習慣がありませんし、そもそもその機会がないからです」と、アルバのラ・モッラにあるPalas Cerequio Barolo Cru Resortを経営するワイン生産者、Alberto Chiarlo(アルベルト・キアルロ)は語る。
「カウンターでも食事を提供しようと、どれくらい前から提案してきたか知っていますか?」とキアルロ氏は続けた。「カウンターはひとりで食事をするのに完璧です。しかし、スタッフの抵抗を乗り越えられません。イタリアでは、ひとり客の予約を受け付けないレストランもあると聞いています。信じられないことです。私の外国人のお客さまの多くはひとりで旅行しています。その多くは女性です。彼女たちは当店で夕食をとり、周辺エリアの予約もお願いしてきます」。本当に?「料理に情熱を注ぐほど、ひとりで食べるのが楽しくなるものです」とキアルロ氏は言う。さらに「良い本を読みながら夕食をとるのは素敵なことです。私はよくそうします。私にとっての2つの大きな喜びを組み合わせるのです」。
ソロディナーの最終形態は、スマートフォンを捨てて、最適な本を取り出すことだ。「ランゲ(ワインで有名なピエモント州)ではカルロ・フルッテロとフランコ・ルチェンティーニの小説、ブラッセリーではジョルジュ・シムノン(フランス語で書くベルギー出身の小説家)、寿司(すし)ならイタロ・カルヴィーノ、分子ガストロミーにはホルへ・ルイス・ボルヘス」とキアルロ氏は締めくくる。ファッション好きな人にとっては、『セックス・アンド・ザ・シティ』の象徴的なキャラクター、キャリー・ブラッドショーを思い起こす価値がある。彼女はビストロにひとりで座り、すでに当時から自問していた。「私たちは自分ひとりでどれだけのことができるだろう?」
※記事中の写真はミラノ在住の日本人写真家、Tomoyuki Tsurutaの作品。彼は街の人々を撮影するのが好きで、長年ミラノで暮らしている。冒頭の写真『Gastro-esperienza』は「ミラノのミラノ女性」と彼が説明するイメージを捉えたもので、ピエモンテ州の都市トルトナのバーで撮影された。彼の作品はウェブサイトで購入可能。
translation & adaptation: Akiko Eguchi
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This article was originally published by Elettra Aldani on Marie Claire Italia
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