昨年11月、“出来たて”の和菓子とお茶のペアリングでぜいたくな茶寮体験を提案する「九九九(くくく)」がオープンした。和菓子職人が目の前で仕上げる“出来立て”には、ショーケースや箱入りの和菓子にはない、温度や質感の豊かさが感じられる。和菓子の最前線ともいうべき“いま”をご紹介。

「国立新美術館」から徒歩1分。ここが港区であることを忘れてしまうかのような隠れ家を訪れた。
日本の伝統文化をまとめた歳時記に基づいた和菓子とお茶を、コース仕立てで提供する「九九九」。店名には、“茶聖”と称された千利休への深い敬意が込められていると言う、菓子司の藤田凱斗さん。

「千利休というと、お茶文化を作った方と思われがちですが、正しくは、もともとあったお茶文化を大成させた方で、茶の湯を通じて人々に心の安らぎと美意識をもたらしました。私たちも、もともとある和菓子を、“ライブ感のあるコース”仕立てで愉(たの)しんでいただくことで、新たな和菓子文化として大成していきたいという想いがあり、崇敬する千利休から一つ少ない『九九九』と名付けました」
洋菓子界でもお皿の上で仕上げるデセールのコースは定着しているが、“作りたて”の和菓子コースとなれば、職人にとっては腕の見せどころだ。

はじまりは、撮影した2月に咲き始める梅の花を塩漬けにし、錦玉(きんぎょく)に仕上げたひと品。「馥郁(ふくいく)」と冠する通り、寒い時期に咲く梅の強い香りを閉じ込めており、菓子切りのクロモジも梅の枝のように添えられている。
合わせるお茶は、梅の香り高さを引き立てるよう、苦みのある煎茶「侘び」。「九九九」のお茶は、あくまで和菓子を引き立てるために、口内でのマリアージュを狙った合わせや、相乗効果を考えてペアリングしていく。

茶葉のベースとなるのは、2か所のお茶農家から特別に仕入れた煎茶。出来たての和菓子ならではの、温・冷さまざまな温度帯や豊かな質感を愉しむため、「九九九」オリジナルのブレンド茶が数種類用意されている。
