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食べながら読みたい! みんなが知らないチョコの話 ジャーナリストの市川歩美が「チョコレートと日本人」を出版

バレンタインデーが近づくと、日本には世界中からさまざまなチョコレートが集まり、世界に類を見ない盛り上がりを見せる。チョコレートを主たるテーマに取材をしてきたジャーナリストの市川歩美さんは長年、国内外の製品や作り手、産地などを取材し、「チョコレートと日本人」(ハヤカワ新書)という1冊の本にまとめた。そこには、チョコをめぐる歴史や知らない話が満載で、この本を読むともっと食べたくなるだけでなく、チョコの話を誰かに伝えたくなる。市川さんが語るチョコレートの世界の魅力と面白さとは。

──全国の百貨店などでバレンタインのチョコが並んでいます。年に1度、日本人の関心が一気に高まる季節です。
「正月が終わり、しばらくするとチョコ気分になってくるというのが日本。多くのメディアも特集を組み、メディアも一般の人もみんな同時にチョコに目を向けるようになります。こんなにチョコレートに熱狂する国は日本しかない。でもそういうことも知られていません」

──思えば、チョコレートは「おいしい」とか「かわいい」と語られるばかりで、深く知り、じっくり考える機会は少ないかもしれません。
「チョコレートは私たちの暮らしの中で当たり前のようにあり、身近すぎるので、実は知らないことが多いのでしょう」

──日本におけるバレンタインデーがいつ、どこで始まり、なぜチョコレートと結びついていったか、という経緯はとても興味深いものがあります。1932年に「神戸モロゾフ製菓株式会社」(現在のモロゾフ)が、自社のカタログにバレンタインギフト用のチョコレートを掲載したとは知りませんでした。
「日本ではチョコレートが独自の進化を遂げ、発展していきました。それもすごく面白くて。バレンタインデーなんてチョコレートを扱う企業の戦略じゃないか、というようなことをよく言われます。1958年に『メリーチョコレートカムパニー』が東京都内の百貨店で日本で初めてのバレンタインセールを行いました。同社の資料だと、3日間の開催で、『バレンタインセール』と手書きの看板を設置しただけの小さな売り場だったようです。売れたのは50円の板チョコ3枚と20円のメッセージカード1枚だけ。売り上げはたった170円だったそうです。でも、戦略だけだったら、ここまで続かず、どこかで消えていったはず。日本のバレンタインがコミュニケーションを豊かにしたり、おいしいものとの出合いで幸せになれたりとか、何らかの良さがあったから定着したのだと思います。バレンタインで多くの人たちがハッピーになってきたのです」

──今ではバレンタインの季節になると世界中のチョコレートが集まってきます。
世界中のチョコレートメーカーが注目しています。とても売れるので。例えば、阪急うめだ本店のバレンタインチョコレート博覧会が始まりましたが、昨年は1日平均1.1億円を売り上げました。ジェイアール名古屋タカシマヤのアムール・デュ・ショコラというイベントの売り上げも1.2億円でした。両社とも毎年売り上げを更新しています」

──海外からもこの時期、チョコレートの職人が多数来日しますね。
「特にヨーロッパ、中でもフランスのチョコレート職人が自分の国でワンシーズンに売れる量が数日で売れたという話をよく聞きます。職人たちは来日すると、映画スターや人気ミュージシャンになったみたいな気分になれる国だと思うんです。サインを求められたり、写真を一緒に撮ったり」

市川歩美

──こうした日本人の行動はチョコレートの品質向上にも実はつながっているようです。
「日本人は細部までよくチェックして、じっくり味わってくれると、作る側が感動することがよくあります。それがもっとおいしいチョコレートを作ろうという原動力になっていく。日本人のお客様の意見を聞いて、ブラッシュアップするという例は多々あります」

──チョコレートを取材するジャーナリストとして、膨大な数のチョコレートを食べること自体が大変だとも思いますが、この本をどんな人に読んでもらいたいと思っていますか。
「チョコレートには実に多くの人たちが関わっています。カカオの産地から、チョコレートの職人、企業のマーケティングや営業担当者、輸入業者など。しかし、長年取材をしてきて驚いたのは、意外と自分たちのフィールド以外をよく知らないということでした。私のように長年幅広く取材してきた人間はいないせいか、歴史を含め、よくいろいろなことを尋ねられます。だから、1冊の本にまとめました。チョコレートという横串で世界を一望してみると違う世界が見えてくる。日本のことも見えてきます。知識を共有したうえで、みんなが好きなことをやったら、もっと深みのあるチョコレートの文化が生まれるのでは。そのための1冊になればうれしいです」

text: Izumi Miyachi(マリ・クレールデジタル編集長), photo: Tomoko Hagimoto

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チョコレートと日本人」(ハヤカワ新書市川歩美著
市川さん_チョコレートと日本人_帯
定価:¥1,160(税込み)

Profile

市川 歩美(いちかわ・あゆみ)

ジャーナリスト
日本で唯一のチョコレートを主なテーマに掲げるジャーナリスト、コーディネーター。365日、日本国内やカカオ生産地をはじめ世界各地を取材し、最新のトレンドをメディアで発信する。チョコレート愛好家歴は約30年。

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