×

女性社員の社内組織も発足! メキシコの企業ブランド「クラセアスール」で躍進する女性たち

プレミアムテキーラで急成長しているメキシコ発のラグジュアリーブランド「クラセアスール」は、「よりよい“human beings(ひと)”になること」をモットーに、女性のキャリアを全面的にサポート。工場従業員の半数は女性で構成され、女性社員だけの社内組織を発足させるなど、そのエンパワーメントに迫る。

テキーラという一つのアートを通じて、メキシコの美しさと伝統の真価を伝えている「クラセアスール」。長年受け継がれてきた伝統的な製法を採用し、目を引くデザインのデキャンタは、陶器の成形からペイントまで全てハンドメイドだ。

同ブランドは、ひとりひとりの才能を信じ、関係するコミュニティー全ての機会均等を促進。特に、女性の機会均等については細やかに意識して活動しており、メキシコの工場で働く従業員の半数以上が女性。ボトル製作に携わるスタッフの多くは、メキシコの小規模コミュニティー出身の女性で構成されている。

例えば、ハリスコ州・テパティトランにある陶器デキャンタの製作工場で働くエヴェリン・コントレラスは、2018年にデキャンタのペイントをほどこす職人として入社。出身地域であるマサワで作られる伝統的な陶器の工芸品の技術を、「クラセアスール」のデキャンタ製作に応用。その後、新しく設置された商品技術部で、プロダクトエンジニアとしての新たなキャリアをスタートしている。

工場の様子

現在の蒸留長(テキーラ・マスターディスティラー)として活躍するヴィリディアナ・ティノコは、2016年に品質管理のマネージャーとして入社後、現在の役職に就任。男性が活躍することの多いテキーラ工場の世界で、女性が蒸留長になることは非常にまれなことだ。

ヴィリディアナ・ティノコ

そして昨年は、女性社員がお互いのスキルを共有して高め合うことを目標に、社内組織「WIL CAM(Women in Leadership Clase Azul Mexico)」を発足。今年は、スペイン、日本、アメリカ、メキシコそれぞれの拠点からメンバーを招集し、クラセアスール女性社員による初めての国際サミットの開催を予定している。

また、工場があるサンタマリアカンチェスダという小さな町に、工場で働く親や、その地域に暮らす誰もが子供を預けられる託児所をつくるプロジェクトも立ち上げた。メキシコの小さなコミュニティーでは、女性が若くして家庭を持ち、子育てのために自らの仕事を犠牲にしなければならず、家庭の収入減少を招くケースが非常に多いからだ。限られた収入は、子供の認知発達に重要な栄養のある食べ物や、初期刺激を与える機会を損失する悪循環に陥いる原因のひとつといえる。

社会課題にアプローチしたこのプロジェクトは好評を博し、幼い子供を持つ女性が多い他の地域にも、同様の託児所の建設を予定している。

「クラセアスール」が持つ非営利組織、「Fundación Causa Azul(フンダシオン・カウサ・アスール)」もまた、女性リーダーが活躍する場のひとつだ。サグラリオ・ミランダが代表を務め、文化遺産としての伝統技術を守りながら、彼らにとって尊厳のある生活の実現を目指している。

フンダシオン・カウサ・アスールの女性たち

昨年は団体設立から10周年の節目として、女性の職人たちと協働し、「Guardianas de la Cultura(グアルディアナス・デ・ラ・クルチューラ=文化の守り人の意)」という通年イベントを開催。女性職人の技術向上を通して伝統文化を守り、また、彼女たちの収入につながる機会を生み出すことをゴールとした当イベントを含め、総計500人以上の職人のサポートを行った。

「クラセアスール」は女性の活躍を促進し続け、キャリアをステップアップしていく女性たちのストーリーは、この先も展開していく。

text:Tomoe Tamura

【関連記事】【2023年 国際女性デー】社会起業家・白木夏子さんをジレンマから救った「世界の女性たち」

関連情報

リンクを
コピーしました