サステナブルファッションの旗手、ガブリエラ・ハースト。自然と女性たちへの想いが創作の源

“最もサステナブルなファッションブランド”の創設者兼クリエイティブディレクターとして知られるガブリエラ・ハースト。「美しく、長く愛せるもの」に対する揺るがない信念は、故郷、ウルグアイの雄大な“母なる大地”が育んだ。

“最もサステナブルなファッションブランド”の創設者兼クリエイティブディレクターとして知られるガブリエラ・ハースト。「美しく、長く愛せるもの」に対する揺るがない信念は、故郷、ウルグアイの雄大な“母なる大地”が育んだ。
洗練されたフレンチスタイルで人気の歴史あるブランド「クロエ」にサステナブルな視点と現代性を加え、新たなステージへと導いたガブリエラ・ハースト。2023年の退任後、自身のブランド「ガブリエラ ハースト」に集中し、精力的に活動している彼女に、「持続可能なファッション」への信念とその“最新地点”について話を聞いた。
──最新の秋冬コレクションでは、生命の再生と豊穣(ほうじょう)の象徴として新石器時代の女神をテーマにしていますが、いつも“強い女性”からインスパイアされるのはなぜですか?
「古代から現代までの長い歴史を通じて、常に私には『女性から学びたい』という好奇心があるのです。女性はその人生で直面する様々な障壁を乗り越えて何かを『生み出す』ことで、違うレベルの『強さ』を獲得できるのです。私の母もとても強い人で、見渡す限り自然しかない牧場で400頭近い馬を育て、愛情を注いで生きてきました。私が女性たちに感じる絆は、自然とも深い関係があります」
──そのウルグアイの広大な牧場で、あなたも生まれ育ったのですね。
「そうです。私たちが自然に帰属しているのであって、その逆では決してありません。牧場経営にはサステナビリティ──長期的視点、次世代への継承、循環型精神、再利用──が根本にあって、その思想をファッションに注入したいと考えました。昔は10年に一度だった牧場での旱魃が今は2年ごとになっています」
──秋冬コレクションではパイソン(古代では再生の象徴)や毛皮も使用していましたが、ビーガン(皮革、ファー素材などを不使用)デザイナーとの違いは何ですか?
「天然皮革の代わりに化石燃料由来の素材を使うことはまた別の問題になります。私が大切にしているのは、品質がよく美しいものを長く愛する、ということです。革は食用肉の副産物で、パイソンは在来野生生物を守るために捕獲された外来種から作られた“インヴェルサ素材”を使用しています。ミンクはヴィンテージコートをカットし、イタリアの高度な職人技で縫い合わせて再生したものです。すでにたくさんオーダーが入っていますよ」
──小規模なブランドがサステナビリティを徹底するのは難しいことです。
「ビッグプレイヤー(LVMHやケリンググループなど)の役割は重要です。私も様々な施策や意見の交換をすでにしています。小さいブランドにはコラボレーションが必須で、知識共有や素材調達などでも他社と協業できるはずです。また、大会社が動くには時間がかかるけれど、小さな会社には俊敏さという利点がある。昔に比べれば状況は進展しているので、若い人たちには諦めないでほしいですね。自分の仕事は『学べる媒体』だと考えていて、心と体、精神も含めて地球と人間性を大切にしていくという強い柱を築いていきたい。クリエイターとして、人々に重要なインスピレーションを与えられる『母船』になりたいと思っています」
「ガブリエラ ハースト」の2025-26秋冬コレクションは、考古学者マリヤ・ギンブタスの『女神の言語』が着想源。蛇や螺旋(らせん)など、生命や再生を象徴するモチーフを用い、力強く女性らしいデザインに昇華させた。外来種を捕獲することで調達した“インヴェルサ素材”のパイソンやヴィンテージミンク、認定されたなめし工場のレザーなど、環境に配慮した素材や技術を取り入れ、神話と持続可能性を融合。







インタビュー・文:渡辺三津子・ファッションジャーナリスト
【雑誌『marie claire』のPDFマガジンダウンロードページ】
©︎marie claire/photos: ©GABRIELA HEARST
GABRIELA HEARST/ガブリエラ・ハースト

ウルグアイ出身。家族経営の牧場で育ち、2015年に自身の名を冠したブランドを設立。「長く愛せる美しさ」と「サステナビリティ」を核に、真のラグジュアリーを追求する。2020年には史上初のカーボンニュートラルなランウェイショーを実現。2020~2023年には「クロエ」のクリエイティブ・ディレクターを務めた。CFDAウィメンズウェア・デザイナー・オブ・ザ・イヤー(2020)やTIME Earth Awards(2024)など、受賞歴も多数。2025年、「ナショナル ジオグラフィック世界を変革する33名」の1名に選出された。
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