時を超えて深化する美しさと匠の技 「ヴァシュロン・コンスタンタン」 270年のあくなき探求
2025年に創業270年を迎えたスイスの名門ウォッチメゾン「ヴァシュロン・コンスタンタン」。メゾンが受け継ぐ遺産と伝統を大切にしながら、常に限界に挑戦し、「時計を超える時計」を作り続けている。革新的な製品開発の先頭に立つプロダクトマーケティング・アンド・イノベーションディレクターのサンドリン・ドンガイさんに、深化するメゾンの伝統と革新について語ってもらった。
2025年に創業270年を迎えたスイスの名門ウォッチメゾン「ヴァシュロン・コンスタンタン」。メゾンが受け継ぐ遺産と伝統を大切にしながら、常に限界に挑戦し、「時計を超える時計」を作り続けている。革新的な製品開発の先頭に立つプロダクトマーケティング・アンド・イノベーションディレクターのサンドリン・ドンガイさんに、深化するメゾンの伝統と革新について語ってもらった。
──ヴァシュロン・コンスタンタンでは、「イノベーション」という言葉は非常に重要なキーワードだと思います。そうした中でドンガイさんの肩書「プロダクトマーケティング・アンド・イノベーションディレクター」はどんな役割を担い、具体的には何をするのでしょうか。
開発における非常に早い段階から、三つの分野で新しいコンプリケーション(複雑機構)について研究を進めていきます。まずは新しいコンプリケーションを常に探していくことです。天文学的、実験的、そして技術的視点から、新しいものを探す。そして次に機能性です。この機能性はメゾンの伝統でもありますので、常に向上させていきたいと考えています。そして最後は、時計を身につける方々が感じる心地良さ。私は常に10年先を見据えて、イノベーションを考えています。
──10年先を読んでいくのは大変なことだと思いますが。
もちろん大変で、チャレンジングです。というのも、市場に出たときにはもしかしたら既に時代遅れになっているという可能性がないとは言い切れないからです。ですから、技術やデザイン、コンセプトの間の微妙なバランスを取りながら、常に様々なところに目を配り、進めていかなければなりません。
──先を見通しつつ、ということですか。
ただ先を見通すのではなく、しっかりとほかの業界で起きていることに対しても観察を続け、時計作りにそうした発想などを取り入れていけるかを思い描きます。


トラディショナル・ツインビート・パーペチュアルカレンダー
例えば、2019年に発表したツインビートのモードセレクターは、着用した時には高速振動で動き、着用していない時には自社製キャリバーを低振動に切り替えます。このコンセプトは自動車業界からヒントを得ました。
このように常に他の業界の動向を注視し、新たなトレンドを見極める。そして消費者がどのように使っているかも観察し、それらの特徴をメゾンの時計開発のロードマップの中にどのように落とし込んでいけるかを常に視野に入れています。
──東京・神宮前で「The Quest(探求):270年にわたる卓越性の追求」展が4月26日から始まりました。メゾンの過去、現在、未来が体感できるものです。あらためてヴァシュロン・コンスタンタンが唯一無二のメゾンである理由を教えてください。
一つめは、やはりデザインにおけるレガシーです。私たちにはすばらしい伝統があります。例えば、ケースやセンターダイヤルなどの特徴的なデザインに、美意識が込められています。デザインそのものがまさにヴァシュロン・コンスタンタンを表しています。独創性がどの時計にも生かされている。それが大きな宝です。

二つめは、「Classic with a twist(伝統的でありながら遊び心のある)」です。例えば、今年1月に発表したステンレススティール製の「ヒストリーク・222」はメゾン創業222周年にあたる1977年に初めて発表したものですが、その時代に合ったモダンさに遊び心を加えました。この遊び心がさらに驚きをもって消費者に迎えられる。こうした独創性がヴァシュロン・コンスタンタンのシンボルだと考えています。


──デザインと技術のバランスが難しいと思いますが。
デザインや技術のどちらかを優先することはなく、どちらも最高のレベルでバランスのとれた形にしていくことが重要です。例えば、今年の「ウォッチズ・アンド・ワンダーズ」で発表した「レ・キャビノティエ・ソラリア・ウルトラ・グランドコンプリケーション-ラ・プルミエール-」は見た目の総体的な美しさを追求したうえで、41もの複雑機能を備えています。完成までに8年の年月を要しました。


レ・キャビノティエ・ソラリア・ウルトラ・グランドコンプリケーション – ラ・プルミエール –
──こうした複雑機能を搭載した美しい時計を製造する過程で、時計職人とデザイナーが一緒にものづくりや開発をおこなっているのでしょうか。
デザイナーのほか、時計製造部署の人間など、誰もが意見を言える場を設け、議論をします。だれが偉いとか偉くないという話ではなく、みんなが同じレベルで議論するので、それぞれのエゴが全面に出ることが決してありません。
──ヴァシュロン・コンスタンタンは「時計を超える時計」というイメージがあります。「こんなものはできないだろう」というものはあるのでしょうか。また不可能を可能にしていく秘けつとは。
技術開発をしている担当者に、「地球から見た月のサイクルではなく、月から見た地球のサイクルという天文機能を取り入れられるか」と投げかけたことがありました。エンジニアが数日間コンピューターで計算しましたが、「技術的には可能だが、複雑すぎるので、限られたスペースでは難しい」という結論となりました。現時点ではできないこともあります。でも、挑戦し続けるのです。
──ものごとが実現すれば、さらにそれを超える不可能に挑戦することになる。その連続だと思いますが。
フランソワ・コンスタンタンの言葉にあるように、「DO BETTER IF POSSIBLE, AND THAT IS ALWAYS POSSIBLE(できる限り最善を尽くす、そう試みることは少なくとも可能である)」です。それが我々のモットーでもあるのです。
──ヴァシュロン・コンスタンタンは最も複雑な時計を作るメゾンとして有名です。それを支えるのが、「レ・キャビノティエ」というビスポークのタイムピースを手がける部門ですが、ものづくりにはタイムリミットがないのでしょうか。


レ・キャビノティエ・ザ・バークレー・グランドコンプリケーション
通常はおおむね1年に30ピース程度作ります。お客様の要望などを聞いて決めていきます。我々が創業260周年の際に発表した「リファレンス57260」は、アメリカ人のバークレー氏の要望で、57の複雑機能を搭載した懐中時計です。当時、初めてユダヤ暦の永久カレンダーを搭載した時計を希望され、製作しました。そしてその完成間際、バークレー氏から我々への次への挑戦として「リファレンス57260」よりさらに複雑な時計を製作してほしい、と要望があり、昨年発表した「レ・キャビノティエ・バークレー・グランドコンプリケーション」を完成させました。63もの複雑機能には初めての中国暦の永久カレンダーを搭載しています。この時計を完成させるまでには11年かかりました。私たちはタイムリミットなどという時間の感覚を持っていません。
──今回の展覧会はどのような目的で開催されることになったのでしょうか。
まずメゾンをできるだけ多くの方々に知っていただく。メゾンや時計製造の歴史や伝統、商品開発といったことをどのように行っていたかを体験、経験していただければうれしいです。270年に及ぶ卓越性、デザインの美しさ、そして匠(たくみ)の技。そういったすべての要素を体感できる場だと思います。
interview & text: 宮智 泉(マリ・クレールデジタル編集長)
「The Quest(探求):270年にわたる卓越性への追求」
住所:東京都渋谷区神宮前5-11-1
営業時間:11時~19時(最終入場 18時30分)
定休日:火曜日(祝日を除く)
入場料:無料(予約優先、来場規制あり)
問い合わせ先:0120-63-1755
特設サイト:https://www.vacheron-constantin.com/jp/ja//events/tokyo.html
※展示内容は予告なしに変更される可能性あり
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