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SEIBU・SOGO 日本の伝統文化と現代の価値観が融合する「Rethink」舘鼻則孝

花魁の高下駄から着想した「Heel-less Shoes」をはじめ、日本の伝統文化に現代的な要素を組み合わせ、作品を生み出すアーティストの舘鼻則孝。西武渋谷店で展覧会が開催中だ。伝統工芸士とのコラボレーションや日本古来のモチーフを斬新に表現したアートを通して、受け継がれてきた美を未来へつなぐ。

「『Rethink(リシンク)』という考え方を軸に活動を展開しています。作品制作や展覧会の開催にあたり、僕自身がまず日本の歴史や文化をインプットする。そしてそれに現代的な意味を付与して、作品にアウトプットします。鑑賞する方々には、その過程を追体験してもらうのです」

舘鼻則孝の名を世に知らしめたのは、代表作の「Heel-less Shoes」。花魁(おいらん)の高下駄に着想を得たこの靴は、アメリカの歌手に愛用され、ニューヨークのメトロポリタン美術館などにも収蔵された。靴の制作からキャリアをスタートし、現在は彫刻、絵画など、多様な作品を手がけている。活動に通底するのが、この「Rethink」の考えだ。どのように自身の理念に辿り着いたのだろうか。

舘鼻則孝 展 西武渋谷店
Heel-less Shoes
2021
Dyed cowhide, pig suede, coated glass crystal, metal fastener
[W9.7×H33×D19cm]
photo: Keizo Kioku ©NORITAKA TATEHANA K.K.
Courtesy of KOSAKU KANECHIKA
舘鼻則孝 展 西武渋谷店
Baby Heel-less Shoes
2019
Dyed cowhide, pig suede, glass crystal, metal fastener
[W6.7×H17.4×D11.7cm]
photo: Keizo Kioku ©NORITAKA TATEHANA K.K.
Courtesy of KOSAKU KANECHIKA

舘鼻は1985年、歌舞伎町で銭湯を営む家系に生まれ、銀行員の父と人形作家の母のもと、鎌倉で育った。

「古い日本家屋で、母のアトリエのような部屋がありました。そこで羊毛が糸やフェルト、そして人形に変わっていく姿を見ていた。おもちゃも『自分で作りなさい』という教育だったので、手を動かして何かを作ること自体が遊びになっていました」

中学生の頃、裏原ブームが全盛で、鎌倉から原宿へ通った。ファッションに興味が湧き、自身のブランドを立ち上げて物を作りたいという思いを抱く。独学でジャケットやパンツを制作し、美術大学を受験するための予備校に通い始めた。15歳の時、粘土で型を作り、手芸店で買った革を縫い合わせ、初めて靴を完成させる。

高校卒業後は服飾の専門学校に進むことも考えたが、東京藝術大学に進学した。なぜその進路を選んだのか。

舘鼻則孝 展 西武渋谷店
Descending Painting
2021
Acrylic on panel
[W450×H170cm]
photo: Keizo Kioku ©NORITAKA TATEHANA K.K.
Courtesy of KOSAKU KANECHIKA
舘鼻則孝 展 西武渋谷店
Descending Painting Series
2022
Acrylic on panel
[W91×H116.7cm]
photo: Osamu Sakamoto ©NORITAKA TATEHANA K.K.
Courtesy of KOSAKU KANECHIKA

「デザイナーとして世界で活躍したいと思いました。ファッションの勉強をするなら、パリやアントワープに留学したい。でもそこでともに勉強する人たちは、生まれ育った自国の文化を学んでいるわけですよね。すると、そこで外国人である僕は勝てないと思った。だったら日本の文化を学んでから世界に出るほうが、結果的に近道なのではないか、と。それで、日本の伝統や古来の技術を知るため、東京藝術大学の工芸科に進みました」

染織を専攻し、友禅染を学びながら、江戸時代の花魁などを研究した。卒業制作で、友禅染を用いたドレスと「Heel-less Shoes」を発表。この靴がアメリカの著名な歌手のスタイリストの目に留まり、専属シューメイカーとなる。若くして世界的な注目を集めるなかで、やがて気づきを得た。

「日本文化を継承するために、自分にしかできない活動があるのではないか。脈々と続いてきた日本文化の延長線上で仕事がしたい。そんな思いから、2014年に伝統工芸の技法を使った彫刻作品を発表しました」

そうしてデザイナーからアーティストへと移行する。各地の伝統工芸士とコラボレーションするほか、2016年にはパリのカルティエ現代美術財団で人形浄瑠璃文楽の公演を開催するなど、活動の幅は広がっていく。

「イノベーターとして、日本文化が時代に合わせてアップデートするきっかけを生み出す。日本語で培われてきた文化を外国語に翻訳するような思いで活動しています」

絵画作品に描かれる雲や雷などのモチーフも、日本古来の文化に由来している。「神社のしめ縄は雲、その前にある紙垂(しで)と呼ばれるジグザグの白い紙は雷を表しています。しめ縄には、聖域を示す結界という意味がある。雲や雷のように形がないものを描く時に作家性も表れると思います」

最近では、パブリックアートとして、人々が集うバスケットボールコートも制作した。「Rethink」が生み出す温故知新の美は、ファッションからアート、そしてさらなる広がりを見せている。

舘鼻則孝 展 西武渋谷店
Descending Layer
2021
Acrylic, glass, mirror, stainless steel, steel
[W60×H60×D5.4cm]
photo: Keizo Kioku ©NORITAKA TATEHANA K.K.
Courtesy of KOSAKU KANECHIKA
舘鼻則孝 展 西武渋谷店
Floating World Series
2021
Acrylic, wood, bronze, brass
[W24.5×H44.5×D24cm]
photo: Keizo Kioku ©NORITAKA TATEHANA K.K.
Courtesy of KOSAKU KANECHIKA
舘鼻則孝 展 西武渋谷店
Thunder Painting Series
2024
Acrylic on panel, stainless steel
[W17.2×H100×D4cm]
photo: Osamu Sakamoto ©NORITAKA TATEHANA K.K.
Courtesy of KOSAKU KANECHIKA

Noritaka Tatehana
meets SEIBU SHIBUYA

舘鼻則孝 展-Rethinking Ancient Japanese Icons-
会期:3月17日(月)まで
会場:西武渋谷店B館8階=特設会場/A・B館5階=連絡通路 / B館3階=コンポラックス
現代美術家 舘鼻則孝のアートの世界を、西武渋谷店の店内でお楽しみいただけます。
*展示内容・展示拠点は一部変更となる場合がございます。

舘鼻則孝 展 西武渋谷店
photo: GION

関連情報

Profile

舘鼻則孝/Noritaka Tatehana

1985年、東京都生まれ。東京藝術大学美術学部工芸科染織専攻卒。創作活動の概念として「Rethink」を掲げ、日本の伝統文化や伝統工芸技法を活用して現代の価値観を表現する作品を多数制作している。また、花魁の高下駄から着想を得て制作された代表作「Heel-less Shoes」は、アメリカの歌手に愛用されたことでも世界的に知られ、ニューヨークのメトロポリタン美術館やロンドンのヴィクトリア・アンド・アルバート博物館などに永久収蔵されている。

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