「パリ2024オリンピック」話題の開会式、3000着の衣装制作の舞台裏をリポート
2024.7.30
Pool / Getty Images
前例のない華やかさと奇抜な演出が大きな反響を呼んでいるパリ2024オリンピック開会式。その衣装制作を手がけたアトリエで本番前、今回の芸術監督を務めた舞台演出家トマ・ジョリーらを取材したという舞台裏リポートを、マリ・クレール インターナショナルのフランス版デジタル記事よりお届け。
2024.7.30
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前例のない華やかさと奇抜な演出が大きな反響を呼んでいるパリ2024オリンピック開会式。その衣装制作を手がけたアトリエで本番前、今回の芸術監督を務めた舞台演出家トマ・ジョリーらを取材したという舞台裏リポートを、マリ・クレール インターナショナルのフランス版デジタル記事よりお届け。
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2024年7月26日(現地時間)、オリンピック開会式で世界中の視線がセーヌ川に集まった。数週間前から、各チームはダンサーやアーティストが着用する衣装の最終調整に追われていた。極秘裏に。
「この糸を引っ張れば、そう。もし弾力がなくなっても問題ない」
パリ・オペラ座の元衣装デザイナーでテーラーのRoberta Oakey(ロベルタ・オーキー)は、このアトリエで物事に目を光らせながら、40年間使い慣れたハサミを握りしめていた。パリオリンピック2024の本部から目と鼻の先にあるこの場所で、オリンピックとパラリンピックそれぞれの開会式と閉会式の衣装が作られる。
そして6月のある火曜日の朝、私たちを迎えてくれたデザインチームは抑えきれない熱意に満ちていた。喜び、同時にストレスもある。ミシン、作業台、布地、型紙……材料や道具が私たちの好奇心いっぱいの視線に触れるよう展示されているが、最終的な仕上がりを見ることはできない。すべての衣装にはカバーがかけられている。2024年7月26日までの極秘事項だ。残念ながら。
とはいえ、映画『プセの冒険 真紅の魔法靴』(2001年)の主人公、親指小僧のように、各チームはこれらの衣装の緻密(ちみつ)なミリメートル単位のデザインについて、いくつかのヒントを誇らしげに明かしている。
出演者ひとりひとりが自分用の衣装を着られるようにするため、総計3,000着のユニークなシルエットが、20人ほどのコスチュームデザイナーと帽子職人によって作られている。また、フランス国内外の若手デザイナー12人が選ばれた。「フランスのファッションがいかに活気にあふれ、豊かであるかを示したかったので、有名な何人かを招待しました」と式典の芸術監督を務めるThomas Jolly(トマ・ジョリー)は説明する。
彼は、「何か良いもの、何か美しいもの」を提案し、オリンピック選手村の多文化的な性質を強調して、スポーツウェアの世界、フランスの歴史、ラグジュアリーにおけるフランスのノウハウの結集を人々に提供するような式典にしたいと熱望していた。
私たちが取材した6月の時点で、すでに衣装の85%が出来上がっており、その10日後に予定されていたリハーサルに向けて、デザイナーたちは最後の仕上げに余念なく取り組んでいた。
「私たちは本当に秘密裏に動いています」とDaphné Burki(ダフネ・ビュルキ)は言う。『Culturebox l’émission』の司会者であり、『Drag Race France』の審査員でもある彼女がトマ・ジョリーに選ばれた理由は、ディオールでのプロとしての経験と、フランスの若手デザイナーに対する「鋭い目」だった。
カバーで覆われた衣装の横で、衣装デザイナーの一人であるCorinne Paget(コリンヌ・パジェ)が話してくれた。「トマからモックアップ(実物大の模型)をもらって、そこから衣装を作ります。各アーティストに余白を残しておき、彼らが試着に来たとき、それに応じて調整するんです」。チームは、多様性に満ちた華やかなセレモニーを目指すと同時に、「衣装が第二の人生を与える循環型」を目指している。
アトリエの中央では、式典の衣装デザイナーの責任者であるOlivier Beriot(オリヴィエ・ベリオ)が、クチュールのマネキンに着せた衣装について説明している。16世紀末のフランス王アンリ4世の時代を彷彿(ほうふつ)とさせるスタイルで、体にぴったりとフィットした衣装……しかし、ネオプレーンのような素材はバスケットボールを連想させる。
リュック・ベッソン監督との仕事や、『LUPIN/ルパン』シリーズ(Netflix)を手掛けたことで知られる彼は、「一度しか着用しないという衣装のユニークな性質で、より奇抜な表現が可能になりました」と語る。「フェンシングやアメリカンフットボールを連想させる、あのカッティング」。快適さについては、俳優が最後に語るだろう。
耐性についても考慮されている。「衣装から50cmのところを通るカメラがあるので、(衣装が)壊れてはいけないのです」。現在の天候を考慮し、オリヴィエは防水性についても用心深い。「雨が降っても色落ちしないことを確認しています」
(雨を)心配しているだろうか? ピュイ・デュ・フー(フランスにあるヨーロッパの歴史を主題としたテーマパーク)の衣装デザイナーでもあるオリヴィエは微笑んでいる。「パリは雨に濡れたときもまた素晴らしいですよ!」

衣装の制作は2022年12月から2023年6月にかけて行われたと、トマ・ジョリーは振り返る。「これら4つのセレモニー(オリンピック、パラリンピックの開会式と閉会式)を想像するのは、気分が浮き立つようなことでした……。それからアイデアを練り、実行に移し、デザインに取り掛かりました。そして今、2024年6月、私たちは夢を現実に変えようとしています」
国際オリンピック委員会からのフィードバックをもとに調整を重ねるという過酷な任務だったが、芸術監督は最終的な結果に満足している。「重要なのは、私の当初の意図に沿ったものだったということです」
衣装が作られている間、他のチームはセットの最終調整と構造物の準備をしていた。
1時間半後、ダンサーやアーティストがリハーサルを中断して衣装を試着しに来るため、取材現場を後にする時間になった。
ダフネ・ビュルキは、「私たちは、彼らを一人ずつ迎えて話を聞き、快適なポイントを聞き出すつもりです」と締めくくった。「イライラしないで」と彼女はアドバイスするが、それでも集まった記者たちの焦りには同情的だ。「今にわかるわ。大事な日にすべての衝撃を一挙に目にすることほど素晴らしいことはないでしょう」
translation & adaptation: Akiko Eguchi
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This article was originally published on Marie Claire FRANCE
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