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創業100周年のダミアーニが伝えたい物語とは? ジェローム・ファヴィエCEOが語る

ダミアーニグループCEOジェローム・ファヴィエ氏(スイス・ジュネーブで)

2024年に創業100周年を迎えたイタリアのハイジュエリーブランド、ダミアーニ。周年を記念した特別プロジェクトやブランドへの思い、日本市場への期待などについて、ジェローム・ファヴィエCEO(最高経営責任者)が語った。

ダミアーニは、世界有数の金細工の町、ヴァレンツァでエンリコ・ダミアーニが1924年に創業して以来、3世代にわたり創業ファミリーが経営を担ってきた。ジュエリー界のアカデミー賞と称される「ダイヤモンド・インターナショナル・アワード」を過去18回受賞するなど、デザインと技術力の高さを誇る。ミラノでは、創業100周年を記念し、100点のハイジュエリー作品を展示する展覧会「Damiani 100 X 100 Italiani」が行われた。ダミアーニファミリーから経営を任され、2018年からブランドを率いているジェローム・ファヴィエCEOに話を聞いた。

家族経営だからこそできる純粋なものづくり

ファヴィエCEOは20年以上高級ジュエリー・ウォッチ業界でのキャリアを積んできました。ダミアーニの誇るべき点はどこにあると考えますか?

ダミアーニを最も特徴づけるのは、創業以来一貫して家族経営を行っていることです。ほとんどの一流ブランドは株式市場に上場していますが、その場合、投資家の需要など、市場の力学に合わせたビジネスを行わなければなりません。家族経営の場合ももちろんビジネスであることに変わりはありませんが、ビジネスやものづくりの原動力は情熱です。また、株主ではなく、純粋にエンドユーザーに対して喜びを与えたいと考え、実践することができます。私たちはluxury industry(ラグジュアリー産業)には属さないと考えています。“luxury”は“industry”にはなりえず、“authenticity”(本物)であるべきだからです。ダミアーニは、顧客に忠実で、情熱と美学に突き動かされた、真にラグジュアリーなブランドなのです。

2018年にダミアーニのCEOに就いてから、変えたことはありますか?

私の使命はブランドの勢いを加速させることです。家族的なアプローチを尊重しながら、私のバックグラウンドである企業経営のアプローチを組み合わせています。ダミアーニは、イタリアブランドらしく、強い個性やスタイル、創造性を持っています。ファミリーはオープンマインドで、先見の明もあります。何か新しいコレクションを作ること以上に、私たちが何者であるのか、そのDNA、創造性、情熱を明らかにし、もっと世に知ってもらうことにフォーカスしています。ブランドによっては、こうしたストーリーを創り出さなければならないことを知っていますが、ダミアーニの場合、すでにすばらしいストーリーがあります。創り出す必要はないのです。明らかにするのが、私の仕事なのです。

ヴァレンツァで継承してきた職人技

本拠地のヴァレンツァについて教えてください。

ヴァレンツァは今日、世界最大級のジュエリー産業の町です。数年前に生産拠点を作り、外からヴァレンツァに入ってきたイタリアブランドもありますが、ダミアーニは違います。ヴァレンツァはダミアーニの故郷であり、100年前から現在までそこにいるのです。ヴァレンツァのメイン広場は最近、「ダミアーニ スクエア」と改称されました。これは、ダミアーニこそが、ヴァレンツァにとって最も重要なブランドであることを示しています。ヴァレンツァの工房には、約200人の職人が働いています。しかし、ブランドが成長する中で、現在の工房は小さすぎます。そこで、2025年に1万2000平方メートルの大きさの新しい生産拠点をオープンさせる予定です。カンファレンスセンターや物流施設のほか、ミュージアムも併設されます。職人の数は将来的に500人まで増やしたいと考えています。
ダミアーニには最高の職人が集まってきます。それはなぜだと思いますか? 第一に、彼ら彼女らの父親や祖父が同じくダミアーニの職人だったから。第二に、手作業にこだわっているから。他のブランドにあるような大きな機械はありません。それらは職人にとって退屈で、ある意味、わずらわしくもあります。そして最も重要な理由として、「ダミアーニ・アカデミー」という次世代育成の取り組みを実践していることです。年2回、無料で研修生を受け入れ、ジェムセッティングなどの技術を教えています。プログラム終了後、ダミアーニに就職する義務はありませんが、ほぼ全員がダミアーニに残る選択をします。職人どうし皆友人であり、そういった人間関係も大事なのです。

ダミアーニが展覧会で伝えたい、真実の物語

創業100周年という歴史の重みをどう受け止めていますか?

100年もの歴史を本の1ページ、一つのインタビュー、あるいはジュエリー作品で総括するということは、大きな挑戦であり、大きな責任です。同時に、大きな喜びも感じています。100周年を記念して、ミラノを皮切りに世界各地で展覧会を開催します。一部は日本にも巡回予定です。ミラノの展覧会「Damiani 100 X 100 Italiani」では、100点のハイジュエリー作品を展示しました。会場となった「ガッレリエ・ディタリア」が、ブランドに空間を貸し出すのは初めてのことです。ダミアーニがメイド・イン・イタリーを体現する存在であることを美術館側に認めてもらい、実現しました。また、イタリアでは政府の認可をもらい、100周年記念の公式切手も販売されます。

これだけの数の新作を展覧会の形で一般公開するというのは、壮大でユニークなプロジェクトです。展覧会を企画した狙いや伝えたいポイントを教えてください。

美術館の使命は、文化を人々に伝えること。ダミアーニはブランドであるとともに、イタリアの文化遺産であると自負してます。したがって、職人技、創造性、歴史、レガシー、家族といった文化的要素を広く伝えていくことが、展覧会の狙いであり、ダミアーニの使命です。「Damiani 100 X 100 Italiani」には、100カラットのサファイアを使った作品があります。他にも、それほど一般的でない宝石が多く登場します。これは、ダミアーニファミリーが最高の人脈と頭脳を持っているから実現できることです。ファミリーは直接鉱山に足を運び、すばらしい宝石を探します。技術やデザインだけでなく、宝石のすばらしさにも注目してほしいと思います。

「Damiani 100 X 100 Italiani」で展示された、100.19カラットのスリランカ産サファイアを使った「ミモザ エターナルブルー」©︎DAMIANI

日本市場のポテンシャルをどう評価していますか?

ダミアーニは日本が大好きです。日本人はいいものを見極める感性を持っていて、イタリアのことが好きな人も多い。ダミアーニが持つ価値観を十分に共有できると考えます。実際、ダミアーニの日本における知名度は高い。ただ唯一、課題を感じているのは、ダミアーニのほんの一部しか日本の方に知られていないということです。「ベル エポック」コレクションの人気が高く、そのイメージが先行しているのかもしれません。ダミアーニには奥深さや歴史がある。宝石やデザイン、職人技もすばらしい。100周年という節目に、ダミアーニの真実の物語を、より多くの日本の方に知ってもらいたいのです。

interview & text: Shunya Namba @Paris Office

Profile

ジェローム・ファヴィエ Jerome Favier

1970年フランス生まれ。リシュモングループなど、20年以上にわたり高級ジュエリー・ウォッチグループでのキャリアを重ね、2018年の初めにダミアーニグループの副社長兼最高経営責任者(CEO)に就任した。英語とフランス語、イタリア語が堪能で、国際経営学のMBAを取得している。

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