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アップサイクルジェムと東洋の工芸の幸せな出会い。サステナブルなジュエリー「シャランポワ」

もの選びの基準にサステナブル(持続可能)な視点を加えることで、ファッションを楽しむことも、作り手の思いや生産背景を支持することにつながる。環境や社会に配慮した、意思あるもの作りを手がけるブランドを取り合げる連載。今回は、アップサイクルジェムに新しい命を吹き込み、次世代へとつなげるジュエリーブランド「sharanpoi(シャランポワ)」をクローズアップ。

すでに地上にある資源を活用し、唯一無二のジュエリーに

デザイナーの安部真理子さんは、ラグジュアリーブランドのMD、バイヤーを経てジュエリーブランド「ARTIDA OUD(アルティーダウード)」を立ち上げ、ディレクターとして活躍。2021年の年末に自身のブランド「sharanpoi(シャランポワ)」を立ち上げた。

「シャランポワ」で使用しているのは、すべてアップサイクルジェム。不要になった古いジュエリーから取り外した貴石や、石屋さんで眠っていたデッドストックのストーン、パールなどを独自のルートで入手。宝石の個性を引き立てる大胆なカットを施したり、東洋の伝統技術を組み合わせることで、ジュエリーとして新たな命を吹き込んでいる。

「日本では古いジュエリーの価値がきちんと評価されておらず、リサイクルショップで安価に取引されたものの多くが海外に流出しており、社会問題になっています。石によっては昔のように大きい原石はなかなか採掘できず宝石の産出量も減っていますが、質の高い、古い宝石はまだまだたくさんある。すでに地上にある資源を活用することで、古い宝石の価値を見直し、環境問題にも貢献できたらと思っています」

隠れ家のようなアトリエでは、手持ちのジュエリーのリデザインも

安部さんが接客する予約制のアトリエでは、数々のジュエリーを実際に見ることができるほか、手持ちのジュエリーのリデザインをフルオーダーで受け付けている。

サロンは完全アポイントメント制。最新情報はインスタグラムで確認を。

「オーダーを受け始めたところ、反響が大きくて驚きました。おばあ様から受け継いだリングや、普段使いしずらい婚約指輪など、お持ちいただくものは様々。シャランポワのお客様は、今あるものを大切にしたい。という考えに共感してくださる方が多いんです。

『ジュエリーのリフォームはデザインが今ひとつで加工賃が高い。だったら新しいものを購入したほうがいい』という従来の流れを変えるため、できるだけ費用を抑えつつお客様のご希望に沿うようなデザインをご提案しています」

インドと日本の伝統技術をモダンに昇華

「シャランポワ」のコンセプトとして安部さんが大切にしているのが、「東洋の工芸を取り入れたファインジュエリー」ということ。仕事でたびたび訪れていたインドで出会った「ポルキ」という技術に魅せられ、その技術を用いた「たまつゆ」というダイヤモンドのシリーズは、ブランドのアイコンとも言える商品。

「ポルキとはダイヤモンドの原石の形状を生かしてセッティングする加工技術のことで、古くから伝わる伝統技術ですが、インドでもこの技術を受け継ぐ職人さんはごくわずか。素材となる宝石だけでなく、伝統技術も私たちに残されている貴重な財産だと思うので、大切に次の世代へと受け継いでいきたい」

大粒のダイヤモンドの周りは、24金にタガネで起伏を入れることで、味わい深い質感に仕上げたリング。たまつゆ K18 polki diamond with enamel ring ¥165,000(シャランポワ)
天然の原石の形状を最大限生かすようにカットされた、ポルキダイヤモンドのピアス。たまつゆ K18 polki diamond studs ¥99,000(シャランポワ)

もうひとつの特徴的な商品が、日本の伝統技術「漆」を用いたもの。安部さんの自信作という漆のバングルは、漆を4度も塗り重ねることで、オニキスのような漆黒の色とツヤを実現。漆の乾燥に時間がかかるため、制作にはなんと4か月もの時間を要する。

桂の木を用い、伝統的な木製漆器の製法で、ひとつひとつ丹念に塗りあげられた漆のバングル。たまのうてな Japanese urushi with pave diamonds cuff ¥220,000(シャランポワ)
厚みのある漆のフープピアスにパヴェのブラウンダイヤモンドをあしらった美しいピアス。たまのうてな Japanese urushi with pave diamonds hoops ¥154,000(シャランポワ)

「仕事柄、欧米で買い付けをすることが多かったのですが、欧米のデザインを模倣するのではなく、自分たちの持っている大切なものを使って、日本ならではのジュエリーを作りたいと、漆のシンプルな良さを引き出すジュエリーを作りたいと思いました。

海外に行くたびに、日本のアイデンティティーについて考えさせられます。例えばインドでは日常的にサリーを身につけるなど、自国の文化をとても大切にしています。伝統技術が生活の中に溶け込んでいて、自然にアップデートされていく。日本ももう少しそうなればいいなと思っています」

ジュエリーデザイナーとしてだけでなく、西陣織や藍染めなどの商品開発や広報としても活躍する安部さん。次の展示会に向けて、ジュエリーと西陣織を掛け合わせた商品を企画中だそう。

「古い宝石をアップサイクルすることはネガティブな風潮だったかもしれませんが、古いものを大切にすることをポジティブに転換していきたい。今あるものを大切に受け継いで新しい価値を作り出す。そんな取り組みを続けていきたいです」

text: Eriko Azuma

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お問い合わせ先

シャランポワ


公式HP | https://sharanpoi.com
Instagram | @sharanpoi.boudoir


 

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