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ネットがなかった時代のファッションアイコン、キャロリン・ベセット=ケネディが今も支持される理由。ケネディ家長男夫妻のロマンスを描くドラマ『ラブストーリー ジョン&キャロリン』で人気再燃!

Tyler Mallory / Getty Images

1963年に暗殺されたジョン・F・ケネディ米大統領(享年46)の息子ジョン・F・ケネディ・ジュニア(享年38)とその妻キャロリン・ベセット=ケネディ(享年33)の悲劇的なロマンスを描くリミテッドシリーズ『ラブストーリー ジョン&キャロリン』が2026年2月13日(金)、ディズニープラスで配信開始に。このドラマをきっかけに、1990年代のアメリカを象徴するパワーカップルとして世間の注目を集め、今なお語り継がれるスタイルアイコン、キャロリンの存在がふたたび脚光を浴びている。マリ・クレール インターナショナルのUK版デジタル記事よりお届け。

ネットがなかった時代のミューズであり、私たちが今も夢中になっている存在

悲劇的な死からほぼ30年が経ってもなお、望まずしてアイコンとなったキャロリン・ベセット=ケネディは、私たちを魅了し続けている。

ディズニープラスで配信中のライアン・マーフィーの最新作『ラブストーリー ジョン&キャロリン』では、サラ・ピジョン演じるキャロリン・ベセット・ケネディがネイルの色選びに悩んでいる姿が見られる。直感的に、これは単なる優柔不断ではないとわかる。“アメリカのダイアナ妃”とも呼ばれた彼女について知られていることは少ないが、一つ明らかなことがある。キャロリンは自分のことをよくわかっている女性だったということだ。彼女が真っ赤なマニキュアをためらったのは、美意識の問題ではなく、人目をひいてしまうかどうかが問題だった。つまり、彼女は注目を浴びたくなかったのだ。しかし、プライバシー(私たちの多くは当然のものだと思っているが)を切望している女性たちに多くあることだが、彼女は最も明るいスポットライトの真っただ中に押し出されてしまった。

そして、33歳の若さで夫であるジョン・F・ケネディ・ジュニア(以下、JFK ジュニア)と自身の姉とともに悲劇的な死を遂げて(1999年7月、いとこの結婚式に向かうためJFK ジュニアが操縦していた飛行機が墜落。同乗していたキャロリンとその姉ローレンも命を落とした)から30年近く経った今でも、彼女はあのときの姿のままであり続けている。

キャロリン・ベセット=ケネディ、あるいはCBK(Carolyn Bessette Kennedyの略)としてよく知られる彼女への関心は、ますます高まっている。ファッションジャーナリストであり、彼女のスタイルに関する決定版として広く評価されている著書『CBK』の著者で、ライアン・マーフィーが手がけるFX(米有料TVチャンネル)シリーズにもコンサルタントとして参加しているSunita Kumar Nair(スニタ・クマール・ネア)氏は、この本を書いた当初のことをこう振り返る。「私がこの本を書いていた当時、彼女は世間に消費されるような存在ではなかった。今では、彼女の存在をあちこちで目にするようになりました」

では、なぜアメリカ版“人々のプリンセス”は、彼女が望まない名声の絶頂にいた時期を知らない世代にとっても、これほど魅力的な存在であり続けるのだろうか? それは、彼女が注目や露出を競うセレブのゲームに参加することを拒否したからだ。ネア氏もそのほかの人々も、彼女がセレブであることを拒否したことこそが、イメージを決定づける力となり、ファッション、メディア、そして現代のアイコンに対する私たちの考え方を今日まで形作ってきたと主張している。

望まずしてイットガールに:広報担当者から公人へ

キャロリンが世間の注目を浴びたのはごく短い期間だったが、その登場の少なさこそが、その影響力を増幅させたのだと、CBKについて多くの記事を書いてきたファッション・エディターのHikmat Mohammed(ヒクマット・モハメッド)氏は理論づける。「キャロリンは謎に包まれている」と彼は言う。「SNSの時代では、私たちは皆、お互いのことを過剰に知りたがり、強い関心を持っている。一方、CBKに関しては、画像もアイテムも彼女のスタイルについて語ることができる人物もほんのわずかしかいない」と彼は言う。その限られた情報と、誇張も過剰もない、抑制された公的なイメージが相まって、彼女は“見せたもの”よりも“見せなかったもの”で定義される人物となった。

「彼女には謎めいた要素がある」とネア氏は付け加える。「それは現代では非常に珍しいことだと思う」。その名が世に知られる前、CBKはカルバン・クラインの広報担当だった。その職務に必要とされる、慎重さ、落ち着き、露出のコントロールといったスキルは、公の場における彼女の人生にも引き継がれることになったが、その移行が決して容易ではなかったとネア氏は説明する。「つまり、彼女はその時期、本当に、本当に大変な思いをしたのです。プライベートを大切にする人間が、突然ジョン・ケネディ夫人という立場に押し上げられると、自分のアイデンティティを見失ってしまう」と彼女は言う。「多くの友人がそのことを話していて、彼女をダイアナ妃と比較していました。2人とも、生涯を通じてスポットライトを浴び続ける男性と結婚した。その世界では注目を浴びないことのほうが不自然で、周囲は彼女たちの苦しみを本当の意味では理解できなかったのです。本来ならもっと寄り添うべきでした。そうしようとはしていたのだと思います。それでもなお彼女にとってはあまりに重い負担でした」

彼女の神秘性はいまなお色あせないが、それは彼女が注目というものを超自然的ともいえるほど理解していたことに根ざしている。常に比べ合い、アルゴリズムによる承認が文化を定義する現代において、CBKの自制する能力はいっそう希少なものだと感じられる。ネア氏はこう振り返る。「自分自身を見失わないようにするということがテーマだと思います。キャロリンはファッションの観点だけでなく、個人の観点からもそれを非常に上手く実践していた。おそらくジョンが彼女に強くひかれた理由もそこにあるのでしょう」

一方、私たち大衆は、彼女の抑制的な態度に、自身の憧れを投影してきた。ネア氏は、「そこには他の人が何をしているかを気にするのではなく、自分の人生を生きるという、ある種の当たり前の価値観に立ち返りたいという憧れがあるのだと思います」と述べている。過度に可視化された時代において、CBKの捉えどころのない存在感は、かつてセレブは、見られていながら、踏み込まれることはなかった存在だった時代があったことを私たちに思い起こさせる。「CBKの装いには、とてもロマンチックでメランコリックな何かがある。彼女は、どの写真でもほとんど満たされない思いを抱えているように見えます。おとぎ話は、とても近くにあるようで、とても遠いのです」とモハメッド氏は付け加える。

“ミニマリズム”が定義される前に存在した「クワイエット・ラグジュアリー」

1980年代にアメリカで大ヒットしたドラマ『ダイナスティ』風の肩パッドやパワードレッシングがあふれかえった80年代の過剰さを経て、CBKのミニマルなアプローチは、ミニマリズムが語られるようになる前に、一度ファッションを白紙に戻すかのように感じられた。「業界は、80年代の黄金時代とその過剰装飾にうんざりしていた」とモハメッド氏は指摘する。10年にわたる見せびらかすための消費が肥大化した後、彼女のワードローブは驚くほど抑制されて見えた。「彼女はスタイルに対する直感が非常に優れていました。自分がどう見られたいかというビジョンを持っていて、そこから決して逸脱することはなかったのです」と、JFK ジュニアやCBKが理想化されていた東海岸の名門私立校に通うようなエリート層の出身であるファッション・文化評論家のLouis Pisano(ルイ・ピサーノ)氏は語る。

ネア氏は説明する。「スタイルに関しては、彼女は何でも買って、あらゆるトレンドを追うような人ではなかった。当時ミニマリズムが流行り始めていたが、彼女は元々そういう着こなしをしていたと思う」。美しく仕立てられたスリップドレス、キャメルのコート、削ぎ落とされた装いを作る彼女のワードローブは、注目を集めようとせずとも自信を物語っていた。この主張しない強さは、80年代の熱狂が冷めた当時と同じように、絶え間ない自己演出が求められる今の時代においても、新鮮に感じられる。「トレンドやロゴを全面に押し出していた90年代のほかのスタイルアイコンたちとは異なり、CBKはある種、規律あるミニマリズムを貫いた。同じシルエットを繰り返し、仕立ての良さを信頼し、ニュートラルなカラーに徹した。その抑制こそが彼女のワードローブに時代を超えた強さをもたらしたのです」と、ヴェスティエール・コレクティブ(仏ラグジュアリー専門のリセールプラットフォーム)のスタイル&アーティスティックディレクター、Gayaneh Guiragossian(ガヤネ・ギラゴシアン)氏は語る。

ネア氏が言うように、「自分を理解していれば、どう着るべきか、どう表現すべきかがわかる。外見の話ではなく人として、自分を引き立てる服の選び方を知っている。その姿勢こそが、CBKの本質的なメッセージだった」。トレンドは目まぐるしく移り変わり、アイデンティティはアルゴリズムに左右され、セルフブランディングが当たり前になった時代において、CBKの服装へのこだわりは、本物のスタイルとはどれだけ消費するかではなく、自分の軸をはっきりさせることにあるのだということを、洗練された形で思い起こさせてくれる。「キャロリンのスタイルは、真のラグジュアリーとは、絶え間ない自己更新ではなく、静かな自信であることを教えてくれるのです」とギラゴシアン氏は付け加える。

圧倒されるほど大量のイメージにさらされ続ける現代において、こうした抑制はますます稀(まれ)だ。心理学で長年研究されてきた「単純接触効果」(心理学者ロバート・ザイアンスが提唱した概念)、人は繰り返し目にするものほど、好意を抱きやすくなる傾向にあるという現象は今、製品があふれかえるオンライン空間でめざましい効果を発揮している。Z世代を対象としたある研究では、SNSがファッションの衝動買いに強い影響を及ぼしており、特に日常的にフィードでトレンドを目にしている女性ユーザーの間で顕著であることが判明した。

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  • This article was originally published by Mischa Anouk Smith on Marie Claire UK

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