【大阪・関西万博】音楽を体感するNo.1のオーストリア館
2025.10.3
開催期間も残りわずかとなった大阪・関西万博。かけこみ訪問を迷っている人や再訪を検討している人に、見逃して後悔することがないように会場内のさまざまなNo.1をご紹介。
2025.10.3
開催期間も残りわずかとなった大阪・関西万博。かけこみ訪問を迷っている人や再訪を検討している人に、見逃して後悔することがないように会場内のさまざまなNo.1をご紹介。
[INDEX]
音楽の都ウィーンに代表されるように、昔からオーストリアは多くの作曲家や演奏家を輩出してきた世界屈指の国。その中には、ベートーべン、モーツァルト、ハイドンなど、誰もが聞いたことのある名前が連なる。その歴史を鑑賞するだけではなく、体感できる展示が人気を呼んでいる。

遠くから見てもひときわユニークな造形が目をひくオーストリアパビリオン。開幕前から話題にのぼることが多かった。さまざまなメディアで紹介されているその姿を一度は目にした方も多いのではないだろうか。
それは、らせん状に伸びやかに空へ上がる楽譜をイメージしたオブジェで、近くで見ると、五線譜は『歓喜の歌』の冒頭になっていることがわかる。素材は木でリボン状になっており、長さ91m、幅4.9m、高さは16.5mにおよぶ。同国の音楽と木造文化が美しく融合した建築で、オーストリアから届いた木材を使ってオーストリアと日本の木造建築の専門家が協働して完成した。取り外した後に繰り返し使えるように、接着剤を使用せず、ネジで留めるという環境に優しい建築方法を取り入れているという。

パビリオンの中は三つのスペースに分かれている。最初は「関係性の部屋」で、ピアノの自動演奏が歓迎してくれる。ここは、オーストリアと日本との友好の証しを示すエリアだ。曲目は、万博のために特別に作曲されたオリジナル曲。モーツァルトの故郷、ザルツブルクにあるザルツブルク・モーツァルテウム大学の学生が作曲した。パビリオンのテーマである「未来を作曲」を表現している。
ピアノは、「The Great Wave off Kanagawa」と呼ばれるグランドピアノ。ウィーンで創業した世界最古のピアノメーカー「ベーゼンドルファー」が製造した限定モデルで、世界に16台しかない貴重な作品のひとつ。
ベーゼンドルファーのピアノは、1869年にオーストリア・ハンガリー帝国が明治天皇に献上したピアノでも知られる。遠隔操作と自動演奏機能が搭載されており、楽曲のレパートリーは1000曲ほどあるそうだ。蓋の内側には、葛飾北斎の浮世絵「神奈川沖浪裏(なみうら)」が描かれている。万博終了後には、オークションにかけられる予定とのことだ。
演奏の背景には、オーストリアの音楽家の紹介や文化を紹介する映像が流れる。日本とのつながりも知ることができる。
天井には、オーストリアを代表するクリスタルブランドである「ロブマイヤー」の2mほどの高さのマリア・テレジア・シャンデリアがあかりをともしている。1873年に開催されたウィーン万博で展示されたシャンデリアのレプリカである。ウィーン万博は、明治維新を経て近代化する波の中で日本が初めて参加した万博。これをきっかけに、ヨーロッパで「ジャポニズム」ブームが起こったといわれている。

次の空間「アイデアの部屋」は、オーストリアのイノベーションを伝えるエリアになっている。現地の研究機関やスタートアップ企業によるプロジェクトが紹介されている。未来のアイデアは、実現が望まれるものばかりで面白い。
音符のモチーフが配された中を、タッチパネル式でクイズやゲームを楽しみながら、物理学や科学の分野の偉人たちの業績を知ることもできる。実は、オーストリアはさまざまな技術で80ほどの特許を保有する国。音楽以外の革新も目覚ましいものがあるのだ。
面白いのは、スクリーンの前に立つと顔写真がとられ、瞬時にイラスト化してくれる展示。いわば似顔絵マシーン。これも、オーストリアが誇るイノベーション技術が生きている。」
体験のクライマックスを飾るのは、没入型のマルチメディア・インスタレーション「未来の大聖堂」。「未来を作曲」するという、パビリオン全体のテーマが最も表れている空間だ。

ゲストは部屋の中央に設置された作曲体験用のタッチパネルを操作して、作曲体験を行うことができる。四つのパネルがあり、4人それぞれが17のSDGsの目標から気になるものを一つ選んで独自に作曲を進める。パネルをタッチしたりなぞったりするだけなので、楽しんでいるうちに曲が完成しているというわけだ。最終的には、AIが4人の音楽を融合して一つの音楽として奏でてくれる。

オーストリアでは、未来は設計されるものではなく、創造されるもの。巨大スクリーンに流れる圧巻のオーケストラ映像に囲まれての作曲体験を終えた後には、少し晴れやかな気分になっているはずだ。
少し音楽から離れて、オーストリアと日本にゆかりのあるアーティストの話をしたい。上野リチというウィーン生まれのデザイナー。アート愛好家なら、その名を耳にしたこともあるだろう。もともとの名前はリチ・リックス。上野の名は、日本人建築家・上野伊三郎と結婚し、日本に滞在して活動していたときの名前である。
彼女は、ウィーンと京都を行き来しながら、室内装飾や日用品のデザインを行った。とくに評判を呼んだのがテキスタイルのデザインで、パステルカラーで描かれた動植物やキャンディーなど優美で愛らしい作風が特徴だ。夢や喜び、人生の楽しさを表現した世界は目にした人を幸福感で包む。その作風は“カワイイ”と表現されることが多く、今に続く日本のカワイイ文化に貢献したともいわれている。

パビリオンのVIPルームには、彼女の壁紙が貼られている。そして、リチへのオマージュとなるスタンドランタン「TeleSHADOWportation」も一緒に飾られている。制作したのは、オーストリアのレース作家エヴァ・ペトリチである。ロブマイヤー・ウィーン社と共同制作したもので、優美な女性のフォルムがレースで表現されている。
一般には公開されていないがぜひ知ってほしい、オーストリアと日本とのつながりを示すひとつの作品である。

ひと通り館内で上質な音楽を楽しんだ後は、レストランでのひと休みも忘れずに。3階にある「Flavors of Austria(フレーバーズ・オブ・オーストリア)」では、伝統料理やスイーツがいただける。
メニューは、オーストリア風カツレツやアップルシュトゥルーデルが人気。アップルシュトゥルーデルのりんごはオーストリアから取り寄せていると聞くと、ぜひ試してみたくなるだろう。ほどよい酸味とサクサクとしたパイ皮の食感は、一度食べるとクセになる。

カフェには大阪城の城下町を描いたデジタルの屏風絵「豊臣期大坂図屏風」が一面に飾られている。この屏風の本物は、豊臣家が徳川に滅ぼされた際に消滅してしまったといわれているもの。しかし、オーストリアのエッゲンベルク城でオリジナルが発見された。そのため、同城と大阪城は友好を結ぶこととなり、今回、デジタル化したレプリカが贈られることになったという物語がある。
晴れていれば、食事やお茶の後に、楽譜をオブジェにした建物の屋上に出ることも可能だ。下から見上げていた木造のらせんも近くで見ることができるのでおすすめだ。
パビリオンの前庭には、ウェルカムキオスクと呼ばれる小さなショップがあり、万博の思い出を持ち帰ることができる。

せっかくなら、お土産も音楽にちなんだものを。たとえば、オーストリアの著名人物をアヒルにする「AustroDucks」のラバーダックはいかがだろうか。黄金色のモーツァルトのアヒルなど珍しいものが見つかる。

モーツァルトの音楽を聴かせて醸造した「獺祭(だっさい)」も並ぶ。日本酒好きへの贈りものとしても推したい。
photo: Tomoko Hagimoto text: Rica Ogura
・【大阪・関西万博】羨望レストランNo.1のサウジアラビア館
・大阪・関西万博フランス館にてエキシビション。「ショーメ」が描く自然美への賛歌
リンクを
コピーしました