立ち止まって眺めたくなる、銀座メゾンエルメスのウィンドーディスプレー【マリ・クレールデジタル編集長の目】
銀座に行くと、いつも立ち止まる場所がある。銀座メゾンエルメスの店の前。ウィンドーを眺めるためだ。
銀座に行くと、いつも立ち止まる場所がある。銀座メゾンエルメスの店の前。ウィンドーを眺めるためだ。
先日もまた、その美しさに吸い寄せられるように、開店前の店の前に立った。青、赤、緑、黒の4色の細い線のみで描かれた不思議な世界。

タイトルは「Please hold the line(少々お待ちください)」。電話をかけるときによく聞くフレーズだ。この作品を手がけたのは、パリを拠点とするアーティストのディミトリ・リバルチェンコさん。リバルチェンコさんがデザインした「Please hold the line」と題したカレ(エルメスのスカーフ)のデザインがベースとなっている。
なぜ、このタイトルと思いきや、リバルチェンコさんが仕事のためにエルメスに電話をかけた時に、エルメス側が「少々お待ちください」と応答。その間に描くちょっとした絵が着想源になっているのだそう。電話を待っている時に何げなく4色ボールペンで思いつくままに、いろんなものを描いたもので、今回のウィンドーも細部に至るまで四つの色だけを使い、しかもなんと驚いたことに、すべて手描きなのだという。リバルチェンコさんは東京郊外で約2週間、制作に取り組んだそうだ。

よく見ると、絵の中にはエルメスの電話番号も描かれている(私は見つけた)。そしてこの細い線で描かれた不思議の国にエルメスの製品がちりばめられている。


また、正面のみならず、建物を形作っているガラスのキューブの中にも飾られた商品とドローイングが。発見する楽しさにも満ちていて、ちょっと背伸びしながらすべてのキューブの中をチェックするのも楽しい。
エルメスには年間テーマというものがある。2025年のテーマは「ドローイング―描く」。リバルチェンコさんの手がけた作品もそのひとつ。ウィンドーがさらに様々なアーティストとの出会いへと誘(いざな)ってくれる。
エルメスのウィンドーはいつもアーティスティック。誰でも見ることのできるアートだ。パリのフォーブル・サントノーレ24番地にある店のウィンドーは、いつも誰かがのぞき込んでいる。
2017年11月末にパリのグランパレで、フォーブル・サントノーレのエルメス本店のウィンドー・ディスプレーを35年間担当したレイラ・マンシャリの展覧会を見に行ったことがある。驚きの連続だった。エルメス主催で無料。同じ人が35年間も担当し、しかもその作品が展覧会になるとは。


それぞれの作品は実際にウィンドーに飾られていたサイズよりも大きい。見る人を隔てるガラスはなく、その幻想的な世界に「これがウィンドー・ディスプレーか」と衝撃を受けた。加えて、エルメスのアイテムも、ウィンドーのために職人たちが作ったもので売り物ではないという点にも驚かされた。各作品がアートそのものなのだ。
ウィンドー・ディスプレーというと、私たちはつい「売る物を宣伝する場」と思いがちだが、エルメスのウィンドーは、自社の世界観や企業姿勢の表現の場でもある。
ところで、銀座の店の前は人通りが多く、日中、ゆっくり見ることは難しい。お勧めは夜。人通りが少なくなり、暗い中に浮かび上がる光景は、まるでナイトミュージアムのよう。日中とはちがった美しさを見せてくれる。
text: 宮智泉(マリ・クレールデジタル編集長)
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