ファッションと自意識、手仕事とフェミニズムの関係

長い歴史の中で、布や衣服は身体を保護する実用にとどまらず、身分や個性、文化を表現する社会的メッセージを表現し、また、感情や心持ちに少なからぬ影響を与える媒体として複雑かつ多様に進化してきた。現在、開催中の二つの展示は、ファッション、そしてテキスタイルを通して私たちのありようについて考える、またとない機会になっている。

長い歴史の中で、布や衣服は身体を保護する実用にとどまらず、身分や個性、文化を表現する社会的メッセージを表現し、また、感情や心持ちに少なからぬ影響を与える媒体として複雑かつ多様に進化してきた。現在、開催中の二つの展示は、ファッション、そしてテキスタイルを通して私たちのありようについて考える、またとない機会になっている。
[INDEX]


装うことは自己表現やアイデンティティ形成にいかに寄与するか──「LOVEファッション─私を着がえるとき」展は、京都服飾文化研究財団(KCI)が所蔵する衣装コレクションを中心に、現代アートを絡めながら、人の欲望を表現した章立てで構成される。例えば、「自然にかえりたい」では、毛皮や花柄のファッションを通じて自然への憧れを表現。「きれいになりたい」では、コルセットやオートクチュールなどを通じた美への追求を探り、さ らに「ありのままでいたい」「自由になりたい」「我を忘れたい」と五つの章へ展開されていく。



一方、「ゾフィー・トイバー=アルプとジャン・アルプ」展では、20世紀前半を代表する芸術家カップルであるゾフィー・トイバー=アルプとジャン・アルプの創作を紹介。ダダイスムに共鳴したゾフィーは、伝統的な芸術表現にとらわれない実験的な幾何学の抽象作品を生み出していくが、同時代にバウハウスで活躍したアンニ・レッパラ同様、そのスタートは布や刺繍を用いたテキスタイル・デザインだった。


そうした背景には、織物や刺繍、裁縫は従順さや忍耐、純粋さを象徴する女の仕事とされてきた長い歴史があり、逆に1970年代以降のフェミニズム・アートの中では抵抗の手段となる。そ の後も、ルイーズ・ブルジョワや塩田千春らの布や糸を用いて個人の記憶や感情を表現する作品に脈々と息づいているが、これら二つの展覧会は、今日の布や衣服にまつわる女性たちの思いや、女性アーティストの活動を考察する上で豊かな視点を与えてくれる。


・時代がようやく追いついた、ヒルマ・アフ・クリントの軌跡
・いまエジプトがアツい! エジプトの至宝が日本に集結、2025年開催の3大展覧会
「LOVEファッション─私を着がえるとき」
会場:東京オペラシティ アートギャラリー
住所:東京都新宿区西新宿3-20-2
会期:6月22日(日)まで
休館日:月曜日(4月28日〈月〉、5月5日〈月・祝〉は開館)、5月7日(水)
開館時間:11:00~19:00
料金:一般/1,600円 学生/1,000円
問い合わせ:050-5541-8600
https://www.operacity.jp/ag/
「ゾフィー・トイバー=アルプとジャン・アルプ」
会場:アーティゾン美術館6階展示室
住所:東京都中央区京橋1-7-2
会期:6月1日(日)まで
休館日:月曜日(5月5日〈月・祝〉は開館)、5月7日(水)
開館時間:10:00~18:00(毎週金曜日は20:00まで)
料金:一般/ウェブ予約チケット 1,800円、窓口販売チケット 2,000円 学生/無料(要ウェブ予約)
問い合わせ:050-5541-8600
https://www.artizon.museum/
【雑誌『marie claire』のPDFマガジンダウンロードページ】
©︎marie claire/text: Mutsuko Ota
リンクを
コピーしました