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原田マハさんが案内するアートを巡る旅

大原美術館

倉敷の風情ある街並みを眺めて、約100年の歴史ある美術館へ

原田さんの代表作『楽園のカンヴァス』の舞台となったのが、岡山県倉敷市にある大原美術館。1930年に開館した歴史ある美術館だ。

「私が子どもの頃から通い続ける美術館です。100年近い歴史があり、系統立てて絶え間なく集めてこられた素晴らしいコレクションがあります。エル・グレコの《受胎告知》も観られますし、私は10歳の時、ここでパブロ・ピカソの《鳥籠》を観て大きな衝撃を受けました。最新刊の『板上に咲く』では棟方志功について書いていますが、彼の作品に出会ったのもこの美術館なのです」

大原美術館 エル・グレコ《受胎告知》
エル・グレコ《受胎告知》
公益財団法人大原芸術財団大原美術館蔵

現在『小説新潮』で連載中の「晴れの日の木馬たち」にも、創設者の大原孫三郎が登場する。

「紡績会社を営む大原孫三郎は、利益を市民に還元することを考え、私財を投じて美術館を設立しました。洋画家の児島虎次郎に依頼し、彼が渡航したパリなどで当時は現代アートだったマティスやモネなどを購入したのです。日本初の西洋美術中心の私立美術館ですね」

所蔵作品は多岐にわたり、日本美術や東洋の古美術、古代オリエントとイスラム、ヨーロッパの古美術、民藝、そして現代アートに至るまで取り揃えている。

大原美術館 本館
本館(画像提供:公益財団法人大原芸術財団大原美術館)

「美術史的に価値のある研究を続けながら、今を生きるアーティストにも力を入れている。現代の作家を倉敷に呼んで制作してもらうなど、血の通ったアートのつながりを大事にされています。作品をただ展示するだけではなく、地域や訪れる人々と接する開かれた場所です。海外に誇れる美術館で、日本に大原美術館があってよかったなと思いますね」

大原美術館が位置するのは、白壁の蔵屋敷が立ち並ぶ倉敷美観地区。江戸時代に物資を運んだ水路を川舟で行き、風情ある街並みを眺められる。


大原美術館
住所:岡山県倉敷市中央1-1-15
開館時間:〈3月~11月〉9:00~17:00(入館は16:30まで)、〈12月~2月〉9:00~15:00(入館は14:30まで)
休み:毎週月曜日・冬期休館あり。休館日が祝日、振替休日と重なった場合は開館
問い合わせ:086-422-0005
入館料:一般2,000円

ベネッセアートサイト直島

アートアイランドで美術館に宿泊する

原田さんが倉敷とあわせてよく訪れるのが、「ベネッセアートサイト直島」だ。直島・豊島(ともに香川県)・犬島(岡山県)を舞台に、数多くの美術館、建築、アートスポットが展開されている。

「訪れたい場所がたくさんあって、『今度来た時にはあそこへ行こう』と余白を残して帰るのが私は好きですね。ゆっくり滞在していろいろなところを巡ると、頭と心がよく動いて、モヤモヤしていた気持ちから解放されます」

この場所をつくりあげたのは、ベネッセホールディングスの福武總一郎さん。30年以上にわたり、指揮をとっている。

「福武さんがアートアイランドをつくるという大きな情熱のもと、いろいろな人を巻き込んで実現されました。島の人と一緒に育てていくという形で始められて、結果として多くの人が島を訪れるようになった。アートツーリズムの世界的なロールモデルなのです」

とくにおすすめだと語るのは、美術館とホテルが一体化した「ベネッセハウス」だ。

「非常に素晴らしい現代アートのコレクションが揃っていて、『この作品がここにあるの?』と驚くほどです。そして作品が安藤忠雄さんの建築と調和している。美術館に泊まれるなんて、そんな幸せなことはないですよね。初めて宿泊した時、夢が叶ったようで嬉しかったのを覚えています」

ベネッセアートサイト直島 地中美術館
地中美術館 写真:松岡満男

同じく安藤忠雄建築である地中美術館も見逃せない。瀬戸内の景観を損なわないように、建物の大半が地下につくられている。地下でありながら自然光が降り注ぐ設計で、時間の経過や四季により作品や空間の表情が移り変わるため、行くたびに新たな発見があるのだ。クロード・モネ室は作品と空間が一体となるように設えられ、「睡蓮」シリーズを自然光で観ることができる。

「クロード・モネ室はまるでメディテーション空間で、精神が研ぎ澄まされるようです。直島には他にも古民家を改築した『ANDO MUSEUM』など、安藤忠雄建築が多くあります。建築とアートの融合を観ることができる島です」


ベネッセアートサイト直島
住所:直島・豊島(ともに香川県)・犬島(岡山県)に各施設が点在
開館時間・休み・問い合わせ・料金:各施設による
ホームページ:https://benesse-artsite.jp/

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