『たぶん私たち一生最強』作家・小林早代子が考え抜いた新たな女の選択肢
2024.8.13
2024.8.13
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──「恋愛と結婚と出産とは地続きのものではなく、それぞれが離れ小島のように遠くかけ離れている」など、登場人物たちの言葉が胸に響きます。夢を抱かない結婚観を書いた意図は?
女性と男性で最も違う点は、出産機能がそなわっているか否かですよね。子供が欲しいかどうかわからないにしても、出産適齢期とされている年齢はあります。出産の可能性を残したいと思ったら、出産したい年齢から逆算して結婚して、結婚するにはもう出会っていないと……そんな「したくない逆算」をするのが、本当に嫌だったんです。
振り返ってみると20代後半はかなりプレッシャーを感じていました。友人たちが結婚や出産をしていく中で、私自身は絶対に結婚して子供が欲しいと思う確証もないのに、機会を逃さないようにしよう、今焦らなくてはならない年齢なのではないか、と。
行きたいわけでもないのに収穫のあまりない合コンに行ったり、気がつけばLINE友達によく知らない名前がたくさん並んでいたり。もう、虚無の夜がたくさんありましたね。当時は訳も分からず生きていたんですが、今思うと辛かった。
そういう目に見えないプレッシャーから、少しでも自由な気持ちになれたらいい、そう思って書いた小説でもあります。

──「結婚」は単なる社会の枠組みとして一歩引いた目で見ている一方、「出産」に関してはみんな漠然と肯定していましたね。
2年間女友達と一緒に住んでみて、ものすごい快適で金銭的にも問題なくて「これ、一生やってもいいな」と本気で思ったんです。唯一の問題として、女同士では子供を作れないから、もし子供が欲しいと思ったらどこかで男に頼らざるを得ないわけで。それが、少し不自由だなと思って。
生殖の問題さえクリアすれば、女友達とずっと家族として一緒に暮らせるんじゃないかな、と。そこで、考えて取り得るあらゆる手段を調べて、登場人物たちがそれぞれ選んでいく形で書き進めました。
──日本では「ないもの」とされがちな女性の性欲について、真正面から書かれていたのも印象的でした。
女友達との暮らしでは、同性愛者でない限り、性愛や生殖はお互いでは絶対に解消し合えないもの。では、どう外注するかと考えた時に、私の中で「自然とこうなるかな」と思ったことを素直に書いたんです。
昔、渋谷に女性限定のアダルトショップのお店があって、女友達とそのお店に行ったことがあるんです。お店に入ると店員のお姉さんが声をかけてくれて、セルフプレジャーアイテムの使い方を一つひとつ丁寧に解説してくれたのですが、その時「ああ、もう機械に頼っていいんだ」と感銘を受けました。
そのお姉さんは、「プライベートでもいろんな種類を使い分けていて、アイテムを使うことで日常の満足度を上げている」とカジュアルに話してくれたのですが、「とても健康的だし、そうあるべきだな」と思ったんです。今後はもっと文明化して、世の中を変えていくだろうなと思ったので、作中にも書き残しました。
『たぶん私たち一生最強』(新潮社)1,760円
一篇全文公開されている特設サイト(https://www.shinchosha.co.jp/book/351762/)がオープン。
小林 早夜子(こばやし さよこ)
1992年、埼玉県生まれ。早稲田大学文化構想学部卒業。2015年『くたばれ地下アイドル』で第14回女による女のためのR-18文学賞読者賞受賞。現在はアメリカ在住。
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