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現代のお城。贅 (ぜい)を尽くした「エスパシオ ナゴヤキャッスル」にミシュラン三つ星「カンテサンス」 初の監修店「ブリアンス」が誕生

近年ますます加速するラグジュアリーホテル開業ラッシュ。そのなかでも“美食のホテル”として注目を集めているのが2025年秋に開業した「エスパシオ ナゴヤキャッスル」だ。8つのレストランのなかでも、話題となっているのが19年間ミシュラン三つ星を獲得し続けている「カンテサンス」岸田周三シェフが手がけた「ブリアンス」。さっそく訪れ、岸田周三シェフ、そして髙瀬奨太シェフに話を聞いてきた。

名古屋に登場した豪華絢爛 (けんらん)な美食ホテル

この数年、ラグジュアリーホテルのオープンラッシュが続いている。

ホテルラバーたちが“もう行った?”と口々に語る場所は次々に移り変わり、訪れてみたい場所は尽きない。そんななか、2025年秋にオープンし“規格外の豪華さ”で注目されたジャパンブランドのホテルが、「エスパシオ ナゴヤキャッスル」だ。

2025年10月1日に開業した「エスパシオ ナゴヤキャッスル」

名古屋城の堀を挟んで天守閣と向き合う立地に立つホテルは、同じような石垣の上に建ち、まさに“キャッスル”という名にふさわしいたたずまい。このホテル、まるで“現代の城”といいたくなるのは外観だけではない。大切な客人をもてなすための仕掛けはありとあらゆるところにあるのだ。

例えば、スイート宿泊者は名古屋駅まで送迎してくれるのだが、送迎車はマイバッハ。

ホテルに到着して入り口を入れば、尾張の地から天下人となった織田信長、豊臣秀吉、徳川家康の甲冑 (かっちゅう)が鎮座。その先には狩野派の絵師の襖(ふすま)絵を彷彿 (ほうふつ)とさせる金箔壁画に圧倒される。

1階、宴会場に続く階段の壁に描かれたアートは現代キモノ作家の斉藤上太郎氏の作品。館内にはさまざまなアートが飾られ、宿泊者はアートツアーに参加しても面白い

宿泊ゲストしか開くことのできない扉の向こうはまばゆいばかりの黄金の世界。ロビー階の4階に到着し、エレベーターの扉が開くと、正面には黄金に輝く見事な松のオブジェが置かれ、その奥に池泉庭園と名古屋城が一幅の絵のように広がる。

まるで絵画のような名古屋城の借景

客室はわずか100室。名古屋城を望むバルコニー付きの部屋では、ベッドの上からでも浴室からでも天守閣を間近に感じられる。地下2階には天然温泉を備えたスパ施設があり、モロッコランプの影が揺れる幻想的な空間では、エキゾチックな美しさと和の静寂が溶け合う。

名古屋城ビューの客室からは天守閣が見える

けれど、壮麗な空間だけがエスパシオ ナゴヤキャッスルの真価ではない。このホテルの特筆すべき魅力がダイニングだ。

4階のレストランフロアには、8つの飲食店が入る。

ミシュラン三つ星 を誇る京都「祇園 さゝ木」プロデュースの日本料理「日本料理 丈」、朝食が人気の「銀座 稲葉」が手掛ける「尾張 粋 稲葉」、鉄板料理の名門「うかい亭」の新業態「昇龍 by うかい亭」、地元名古屋の予約困難な鮨 (すし)の名店「鮨旬美 西川」。いずれも日本全国からえりすぐった人気店。ここでの食事のために宿泊する、そんなゲストもこれから増えるのではと予感させるラインナップだ。

カンテサンス初の新店が、名古屋に生まれた理由

思わず通り過ぎてしまいそうな、さりげない「ブリアンス」の入り口

そのレストラン群のなかで、ひときわ注目を集めているのが、フランス料理「Brillance(ブリアンス)」だ。こちらは、ミシュランガイド東京で19年連続三つ星を獲得し続ける「カンテサンス」のオーナーシェフ・岸田周三氏が、“初めて”手掛けた新店として話題沸騰中。

「カンテサンス」のオーナーシェフ、岸田周三氏

それもそのはず、これまで数えきれないほどの監修オファーを、岸田氏はすべて断ってきた。「自分の名前を出す以上、本店との乖離 (かいり)があってはならない。やるからには完璧に準備したい」そう常々思っていた岸田氏。彼の高い要望を受け入れられる企業が今までなかったからだ。

「ブリアンス」開業は、ホテルの並々ならぬ覚悟と、奇跡のようなタイミングがあったからこそ実現したのだ。

まず、今回の話があったときに、岸田氏は、“開業時スタッフ全員の教育と準備期間をきちんととること”をリクエストした。多くの企業がそこまで時間とコストをかけられないと断念するなか、エスパシオ ナゴヤキャッスルの答えは違った。「私たちも完璧な店をつくりたい」と、快諾。開業準備期間中に関わる料理人そしてサービススタッフを全員「カンテサンス」に送り、1年間しっかり“岸田イズム”をたたき込んだ。

「ブリアンス」シェフの髙瀬奨太氏

もうひとつの決め手が、「ブリアンス」シェフの髙瀬奨太氏の存在だ。「髙瀬さんがいなかったら、この契約はありません」と岸田氏は断言する。

髙瀬氏はカンテサンスで4年間研鑽 (けんさん)を積み、渡仏してパリのミシュラン二つ星「ブラン」でも修業を重ねた30歳。岸田氏が自身の店で20年かけて培った、高品質の料理でゲストを楽しませる“仕組み”を託せる人物がいたことが大きかった。

本店の哲学を受け継ぎ、進化を目指す

「ブリアンス」で髙瀬氏がなにより大切にしているのは、カンテサンスで叩き込まれた「プロデュイ(素材)」「キュイソン(火入れ)」「アセゾン(味付け)」 という3つのエッセンス。

この3つをきちんと考えれば、皿は自然に美しく輝くということは、髙瀬氏がカンテサンスで学んだ核心であり、ブリアンスでも揺るぎない軸となっている。

全部で24席。6名入る個室もある

現在のメニューは、カンテサンスで磨き上げてきた料理10皿からなるコース1本のみ。なかには、ドラマ『グランメゾン東京』でおなじみの料理も登場する。「お客さまに喜んでもらうことを一番に考えて、これがベストだと思っています」と、岸田氏は語る。

ドラマにも登場した「フォアグラと焼き茄子 カカオとチュイル」。フォアグラのテリーヌと、アップルビネガーに漬けたナスを交互に重ね、カカオのチュイルで挟んだ一品。全体を合わせて食べた時の味とテクスチャー、香りのバランスが素晴らしい。筆者もお気に入りの一品

「カンテサンス」に通っている人ならば、 “オールスターメニュー”のような内容にウキウキするだろうし、初めて体験する人には、スペシャリテ「山羊のミルクのバヴァロワ」をはじめ、名刺がわりの料理の数々に心躍るだろう。

カンテサンスのスペシャリテ「山羊 (やぎ)のミルクのバヴァロワ」。フレッシュな山羊のミルクに、ゲランド産の塩、数種のオリーブオイル、ゆり根、マカデミアナッツ。オリーブオイルが主役の料理

岸田氏の味をしっかりと受け継ぐ髙瀬氏の料理は、一皿ごとの味わいのコントラストも温度も緻密に考え抜かれ、提供される。唯一本店と違うのは、魚のメインディッシュがないこと。その代わり、アツアツの「オマールエビと帆立のタンバル」が必ずコースに組み込まれる。オーブンから出たばかりの皿がテーブルに運ばれてきたときに漂う香ばしい香りに、思わず歓声があがる料理だ。

「オマールエビと帆立のタンバル」。オマールエビをタンバルにすることによって、周りはアツアツに焼き上げ香りをたたせても、中のオマールは温かくちょうど良い火の通りに

岸田氏は名古屋という土地でやるからには、徐々に地元の生産者のものも取り入れていきたいと話す。しかし、地産のものがあったとしても、目指す料理にフィットしなければ使わない。

例えばメインの「バヴェットのロースト 赤ワインと黒胡椒のソース」には、そんな岸田氏の信念が垣間見える。岸田氏はこの料理に松阪牛も地元の肉も試した末、あえて別の交雑牛を選んだ。というのも、これは低温調理が主流となり「肉本来の香ばしいおいしさが失われつつある」ことへのアンチテーゼから生まれた料理。この料理に脂がのった柔らかい松阪牛では持ち味が出ないのだ。

「バヴェットのロースト 赤ワインと黒胡椒のソース」。マリネした肉をフライパンでガリっと焼く赤ワイン、カシス、黒胡椒 (こしょう)、アルマニャックを効かせたスパイシーなソースで

だからこそ、ガッシリとしたかみごたえのある交雑牛のハラミを赤ワインやスパイス、バルサミコに1週間以上漬け込み、高温でガリッと焼き上げる。本場フランスにもない、岸田氏ならではの料理だろう。

デセールは、カンテサンスで4年間腕を振るったシェフパティシエの松本健史氏が担う。コースの最後を飾る、あの「メレンゲのアイスクリーム」ももちろん登場。焼きたてのメレンゲを砕いて仕上げるなめらかなアイスクリームは、カンテサンスでも顧客からの要望が絶えない名物だ。

「カンテサンス」名物、メレンゲのアイスクリーム

ブリアンスは、まだ輝き始めたばかり

店名「ブリアンス」(フランス語で「輝き」)という名前は岸田氏が考案した。この店は修業先の「アストランス」、自身の「カンテサンス」に続く系譜なのだ。

ここには、「『ブリアンス』は『カンテサンス』のコピー店ではない」という岸田氏の思いも込められている。髙瀬氏も「お客様に喜んでもらえるように、ブリアンスチームで“カンテサンスよりうまいものを出そうぜ”と盛り上がっていますよ」と胸を張る。

白で統一されたシンプルな内装。本店とは違い、心地よいBGMが流れている。店内は料理ほか写真撮影も可能

19年ミシュラン三つ星を獲得し続けている品川の「カンテサンス」は予約も取りにくく、中部・関西圏から足を運ぶのは躊躇 (ちゅうちょ)していた人も多いはず。「ブリアンス」なら、まだ予約も取りやすいのでこのハードルはぐっと下がるのも嬉しいところだろう。

「少しずつ時間を重ねていくなかで、髙瀬シェフが見つけた表現も自然とコースに加わっていく」と岸田氏。「カンテサンス」という揺るぎない1本の木から、やがて名古屋のテロワールから生まれる新たな一枝が伸び、「ブリアンス」という花が開いていく──そんな進化も楽しみになる一軒だ。

text: Misa Yamaji

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Brillanceブリアンス
愛知県名古屋市西区樋の口町3-19 エスパシオ ナゴヤキャッスル 4F 
営業時間:ディナー2部制 1部 17:00〜20:00/2部 20:30〜23:30
定休日:不定休
コース料理:30,800円(税込)※飲物、サービス料別途
TEL:052-908-8738(営業日 13:30〜15:00)
https://www.espacionagoya.com/restaurant-bar/brillance/


エスパシオ ナゴヤキャッスル
https://www.espacionagoya.com/

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