新生ロエベに期待【マリ・クレールデジタル編集長のパリコレ日記】
2026年春夏のパリ・ファッションウィーク(パリコレ)が9月29日から10月7日まで開催されました。期間中、パリ市内各所でショーやプレゼンテーション、またイベントなども数多く行われました。ファッションだけでなく、街で見かけた面白いモノやコトをつれづれなるままにつづります。
2026年春夏のパリ・ファッションウィーク(パリコレ)が9月29日から10月7日まで開催されました。期間中、パリ市内各所でショーやプレゼンテーション、またイベントなども数多く行われました。ファッションだけでなく、街で見かけた面白いモノやコトをつれづれなるままにつづります。
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ファッションウィークの期間中、各国のマリ・クレールの編集長や担当者が一堂に集うのが、ティー・パーティー。忙しいスケジュールの合間を縫って時間が設定されます。会場はオペラ座近くにある有名な「カフェ・ド・ラ・ペ」で、今回は9時スタートの朝食会となりました。メニューをみると、デトックスジュースや各種パン、ゆで卵、フルーツサラダ、スモークサーモンなど、豪華です。
ここではみんなで朝食を食べながら、それぞれの国の状況などについて話をしたり、質問したり。ギリシャや台湾、イタリアなど、ここでなければなかなか会えない編集者たちとの出会いは楽しいものです。今回は韓国の編集長と編集者たちともあいさつを交わしました。K-POPを含め、豊富なコンテンツがある韓国版は飛ぶ鳥を落とす勢い。
もっとみんなと話をしたかったけれど、ファッションショーに行かねばならず、途中で退出。おいしそうな朝食も、食べたのはフルーツサラダとスモークサーモンだけ。ちょっと残念。
ショーは、凱旋(がいせん)門の近くにある本社内で行われました。テーマは「カリフォルニア」。アントニオ・ロペスとスリム・アーロンズが捉えた写真の数々がインスピレーション源となっていると、コレクションノートに記されていました。



カリフォルニアの土地特有の光と気候、そしてハリウッドのグラマラスな雰囲気を発想の源にした服の数々は、強い太陽の光を浴びたような鮮やかさが印象的です。
レオナールの「顔」であるプリントは、美しいドレープのドレスなどに生かされて、ロマンチックさとグラマラスさが表現されていました。ヤシの木やポピーのプリントも色鮮やかで、華麗なるカリフォルニアをしています。
ジョナサン・アンダーソンがディオールに移り、新たなクリエイティブディレクターに就任した元「プロエンザ・スクーラー」のジャック・マッコローとラザロ・ヘルナンデスのふたりのデビューとなりました。

会場の入り口のロゴの色が鮮やかになり、新たなスタートを感じさせます。
コレクションノートの書き出しには、「ロエベに参加することは、飽くなきクラフトへの忠誠とスペインというアイデンティティから成り立つ180年の歴史のコードを受け継ぐことを意味します。我々の仕事は、このスピリットを前進させ、自分たちならではの視点で解釈することです。クラフトは今、どのように再定義できるだろうか? 人の手による表現を、手仕事の痕跡すら消えてしまうほどに押し進められるだろうか? 歴史の重みから解き放たれつつも、歴史に敬意を示した、2025年的なスペインらしさとは何なのか?」とありました。



ショーでは原色のような明るさが特徴的です。ドレスのほか、ポロシャツやアノラック、パーカなど、アメリカのスポーツウエアの要素が盛り込まれています。モデルが速足で通り過ぎていくので、ロエベのクラフト的な要素を探すのにはちょっと一苦労。
後日行われたre-seeでは、ショーを見ているだけではわからないすごさを発見しました。「魂は細部に宿る」といいますが、まさしくそう。「革でこんな表現ができるんだ」という驚きも。デザイナーが代われば、表現方法も変わります。が、ジャック・マッコローとラザロ・ヘルナンデスがメゾンのどんな可能性を引き出すのか、楽しみです。
会場はポンピドゥー・センター。今回は「衣服は意識を持つのだろうか」という問いから服作りが始まったのだそう。



© ISSEY MIYAKE INC.
衣服がもし意識を持って生き物のように仕立てられた服の形をやぶっていくとしたらということで出てきたTシャツやポロシャツは生き物の脱皮の途中のようにも見えます。
また、表裏のどちらも着ることができる服は、単なるリバーシブルということではない、新たな着こなしを提案。私たちが抱いている服への既成概念を取り払い、新しい服のありかたを模索するというものでした。
今回、最も驚いたのはモデルたちがハイヒールをはいていたことでした。イッセイミヤケといえば、社会の中で女性たちに向けられた「女らしさ」という呪縛から解き放たれるような自由さがあり、靴もその一部として高いヒールは見たことがありませんでした。私の記憶の中ではこれまで私が見たショーではハイヒールを見た記憶がなかったゆえ、「あれっ」と思ったのでした。

ロジェ・ヴィヴィエの新しい本社での展示会。今回はメゾンのアイコン「ベル ヴィヴィエ」の誕生60周年にふさわしい華やかな展示会でした。「ベル ヴィヴィエ」といえば、ムッシュ・ヴィヴィエが1965年にデザインし、67年のフランス映画「昼顔」で、主演のカトリーヌ・ドヌーヴがはいたことで有名になった靴。それが、クリエイティブディレクターのゲラルド・フェローニによって再解釈された最新作が展示されていました。



また、これらの靴を技術的に支える職人さんたちの仕事の様子も見ることができました。



今回は新しいものだけでなく、ロジェ・ヴィヴィエの歴史を彩ってきた靴の数々も展示されていました。それらを見ると、ロジェ・ヴィヴィエというブランドがいかに独創的であったかもわかる貴重な機会でした。
今回も会場はパリ市庁舎。座席には1枚のカードが置いてありました。

「ヨウジヤマモトは、画面ではなく自らの目でプレゼンテーションを体験し、今この瞬間に集中するよう勧めます。その瞬間、動き、そして衣服があなたに語りかけるままに——それらは単にデジタル記録されるためではなく、五感で感じ取るために存在しているのです」と英語で書いてありました。じっくりと新作を見るよりも、スマホで写真や動画を撮ることばかりに集中することへの皮肉でしょうか。


今回のテーマは「日本、クチュールへの旅路」。さっと見た時にはシンプルに見えるデザインも、その過程では実に複雑な作りや作業を行っています。薄い布が体をやさしく包むように覆ったり、布を結んで形作ったりする服。布の端をほどいて作っていった細いフリンジなど、繊細さと大胆さが同居しています。ふと、過去に山本耀司さんが語った「布は生き物のようなもので、布を手にした時の重さや軽さ、垂れる感じや落ち感で考える。布がどうなりたがっているかを自ら教えてくれる」という言葉が浮かんできました。



作品の中に英語の手紙のようなものがプリントされた服がありました。9月4日に91歳で亡くなったイタリアのファッションデザイナー、ジョルジオ・アルマーニ氏への追悼の意味が込められていました。この手紙はアルマーニ氏の50周年記念のショーへの招待状。背中にはアルマーニ氏の作品。


最後の服は黒のジャケットに、バッスルスタイルのような真っ赤なスカート。ニック・ナイトが撮影した写真を思い出しました。
山本さんの服作りは、西洋のモードへの挑戦でもありました。そのモードの頂点に位置するオートクチュール。今回のショーを見ていると、挑戦ではなく、融合のように見えました。
ショーの間、スタジオジブリの作品「おもひでぽろぽろ」や「天空の城ラピュタ」のほか、秋山雅史の「千の風にのって」などの曲をカバーした山本さんの歌声が流れる中、多くの人たちはいつのまにかスマホを置いてランウェイを見つめていました。私も、です。
text: 宮智 泉(マリ・クレールデジタル編集長)
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