©Koji Hirano
2026年春夏のパリ・ファッションウィーク(パリコレ)が9月29日から10月7日まで開催されました。期間中、パリ市内各所でショーやプレゼンテーション、またファッション関連のイベントも数多く行われました。ファッションだけでなく、街で見かけた面白いモノやコトをつれづれなるままにつづります。



今シーズンのテーマは「reflection」。デザイナー黒河内真衣子さんが原風景に立ち返り、おぼろげな記憶の情景を再訪するというもの。氷や窓ガラスの景色などのノスタルジックな要素が、透明感や輝きを感じさせる服に落とし込まれています。きらきらとした華やかさとは異なりますが、どこか優しさに包まれるようなあたたかさが感じられる。パステル調のピンクやパープルも優しさを表現する要素になっていました。

マメ・クロゴウチのショー会場には毎回、黒河内さんの創作の源となったものが並べられ、見るのが楽しみです。今回も創作のためのメモ、ガラスの花瓶や器などが展示されていました。
静かで、しかも凜としている。そんなスタイルが伝わってくるコレクションでした。


恒例となったマリ・クレールインターナショナルのメンバーたちとのランチミーティング。最初に現状報告をして、あとは「マリ・クレールでこんなイベントをやると面白いかも」という話から、韓国の美容医療の話や日本のアニメにまで話が広がりました。
最近読んで面白かった本の話になり、イギリス人のニシアが挙げたのが「BUTTER」。そう、柚木麻子さんの小説「BUTTER」が英訳されたものです。この作品は、英国推理作家協会賞(ダガー賞)翻訳小説部門の最終候補作にもなりました。イギリスなどでとても人気だということは知っていましたが、面白かったという人が身近にいると、「ほんとに売れてるんだなあ」と実感。ちょっとうれしくなりました。
彼女たちとの会話からは、世界の動きが見えてきます。でも楽しい時はあっという間に過ぎ、次のショー会場へ。
ちなみに今回のレストランは、次のショー会場に近い「BEAUVAU SAINT HONORE」。私は鮭のグリルをいただきました。下に敷いてあるのはラトトゥイユ。食後はノワゼット。エスプレッソにミルクをちょこっと入れたものです。



会場はメゾンの色であるブルー。アーティスティックディレクターのピーター・コッピングによるランバンは、創始者であるジャンヌ・ランバンの残したレガシーに現代的な解釈を加え、モダンな世界観を表現しました。
ランバンの象徴でもあるブルーは、今回のショーでは1色ではなく、多彩なブルー。またジェンダーレスともいえる服作りが特徴で、ジャンヌ・ランバンがよく使ったリボンは女性だけでなく、男性の服にも使われています。印象的だったのが後ろ姿。かつてジャンヌ・ランバンのデザインしたドレスは後ろ姿が特徴的なデザインがありますが、ピーター・コッピングはそれを洗練させた感じがしました。



GoRunway
招待状には海の波の写真が貼ってありました。今コレクションのテーマは「WAVE LENGTH(波長)」。浜辺で⼣⽇を眺め、波間のサーファーたちを⾒て、ウェットスーツのシルエットの優雅さに⼼打たれたのだと、デザイナーのジュリアン・クロスナーはコメントしています。
白で始まった服は、やがて過剰と思えるほどの装飾や、大胆な円のプリントへと変化していきます。色や柄を重ねていき、しかもその組み合わせとバランスにはドリス・ヴァン・ノッテン的な絶妙がありました。波間のサーファーというテーマを、色や柄のあふれる「ドリス・ヴァン・ノッテン」の世界に昇華させていました。秋冬、春夏と2シーズンをこなしたジュリアン・クロスナーが、自身の「ドリス・ヴァン・ノッテン」をどう進化させていくか、楽しみです。



©Koji Hirano
注目の企業、ヘラルボニーとのコラボレーションを行いました。ヘラルボニーは「異彩を、放て。」をミッションに掲げ、国内外の主に知的障害のある作家の描く2,000点以上のアートデータのライセンスを管理し、さまざまなビジネスへ展開している盛岡発の日本企業です。
コレクションのテーマは「♡」。♡は鼓動であり、心であり、生命の中心。アンリアレイジのデザイナー、森永邦彦さんは18人の作家の作品をテキスタイルで取り込み、服に仕上げました。ドレスは心臓の鼓動のように膨らみ、ジャケットのへりやスカートの裾は波打っていました。18人のクリエイティブな作品とデザイナーのクリエイティビティーとが共鳴して、新たな魅力が引き出されていました。アンリアレイジの服は最新の技術などとの融合が特徴でありますが、今回はシンプルに「きれい」と思っただけでなく、どこかあたたかさや優しさが感じられたのも魅力。
一番端の席に座っていたヘラルボニーの創業者松田文登さんと祟弥さん兄弟、そしてアーティストのふたりもうれしそうでした。その姿を見て、私たちもうれしくなりました。



会場はポンピドゥセンター。会場で流れていたのが、ビートルズの有名な曲「COME TOGETHER」。ご存じ、ビートルズのポール・マッカートニーは、ステラ・マッカートニーの父親です。
ショーが始まると、暗い中でランウェイに女性が登場し、朗読が始まりました。どこかで聞いたことがある詩だと思ったら、「COME TOGETHER」。しかも声の主は英国の有名な女優のヘレン・ミレン。今回のメッセージが「COME TOGETHER」でした。人類、動物、地球のためのマニフェストです。
大きな肩のテーラードジャケットもあれば、フェザーをふんだんに使ったドレスも。時には男性的に、そして時には女性的に。こうした二面性が表現されていました。ドレスなどに使われたこのフェザーはビーガン由来の材料を使用している世界初のものだそうです。コレクションに登場した服の98%は環境に配慮した材料で作られているのだとか。
text: 宮智 泉(マリ・クレールデジタル編集長)
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