CINOHの人気の理由を尋ねて デザイナー茅野誉之×スタイリスト大沼こずえ対談
シンプルながら、どこか個性を感じる洋服をさらりと着こなしている大沼こずえさん。とくにシルエットの美しいパンツを颯爽(さっそう)とはいている印象がある。ご愛用のブランドを訪ねたところ、あがってきたのは「CINOH(チノ)」。デザイナー茅野誉之さんとは、コラボレーションしたパンツも作ったことがあるという。お二人に、ブランドの魅力から洋服の役割までを語っていただいた。
シンプルながら、どこか個性を感じる洋服をさらりと着こなしている大沼こずえさん。とくにシルエットの美しいパンツを颯爽(さっそう)とはいている印象がある。ご愛用のブランドを訪ねたところ、あがってきたのは「CINOH(チノ)」。デザイナー茅野誉之さんとは、コラボレーションしたパンツも作ったことがあるという。お二人に、ブランドの魅力から洋服の役割までを語っていただいた。
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大沼こずえさん(以下、大沼):CINOHは、モード感とリアルがほどよく融合しているところが魅力だと思います。その絶妙なバランス感覚は、どうやって生まれているのかが気になっていました。改めて、ブランドのコンセプトを教えていただけますか。
茅野誉之さん(以下、茅野):“記憶に残る服”という点を大切にした服作りをしています。着る人が自分のワードローブを育てていく中で、シーズンごとに取捨選択があると思う。それでも、CINOHの服は、人生の大切な瞬間を一緒に過ごした一着として心に刻まれるものであってほしい。もっといえばCINOHの服が楽しい記憶を呼び覚ますような存在になってほしい。少しでも人生の中でプラスに作用できればと考えています。
大沼:着る人に“思い出”や“記憶”という余白を与えてくれるから、身に着けていて心地良いのですね。それに、シルエットがシンプルで、ちょっと細身だったりするので、気がついたら何年も着ている。それに、新しいアイテムと組み合わせても全然大丈夫。色々な記憶が重なっていっても色褪(いろあ)せることがなく、自然とワードローブの定番になっているんです。

茅野:実は、長く愛用してもらうことはあまり意識していないので、パーソナルに寄り添った結果、定番になっているという流れはうれしい。最近特に、ミニマルな方向性を目指しながらも、あくまでプロダクトにはしたくないという気持ちが強いので。記号ではなく、デザインとして、着る人に寄り添いたい。デザインは、人をエンパワーメントする力があると思うからです。
大沼:私がCINOHにひかれる理由は、メンズっぽいシルエットにもあります。
茅野:クリエイティブな思考があり、精神的にも経済的にも自立した、格好いい人に着てもらいたいという思いがあるので、マニッシュなテイストが多いかもしれませんね。ジャケットのボタンも、左前のメンズ仕様のものが結構あります。性別によるボタンの位置の違いは諸説ありますが、男性は自分で着ていたから左前、女性は着せてもらっていたから右前という説があるんです。今は女性も自分で着るので左前でもいいのではという考えでそうしています。

大沼:それなのに女性らしさがある。また、フェミニンな要素があっても甘くなりすぎないので、抵抗なく着られるのもCINOHならではのバランス感覚ではないでしょうか。
茅野:ディテールをいかにミニマルな表現方法で華やかに見せるかというのが最近のテーマ。洋服の制作工程に工夫を加えるもので、どれだけ装飾性を生み出せるかということにトライしています。その加減で華やかな女性らしさを表現できるように意識しています。今は、ジェンダーレスが好まれる世の中ですが、メンズとウィメンズの違いはしっかり出したいと思っていて、レディスウェアの役割を強くする意味もありますね。私情ですが、男性は控えめというか適当で、女性には美しくいてほしいというわがままが反映されているのかもしれません。
大沼:たぶん、そのディテールが“一枚で着ても映える”洋服につながっているんだと思います。自分でコーディネートする自信がない人でも、こなれて見えるものが多い。今日、私が着ているジャケットはその代表格ではないでしょうか。ウエストがシェイプされていて、背中の開きやタックが入った袖のボリューム感が羽織るだけで、おしゃれ上級者を演出してくれます。こんな背面のデザイン、なかなかないですよ。

茅野:後ろ姿にこそ、人のこだわりや生き様が映し出されると思っています。でも、背面に表情がない洋服が多い。後ろ姿が美しい人のほうがいいなと思ったので、デザインを入れ、ウエストも絞って、フェミニンさも出しました。
大沼:フェミニンだけれども、エッジがきいている。ここが大事なポイントですね。素材使いも、こなれ感に通じていると思います。私がインナーに合わせているメッシュのTシャツは、そのひとつ。オーセンティックなデザインが、メッシュになるとタンクトップと合わせれば、一枚で十分華やかになる。ボトムに何を合わせてもおしゃれになります。
茅野:セットアップなどにもイタリア製のビスコースを使用するなど、素材感にこだわったものは他にもあります。ビスコースは毛羽が目立つものが多く、シャープさが出るものは珍しいんです。デザインを引き立てる素材を考えた場合、この肌感のビスコースがちょうどよかった。素材からデザインを考えるデザイナーもいますが、僕は形のデザインと素材のデザインは別のアプローチで最初に考えて、後から合わせていく感じにしています。

大沼:カラーもちょっと他にはないものがそろっていますね。たとえば、カーキ色のシャツとパンツのセットアップも、グリーンの深みやストライプの入り加減が洗練されているんです。大人の女性に似合う色という感じ。赤も年齢を重ねていくと、ちょっと難しいかなと遠慮してしまうところ、CINOHでは、他の色とこう合わせたら素敵に切れそうとコーディネート欲を刺激してもらえるんです。
茅野:赤は、僕の中では“感情”を表す色だと思っている部分があるので、年に1度は差し色として、何かしらのアイテムに入れています。カーキのセットアップのストライプにピンクを入れるなどの配色も、シーズンごとに変えています。

大沼:ネイビーの色も、群青色というのか少し違う。グレーも、アイテムによって全然表情が違うものがそろっていますね。そして、アイテムでいえばボトムが圧倒的に秀逸。私はパンツがデザインもはき心地も気に入っていますが、基本的に丈が長めのような気がします。これは意識しているんですか。
茅野:あえて長めに設定しているところはあります。もともと、ボトムに関してはシューズとのコーディネートなど、着る人のスタイリングによると思っているので、好みの丈にカットしてもらったり、裾を折ったりして、自分仕様で楽しんでほしいと思っています。
大沼:マーケットの売れ筋にこだわらない、茅野さん独自の美学を感じますね。
茅野:マーケットの動向より、自分が美しいものを作りたいと思い、実行している結果です。
大沼:タイトスカートの美しさも、ほかで探してもなかなか出会えないものだと思います。ポケットをつけてワークパンツ風のひねりをきかせているところが、CINOHならでは。どこか少しだけカジュアルダウンしているところ。でも、はくとヒップのラインがとてもきれいに出て、やっぱりセンシュアルなんですね。鍵とスマホだけをポケットに入れて出かけられる機能性までカバーしている。本当に考えられてますよね。
茅野:ウエスト部分にコインポケットがあるのに気がつきましたか。ノリでつけたんですけど、スマホ以外に持ち歩いた方がよいものを考えたらコインが浮かんできて。
大沼:長めの丈もきいている。ヒールでもスニーカーでも似合う丈感。シャツをウエストインしても、トレーナーやパーカーを着てもいい。コーディネートのアイデアがいくらでも湧いてきます。これを着て出かけるのが楽しくなりそう。色違いでそろえたいぐらいですね。私、本当に気に入ったものは色違いで購入することが多いので、このタイトスカートも2枚買ってしまいそうです。

茅野:洋服って、気に入ったものを着るだけで気持ちが盛り上がるようなところがあると思うんです。
大沼:本当にそのとおりです。朝、その日に着る服で一日が決まるところがある。お気に入りの服を着ていない日は、なんだか落ち着かないですね。女性にとって、洋服は気持ちを切り替えるスイッチのようなものになっていると思います。
茅野:ちょっと気分が滅入っているときも、この服を着れば大丈夫みたいなところもあると思います。僕も、背中をひと押しするものになるようにという願いを込めて作っている。先ほども、マーケットはそれほど意識していないと話しましたが、自分の美学や意思は込めている。それに共感してくれる人の気持ちに寄り添い、ときに気持ちを高め、パワーを与える洋服をこれからも目指していきたいと思います。
対談でもあがったアイテムを中心に、茅野さんおすすめの洋服を大沼さんがスタイリング。流行にとらわれないデザインなのに、ディテールなどに今の気分を反映した洋服は一枚あれば、ぐっとワードローブが洗練されるはず。
①背面にニュアンスのあるワンピース

サマーウールの生地をぜいたくにバイヤス使いしているので、表情豊かなグレーを楽しめる。着ると体をやさしく包み込み、シルエットが美しい。足もとはヒールではなく、CINOHらしくマニッシュなローファーを合わせて。
②ポケット使いに遊び心を感じるタイトスカート

大沼さん大絶賛のタイトスカート。左上のポケットがコイン用。ハリのあるコットンは肌触りがよく、ストレッチもきいているので着心地抜群。シワになりにくいのもポイント。カジュアルダウンしたタイトスカートだからこそ、メッシュのシャツやハイヒールで女性らしさを加えるのがおしゃれ。
③パワーショルダーのワンピース

一見、ごくシンプルながら、肩にパッドを入れたパワーショルダーのロングワンピース。茅野さんのこだわりで長めの丈感で仕立てられている。CINOHの定番素材「REFINA(リフィナ)」で作られているのも特徴。特殊な技術で、通常、超長綿では出せない厚みとハリ感が生まれている。どんなコーディネートも映えるが、シンプルさを引き立て合う白いスニーカーを合わせると今っぽい雰囲気に。
④パジャマライクなセットアップ

カーキとピンクの配色がユニークなシャツとパンツ。ゆったりしたシルエットでリラックス感が演出できる。イタリア製のビスコースを使用しているので、上品な光沢とドレープが美しく出るなめらかさが魅力。単品で着ても素敵だが、セットアップにして着るとさらにスタリッシュ。足元は、ポインテッドトゥでエレガントさを加えると女性らしい雰囲気になる。
「CINOHのブティックは、アクセサリーやバッグまでトータルにコーディネートできるのも楽しい」と大沼さん。シューズはペリーコやオニツカ タイガー、アクセサリーはさまざまなブランドとコラボレーションしたものが好評だ。

CINOHデザインのオリジナルアッパーに、ペリーコが開発した独自のヒールをゴールドにした特別仕様の一足。9センチヒールだが、安定感があるヒールはドレスアップ用に持っておくと活躍するはず。

さまざまなデザイナーとコラボレーションしたアクセサリーが並ぶショーケース。イヤカフのデザインがさまざまに用意されているのも特徴。

フリンジバッグやサングラス、アクセサリーは、リゾートスタイルにも映える。サングラスは日本の職人技にこだわるアイウェアブランドayame(アヤメ)とのコラボ。アクセサリーは、デンマークの人気ブランドMARIA BLACK(マリア ブラック)のもの。


photos: Tomoko Hagimoto text: Rica Ogura
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茅野誉之(ちの・たかゆき)
1981年長野県生まれ。2004年3月に文化ファッションビジネススクール(現・文化ファッション大学院大学)を修了。2007年に「モールド(MOULD)」を設立し、2008-09年秋冬シーズンに前身となるブランドを立ち上げた。2014年春夏コレクションにブランド名を「チノ(CINOH)」に変更。TOKYO FASHION AWARD 2019年受賞後に開催されたパリの展示会以降、海外でも注目を集めている。“一瞬の時の中に存在するだけでなく、ワードローブ・想い出に残るモノ創り”を理念とし、高揚感のあるリアルクローズを提案している。
Instagram: @cinoh_official

大沼こずえ(おおぬま・こずえ)
広告、雑誌、カタログなど幅広く活躍中の人気スタイリスト。メゾンブランドからストリートブランドまでを自在にMIXして提案するモードなスタイリングにファンも多い。俳優からも絶大なる信頼を集め、指名が多い。
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