×

【大沼こずえのin Style】きものを洋服感覚で着回す

幼少期から、母親の影響で茶道に親しんでいたスタイリストの大沼こずえさん。「きものを特別なイベントに限らず、日常的に楽しんでみれば、おしゃれがもっと楽しくなります」と言う。今回は、洋服をコーディネートするように、一枚のきものを小物で変化をつけて異なる表情を楽しむポイントを教えていただいた。

まずは、フォーマルにもカジュアルにも着られる一枚を手に入れて

「きものは、直線でしか鋏(はさみ)が入っていないので、実はどなたの体形にも似合うお召し物。かしこまらずに、お気に入りの一枚を見つけてみることから始めてはいかがでしょうか」と大沼さん。気軽に装うことができると同時に、職人技が息づくアートをまとうような高揚感を味わえるのも、きものの魅力であると感じているそうだ。

さらに、サステナブルな視点からも、時代に合っているのでは? とのこと。「流行に関係なく、一点を長く愛用できるも、きもののよいところ。ニットの毛糸をほどいて編み直すように、仕立て直しができるので、家族の思い出の宝物として受け継いでいくのも素敵です」。 きもの上級者からも注目を集める、作法は押さえつつ、自由な感覚でコーディネートした3つの着回しスタイルをご紹介する。

さまざまな場面に映える万能な色無地

「色無地は一枚そろえておくと便利です。地紋が入ったものは、街着から、改まった席でも着られ、誰とも被(かぶ)らないドレスを持っているようなもの」と大沼さんはアドバイス。華やかな季節に合わせて、明るい陽光に映える黄色の色無地をセレクト。「黄色は、2025年のラッキーカラーでもあります。地紋には、上昇を象徴するラッキーモチーフの蝶々(ちょうちょう)が表現されているのもポイントです」。このきもの地は、碓井製糸の春繭「春嶺鐘月(しゅんれいしょうげつ)」を使用した、純国産糸で製織した素材であるところも特筆すべき点。春繭とは、芽吹いたばかりの柔らかい葉を食べた蚕が出す糸で織られたもので、柔らかく仕上がるのが特徴。逆に、夏の硬い葉を食べて育った蚕が出す糸で織られた秋繭は硬いとされていて、春繭のほうが人気が高いそうだ。

花や蝶のモチーフが優美
春繭を示す印

オリエンタルテイストで個性を演出

合わせた帯は、京都老舗の「岡重」の手描き友禅で表現した更紗(さらさ)文様袋帯。実はリバーシブルになっており、裏面にはよりフォーマルな経(たて)糸で文様を織り出す経錦袋帯を組み合わせている。この1本で、フォーマル、カジュアルどちらにも使用できる珍しい帯。草履も、帆布素材に組紐鼻緒のシーンを選ばず履ける万能草履。バッグは、帯のカラーとリンクさせた、デイリーにも愛用しやすいカーキのバッグを。3wayなので、和装にはクラッチで、洋服にはハンドバッグやクロスボディとして装える。

色無地 草花更紗文様 ¥220,000 袋帯 更紗文様袋帯 ¥275,000 帯締め 大和組 参考商品 帯揚げ 東京染江戸小紋 中條康隆作「雪輪三役」¥19,800 草履 ¥47,300/すべてEMON バッグ「フェラガモ ソフトバッグ」[W27×H18×D11]¥319,000/フェラガモ(フェラガモ・ジャパン)
手描き友禅のリバーシブル帯

チューリップ柄で春を満喫

京友禅の塩瀬(しおぜ)九寸名古屋帯を合わせたコーディネート。まるで、春らんまんのガーデンを表現したようで、衆目を集めること間違いなし。チューリップ柄の随所に金彩も施されているので、華やかな会食などにぴったり。バッグは、チューリップの柄にもある艶(つや)やかなえんじカラーを選んで。昔ながらの合切袋を洗練させたような巾着タイプのバッグは小ぶりでも容量が多いのも魅力だ。

塩瀬九寸名古屋帯「チューリップ尽くし」工芸染匠成謙 制作 参考商品 帯締め 和小物さくら 丸唐組×大和組リバーシブル帯締め ¥13,200 帯揚げ EMON 無地帯揚げ ¥10,780  草履 ¥47,300/すべてEMON バッグ「フラメンコパース」[W30×H20×D10.5]¥541,200/ロエベ(ロエベ ジャパン クライアントサービス)
帯には黒地にチューリップ柄が斜めに描かれている

セミフォーマルに着られる小紋

一般的には、型染めで製作される小紋を手描き友禅で表現した貴重な一着。余白の空間を生かした柄で、カジュアルな小紋を附下(つけさげ)のようにセミフォーマルに着こなせる。「年齢を重ねたら、黒よりも柔らかい印象になる紺色を選ぶのがおすすめです」と大沼さん。紺なら、学校の行事などにも活躍。縁起のよい、円取り牡丹(ぼたん)唐草で、祝いの席にもふさわしい。モダンな印象のため、洋服で愛用しているバッグを合わせてもお互いを引き立て合うコーディネートが完成する。

手描きの風合いが魅力の小紋

唐草模様で異国情緒あふれるスタイル

きものの唐草紋様とリンクをさせて、欧州唐草紋様の紹巴(しょうは)織袋帯を合わせ、スペインのモスク装飾のように統一感を持たせたコーディネート。この帯も、碓井製糸の春繭で織られているため柔らかい。ポイントで黄色や赤の糸を刺すなど、多彩な彩りがある帯は、バッグや草履は黒を選んで引き締めると、全体がシックにまとまる。ビジューが輝くクラッチは、オペラや歌舞伎などの観劇スタイルに似合う。さらに華やかさを加えるなら、口元は赤リップで彩りを。ちなみに、帯締めは、かつて武官の冠紐に使用されていた冠組紐で、セミフォーマルからカジュアルまで使用できるので、1本持っているとさまざまな場面で活躍する。

小紋 円取り牡丹唐草 京都・工芸染匠成謙制作 ¥253,000 袋帯 欧州唐草文様 紹巴織織匠万勝 ¥253,000 帯締め 平田組紐 冠組 ¥19,800 帯揚げ 京都和晃苑 シケ引き染め ¥19,800 草履 EMON 参考商品/すべてEMON バッグ「RVブーケ」[W31×H10×D6]¥237,600/ロジェ ヴィヴィエ(ロジェ・ヴィヴィエ・ジャパン)
大胆であり、繊細な色使いの帯

巴里(パリ)のモニュメントが描かれた帯で遊び心を添えて

落ち着いた紺色の小紋は、ユニークな柄の帯で遊び心を演出しても、きれいにまとまる。たとえば写真のエッフェル塔や凱旋(がいせん)門が描かれた一本。よく見ると、エッフェル塔や凱旋門はミモザやプードルを組み合わせたトロンプルイユ柄になっている。パーティなどで身につければ、カンバセーションピースとして会話も盛り上げてくれるはずだ。バッグは、きものの柄にある白に合わせて、艶のあるレザーのトップハンドルが美しく映える。巴里柄の帯に、フランスの名門ブランドのバッグをコーディネートするエスプリにも注目を。

小紋 円取り牡丹唐草 京都・工芸染匠成謙制作 ¥253,000 帯 加賀友禅伝統工芸士、日展会友、皇室献上「田嶋秀之作 巴里」九寸名古屋帯 参考商品 帯締め 綾竹組 参考商品 帯揚げ EMON 無地帯揚げ ¥10,780 草履 EMON 参考商品/すべてEMON バッグ「レディ D-ジョイ」[W22×H12×D6]¥750,000/ディオール(クリスチャン ディオール)
帯には、プードルやミモザ、街頭や石畳で構成されるエッフェル塔や凱旋門が

日常に着やすい紬

大沼さんは、「普段に愛用できるきものを仕立てるなら、紬(つむぎ)から始めてみてはいかがでしょうか。友人とのお出かけから、気軽に着られます」とアドバイスする。長く愛用できるものを手に入れるなら、すべての工程が手作業で仕立てられた「本場結城紬」など、美しい伝統工芸の一品を。本場結城紬とは、真綿に撚(よ)りをかけず、ふっくらと紡いで糸をつくり、地機で手織りにて織り上げた結城地方(茨城県)の伝統的な紬。紬は、着ていくうちに肌に馴染(なじ)むので、育てていくような楽しみもある。稀有(けう)な工芸品であるきものに敬意を表して、足元の草履も熟練の職人が手作業で仕上げた本革草履を合わせたい。草履の天を一回り小さく削り、周りを二重のリング状に仕上げた細部にこだわりが息づくものだ。

絣柄のモダンな紬
本間結城紬の証

モード感をプラスしたデイリースタイル

帯に、濡(ぬ)れ描き染め技法(フリーハンドの技法)で市松モチーフを描いたものを選んだコーディネート。この市松は、100年近く続く図案だが、今見てもなお新鮮な印象を醸す。ある意味、幾何学模様と解釈できる絣(かすり)に、市松の帯を合わせてモダンさを際立たせた組み合わせは、洋服感覚で着られるはず。バッグや草履を、きものと同じカラートーンでまとめると洗練された雰囲気に。バンブーハンドルのバッグは、きものにしっくりと馴染む定番として、ワードローブに一点そろえておくとよい。

本場結城紬 変わり絣 参考商品 九寸名古屋帯 に志山染匠 濡れ描き市松重ね ¥165,000 草履 ダブルリング草履 参考商品 帯締め 内記組 三色締め暈し ¥15,400 帯揚げ EMON無地帯揚げ ¥10,780/すべてEMON バッグ「グッチ バンブー 1947」[W17×H12×D7.5]¥594,000/グッチ(グッチ クライアントサービス)

ワンピース感覚で楽しめる華やぎセミフォーマル

西陣で織られたオリエンタルな雰囲気の名古屋帯は、ラメ感のある糸が彩り、宝石のような煌(きら)めきを放つ。製作した桝屋髙尾は、皇室御用達の由緒正しい織元。帯締めにも、セミフォーマルで使用できるものを合わせれば、ホテルでのディナーやギャラリーのオープニングレセプションなど、注目が集まるような場所にもふさわしい紬のコーディネートが完成する。バッグは、フォーマル感のある小ぶりなトップハンドルがよく似合う。カラーは、ニュアンスのある藤色で、フェミニンさを加えて。

本場結城紬 変わり絣 参考商品 帯 西陣 桝屋髙尾謹製 アメダバード花文 名古屋帯 参考商品 草履 ダブルリング草履 参考商品 帯締め 平田組紐 冠組 ¥19,800 帯揚げ EMON無地帯揚げ ¥10,780/すべてEMON バッグ「ミニ イジィデ」[W22×H16×D12]¥594,000/ヴァレクストラ(ヴァレクストラ ジャパン)
螺鈿細工のような美しい帯

※きもの、帯については、お仕立て代は別途必要となります

information
EMON tel. 0120-38-7867
フェラガモ・ジャパン tel.0120-202-170
ロエベ ジャパン クライアントサービス tel.03-6215-6116
ロジェ・ヴィヴィエ・ジャパン tel.0120-957-940
クリスチャン ディオール tel.0120-02-1947
グッチ クライアントサービス tel.0120-99-2177
ヴァレクストラ ジャパン tel.03-5615-2379

Profile

大沼こずえ


広告、雑誌、カタログなど幅広く活躍中の人気スタイリスト。メゾンブランドからストリートブランドまでを自在にMIXして提案するモードなスタイリングにファンも多い。俳優からも絶大なる信頼を集め、指名が多い。

リンクを
コピーしました