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リニューアルしてパワーアップ! 日本の四季を味わうイノベーティブレストラン。ザ・リッツ・カールトン京都「シェフズ・テーブル by Katsuhito Inoue」

ヘッドシェフを務める井上勝人氏

2020年に誕生した「シェフズ・テーブル by Katsuhito Inoue」は、ごく限られたゲストを迎えていた、知る人ぞ知る場所だった。 今回のリニューアルでは、今までのイノベーティブな料理に加え、日本料理の要である「米」を取り入れた。また、より多くのゲストが楽しめるようにメニュー、内装ともに刷新。ヘッドシェフである井上勝人氏の指揮のもと次なるステージへと再出発した。

ザ・リッツカールトン京都に誕生した特別なレストラン

8席のみのダイニング。新しいレストランは、貸切ではなく、予約したゲストたちでテーブルを囲むスタイルに

新店舗の内装デザインは「伝統と継承」をテーマに、木をふんだんに使って京都の禅寺や日本庭園をイメージした。中央には大きな石造りのテーブルがあり、それを8人で囲むターブルドットスタイル。この日に予約をしたゲストたちが相席し、おまかせのコース料理を楽しむ趣向だ。

店内に入るとまず迎えてくれるのはテーブルの上の“ミニチュア庭園”。苔や季節の花や葉、木々がふんだんに使われた装飾は、さながら京都の景色をそのまま写したかのようだ。実はこれ、ホテル専属の庭師・鈴木浩樹氏が毎日“作庭”しているもの。この設えが壁面の重厚感のある石材や木材を用いた空間と調和し、禅寺の庭にいるような静けさに心が満たされていく。

以前と同様、店内の奥にはオープンキッチン。井上氏が率いる料理人たちがゲストの目の前で料理を仕上げる臨場感はそのままに、空間がバージョンアップされた格好だ。

The Ritz-Carlton, Kyoto Chef_s Table (17)

インスピレーションの源は日本の七十二候

ここでは、欧米の料理をベースに和食のテクニックを加えたイノベーティブな料理が登場する。

井上氏のクリエーションの源は日本の“七十二候”だ。

七十二候は、日本の伝統的な暦である二十四節気をさらに3つに細分化し、一年を七十二の期間に分けた暦のこと。それは農業や漁業などに密接に関わる生活の中での知恵でもあり、それぞれにつけられた自然界の移ろいや季節の特徴を表す名前からは、細やかな自然の変化を捉える日本人の美意識も感じられる。

こうした先人の知恵は、自分の料理の“道標”になるのだと井上氏は話す。

リッツカールトン京都7
パンに添えた、目にも美しいスプレッド。自家製味噌とジャージーミルク、丹波黒納豆フレークを混ぜたペーストの上を、大原野・咲里畑ハーブから届いたエディブルフラワー&ハーブが季節を伝える

実は井上氏、2019年にザ・リッツカールトン京都で「ラ・ロカンダ」のシェフに就任してからは、思い悩む日も多かったと打ち明ける。

京都に来る前、井上氏は東京、イタリアやスペインでの修業を経て、2011年より「ブルガリ イル・リストランテ  ルカ・ファンティン」でシェフのルカ・ファンティン氏と二人三脚で同店の味を作ってきた。その8年という日々は充実し、学びが多かったからこそ、まったく違う環境下で足元を固めるまでには時間がかかった。

「思えば歩んできた道をはずれるのが難しかった。本当にようやく最近、これまで破れなかった殻を脱皮できたような気がします」と振り返る。

自分を成長させてくれたのは、七十二候を実感できる移ろいゆく京都の自然の美しさ、地場の生産者と里海の恵みとの出会い、そして5年という京都で過ごした月日だった。

岐阜の生産者に塩分をリクエストして作ってもらうオリジナルのキャビアを黒胡麻とともに

井上氏の毎日は、近隣の神社へ地下水を汲みにいくところから始まる。

食材は9割が京都および京都近郊のもの。土地の食材のポテンシャルを引き出すには、その土地の水が合うという考えから。これは京都で日本料理を食べ歩くうちに気がついたことだという。

一方で、100%近隣の食材“だけ”で調理をするということにはこだわらない。料理人としての経験を通じて出会った生産者、そしてそこの産品と出会った時の感動は忘れられないし、それを素直にゲストに伝えたいと思うからだ。

「明石鯛の恵み 一口の純粋と 深み」。寿司のように手でつまんで食べる

大胆、かつ斬新な発想で生まれる料理

料理のスタイルも実に自由闊達。どの料理も、イノベーティブな発想のもと、伝統と革新を追求しながら楽しんで作っていることが伝わるものばかり。

たとえば、「明石鯛の恵み 一口の純粋と深み」という料理。一見、お寿司が出てきた? と思いきや、さにあらず。へぎ造りにした鯛の下にしのばせてあるのは、なんと梨の擦りおろしと梨のコンカッセ。擦りおろした梨は青レモンの果汁と塩でさっぱりと味つけられ、コンカッセには、向井酒造の古代米を使った甘い日本酒「伊根満開」と漬けた梅の液体でほんのり甘みと旨味を加えている。

見た目は日本料理風だが、食べると爽やかなカルパッチョを連想させるような味わいで、和と洋が見事に融合した楽しい一皿だ。

リッツカールトン京都8
ゲストの目の前で、こんがりと美味しそうに焼かれる天然車エビ

「明石天然車エビ西京焼き 薄焼き卵」と名付けられた料理は、字面だけ見ればもう日本料理だ。

しかし目の前の皿には、鮮やかな生地の上に立派なエビが横たわり、さながらタコスのよう。このタコスの皮のように見えるものが、黄身の色と味が濃い宇治の「ワビスケ卵」と、エビのコライユ(卵巣)で作った薄焼き卵。その上に、ドライトマトと赤柚子胡椒、白味噌をあわせたコンディメント(薬味)、西京焼きにしたエビをのせている。

エビの焼き方は、頭の部分は揚げてカリカリにし、身の部分はしっとりと焼き上げ、最後に黒文字でさっと燻製している。

これをタコスのように、手づかみで丸めて豪快にかぶりつく。日本料理的なアプローチながら、唐辛子の辛味とトマトの風味がヨーロッパの風を運んでくるのだ。

リッツカールトン京都9
「明石天然車エビ西京焼き 薄焼き卵」

遊び心あふれるこうした料理の流れで、本能に直結する美味を感じたのが、自家製のパスタだ。

この日は、鷹峯の赤唐辛子を練り込んだ自家製パスタに、淡路島の渡り蟹のソースと焼いた渡り蟹とトマトと昆布の泡を載せたものが登場。

ぷつりとした歯切れのよい生パスタにソースがからみ、京都らしい野菜の甘みと香りを内包した里山の美味と、蟹がもたらす海の美味が混じり合う。

一つの料理に海のもの、山のものを絶妙に融合させていくのも井上氏ならでは。海も山もある京都という土地へのリスペクトが、一皿ずつに感じられた。

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「冷製赤万願寺麺 淡路渡り蟹」

この後には、甘鯛や牛フィレなどの料理が続き、最後にもう一つのクライマックスが待っている。

それは七十二候を具体的に表現した米料理だ。井上氏が自ら、⽇本に1000も存在する銘柄の中から⽶を厳選。⽔や炊き⽅にもこだわったうえで、⾷感や季節を意識している。

今回取材したのは2024年の10月初旬。「寒露」の初侯に変わり、北からの冷たい風とともに雁が渡ってくる時期を表す「鴻雁来」の頃。この時期には「雁渡し」や「青北風(あおきた)」と呼ばれ、本格的な秋の訪れを告げる北風が吹く。

「天然茸のおじや」

そんな秋の香りを、長年付き合いのある富士山麓のキノコハンターが取る天然のキノコと米で表現。この時季だけの天然キノコを、七谷地鶏という鶏の出汁でおじやに仕立てている。

素材の旨みを存分に吸ったおじやを食べたら、日本の里山の原風景が目に浮かんだ。

コースが終了した時に感じたのは、「シェフズ・テーブル by Katsuhito Inoue」は、井上氏の眼差しを通して映る繊細な日本の四季をからだ全体で感じる場所なのだということ。

京都で生まれた国境を超えた料理を食べると、日本の美しさを改めて感じることができるだろう。

text: Misa Yamaji

お問い合わせ先

住所:〒604-0902 京都府京都市中京区鴨川二条大橋畔 ザ・リッツ・カールトン京都
電話番号:075-746-5522
営業時間:18:00からの一斉スタート
定休日:日曜日・月曜日
料理はおまかせコースのみ:¥35,000(税・サービス料込み)
公式ウェブサイト:https://chefstable.ritzcarltonkyoto.com/

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