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西海岸で巡るシネマな旅「iconicな風景 in アメリカ【サンフランシスコ編】

ロケ地としても人気のライト建築

もうひとつ、私が憧れてやまない風景がサンフランシスコ郊外にある。カリフォルニア州マリン郡のサンラファエルにある、Marin County Civic Center。敬愛するフランク・ロイド・ライトの遺作にして、彼が手がけた最大の公共建築だ。

シアトル サンフランシスコ シネマ旅

ペンシルベニア州の落水荘(Fallingwater)、ニューヨーク州のソロモン・R・グッゲンハイム美術館、日本では旧帝国ホテル、自由学園明日館などで知られ、日本でも愛されているアメリカの建築家だ。

Marin County Civic Centerは、街の中心部から車で30分ほど走った場所にある。ゴールデン・ゲート・ブリッジを走り抜け、気持ちの良いドライブを経て到着すると、まずその圧倒的な存在感に言葉を失う。丘をつなぐようにブリッジがかけられ、ゆったりと平面的に伸びる姿は、彼が生み出したプレーリースタイルを思わせ、しっかりとこの大地と結びついているように見える。後で聞いた話だが、ライトはこの土地を見て10分で、このアイディアを思いついたという。天才とはそういうものなのだと、この話を教えてくれたガイドが言っていた。

建物内に一歩足を踏み入れると、ドアや壁の表示など、ディテールの美しさに心を奪われる。ミッドセンチュリーのインテリアデザインが、今も現役で機能しているとは、この時代の造形を愛する者にとって夢のようだ。

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ここには、郡庁舎、裁判所、図書館など、市民のための施設が集まる。事前にツアーに申し込んでおけば、建築内を案内してもらえるだけでなく、建築の際に賛否両論があったこと、それがどのように決着したかというエピソード、モテ男ライトが巻き起こした恋愛スキャンダルなどについても語られる。その都度、質問が飛んだり、ライトファンが情報を追加してくれたり、創造性豊かな会話が展開したりと、他の参加者とのコミュニケーションも楽しい。自由に入館し見て回ることもできるが、時間が許せばぜひ事前にツアーへの申し込みをお勧めしたい。

途中、ライトがこの建築のアイディアを思いついたという丘でしばしたたずんだ。そこから見るMarin County Civic Centerは、静かに地球に下りた宇宙船のようでいて、自然にしっくりとなじんでいた。なおかつ自然の美しさや人工物のクリエイティビティを強調している、ライトらしい造形美を体感できる。そして、現役ながら長年そこにたたずむ遺跡のような風格さえ感じることができた。

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ここでは、アンドリュー・ニコル監督の『ガタカ』(主人公が働く航空宇宙局「ガタカ」として登場)や、ルーカスの処女作『THX 1138』が撮影されている。ユニークなのは、これらの作品いずれもがSFであること。レトロフューチャーな景観は、どこか郷愁を感じさせながらも、いつ見ても一歩先の世界を表現しているようにも感じられる。

1968年製作の巨匠スタンリー・キューブリック監督によるSF映画の金字塔『2001年宇宙の旅』でも、オリヴィエ・ムルグ、ジョージ・ネルソン、アルネ・ヤコブセンら、そうそうたる面々のデザインしたインテリアや小物が使われていて、決して色あせないミッドセンチュリーモダンの洗練を今に伝えている。

ライトの生み出したミッドセンチュリーの造形も、時代の価値観を超越した美を提示し続けているのだ。すべての世代に愛されるようにと願ったライトの思いは、時を超えて今も受け継がれていて、現在もここで結婚式をする人が多いのだという。
https://www.marincounty.org/depts/cu/tours

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取材協力:ブランドUSA https://www.gousa.jp/

Profile

牧口じゅん

映画&ライフスタイル・ライター。共同通信社、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭事務局、映画専門WEBサイト編集部勤務を経てフリーランスに。女性誌、ネット系映像メディアを中心に、作品紹介、コラム、インタビュー記事などを寄稿。都内で8歳の繁殖引退犬と暮らす。

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