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単衣(ひとえ)のきもので梅雨はらい【大沼こずえのin Style】

季節をまとうきもの。柄だけではなく、素材にも“季節もの”がある。6月と9月に着るきもの「単衣」はその代表例だ。じめじめとした今の時期と、まだまだ夏の気配を引きずる初秋を涼しい顔で過ごせる単衣は、きもの好きならそろえておきたいもの。スタイリストの大沼さんに、粋なコーディネートをご指南いただいた。

色無地、小紋、縮(ちぢみ)のおすすめ単衣3選

きもの愛好家には、無粋な説明になるが、そもそも「単衣」とはどんなきものかを大沼さんに教えてもらった。

「裏地をつけずに仕立てたきもののことです。通常の袷(あわせ)のきものと違って、胴裏(どううら)や八掛(はっかけ)といった裏地がありません。そのため、涼しくて軽いので、梅雨時や残暑が残るうっとうしい暑さの季節にちょうどよいのです。裏地がないリネンのワンピースのようなものですね」と大沼さん。

最近では、温暖化に合わせて、5月から着ることも許されるようになってきたそうだ。

「色や素材の違うものをそろえておけば、季節の変わり目も快適に和装のおしゃれを思い切り楽しめます」

大沼さんがおすすめするのは、次にあげる三つの異なる素材の単衣。目にも涼しく、華やかさも感じるものなので、さまざまなシーンで活躍するはず。

きもの EMONオリジナル¥165,000(仕立て別途) 帯 錦工芸 本唐織(ほんからおり)本袋帯¥638,000 夏単衣用帯締め¥16,500 絽の帯揚げ¥16,500 草履 EMONオリジナル¥55,000/EMON バッグ「トスカ バーチ」(W31×H19×D9cm)¥1,925,000/ボッテガ・ヴェネタ
ボッテガ・ヴェネタ ジャパン tel. 0120-60-1966
本唐織のトルコ文様が美しい帯

【色無地】

「この色無地は、色出しがポイントです。深いグリーンで、ネイビーのようにフォーマルな印象で着られますが、より洗練された雰囲気になります」(大沼さん)

この色無地に使われているのは、「光悦縮緬(こうえつちりめん)」。縦方向にシボを立たせ、畝状に織り上げているので、肌にまとわりつきにくい特性があり、単衣に最適な素材としてよく用いられている。

合わせた帯は、表地と裏地が一体となり、筒状に織り上げられた「本袋帯(ほんふくろおび)」。中でも、本唐織と呼ばれる最高級の織物。「トルコタイル文」というオリエンタルな配色が魅力で、色無地にほどよく個性を添えている。足もとの草履は職人技が光る逸品。全工程を職人技の手作業で作られている本革エナメル加工で、天板に切り込み細工が施されている。5分のコルク芯を3枚重ねた仕立てのため、軽いのも特徴だ。

バッグにも、草履と同じ色調で、クラフトマンシップ息づくボッテガ・ヴェネタのイントレチャートを。荷物がしっかり入る大きさを選べば、会食や観劇、ギャラリー巡りなど、どんなお出かけにもぴったりなコーディネートになる。

中條康隆作のフランス縞(しま)江戸小紋¥363,000(仕立て別途) 錦工芸本唐織本袋帯¥638,000 夏単衣用帯締め¥16,500 草履¥47,300/EMON バッグ「トランカルー」(W23×H17.5×D10cm)¥335,500/マルニ
マルニ ジャパン クライアントサービス tel. 0120-374-708 
縞の束が交差する様子がわかる
本唐織の立体感が格調高さを感じさせる

【小紋】

「このきもの、表と裏で色が異なるんです。表は涼やかな水色で、裏はラベンダー色。歩くたびに足もとにちらっとパープルがのぞくのがとてもおしゃれ」(大沼さん)

柄にも、エスプリがきいている。「フランス縞」と呼ばれる柄で、縞の束が交差する独特なデザイン。名前の由来は作家の宇野千代が名づけたとも、パリのセーヌ河をデザインしたものだからとも言われ、諸説ある。水の流れをイメージしたものなら、それだけで気持ちも爽やかになる。裏は、繊細な柄を染めるのに向いているシゴキ染でラベンダー色に染め上げられている。ラベンダーも、6月から開花する花なので、季節を取り入れた配色だ。

このきものに合わせたのも、「本袋帯」で、最高級の織物である「本唐織」。柄は、格式高い有職(ゆうそく)文様の「小葵臥蝶文(こあおいふせちょうもん)」で、古典文様を新鮮に感じる現代の配色になっている。草履は、1寸2分バイカラーの本革エナメル草履。これも全工程を職人が手づくりしている。

バッグは、遊び心のあるマルチカラー。ゴールドのパーツがビジューのような存在感を放ち、華やぎを添えてくれる。

きもの EMONオリジナル¥418,000(仕立て別途) 九寸名古屋帯 西陣老舗機屋「帯屋捨松」鳥花立木文¥165,000 帯締め¥16,500 絽の帯揚げ¥16,500 ダブルリング草履¥55,000/EMON バッグ「セリーヌ アントワネット ミディアム」(W27×H16×D9cm)¥605,000[予定価格]/セリーヌ バイ エディ・スリマン
セリーヌ ジャパン tel. 03-5414-1401
ヨーロッパの文様をほうふつとさせる柄の帯

【縮】

「ネイビーに板締めの白いラインがきいていて、凛(りん)と格好よいたたずまいを演出できる一枚です。帯に淡い色を選べば、涼しさを感じさせることができます」(大沼さん)

結城紬(つむぎ)は、本来、撚(よ)りのない無撚糸を使用する織物だが、結城縮は、緯糸(よこ)に撚りのある強撚糸を使用する。そのため、凹凸のあるテクスチャーに織り上がり、シャリ感が出るので単衣に適した素材になる。この生地は、京都で板締め絞りで染め上げられている。板締めとは、板にまくように生地をたたんでから瓶に入れて染める技法。板の部分は染まらずにシャープなラインとして白地が残るのだ。

帯には西陣織で繊細な植物と鳥の柄が優美さを添えるものを選んで、シャープな板締めの柄とのコントラストを楽しむのが面白い。草履は、熟練の職人が手がけた本革草履で、天を一回り小さく削り、周りを二重のリング状に仕上げた凝った作りが特徴だ。

バッグには、アクセントカラーにもなるボルドーカラーを。ヴィンテージ感漂うデザインが、女性らしさを加えてくれる。

足袋も衣替え

どんなに蒸し暑くても、素足になることができないきもの。せめて、気分だけでも夏仕様にしたいところ。快適で、おしゃれ心も満足させてくれるのはレースと麻の足袋。単衣だけではなく、夏のきものにも合わせることができるので案外長い期間はける。こういった細かい部分にこだわってこそ、真のきもの愛好家といえる。

黒地に白いレース、白地に白いレースなど、きものに合わせてはき変えたい。各¥1,320/EMON
さらりとしたはき心地の麻足袋¥4,510/EMON

ひと味違ったきものと出会えるEMON

これまでご紹介してきたきものは、あまり目にする機会がないものが多い。それは、EMONという大沼さん御用達のきものブランドのオリジナル商品が多いからだ。

ドラマの現場でも活躍する大沼さんが、プライベートではもちろんのこと、仕事用の一着を探すためにもよく利用する一軒。これまで、一般のお客さまをお迎えするスタイルではなかったが、5月からリニューアルをして、予約をすれば訪問できるようになった。

EMONは、「伝統を守りつつ、新しい価値を創る」がコンセプト。「オーセンティックでスタンダードなきものや帯でも、小物ひとつで遊び心あるスタイリングに変わります。そのため、オリジナルから厳選した逸品まで、きものから帯、小物までトータルでそろえています」と話すのは、ブティックで迎えてくれるコンシェルジュの淀伸二さん。淀さんは、現代感覚のきものの装いに詳しいので、気軽に訪れて相談してみてはいかがだろうか。大沼さんが提唱する「洋服のように和装を楽しむ」スタイルへ近づくことができる秘訣(ひけつ)を教えてもらえる。

photos: Tomoko Hagimoto styling: Kozue Onuma(eleven.inc) text: Rica Ogura

Information
EMON SHOWROOM(要予約)
東京都港区南青山2-17-7 南青山若山ハウス1F
tel. 0120-38-7867
平日10:00〜18:00 土日・祝日休み
emon-style.co.jp

Profile

大沼こずえ


広告、雑誌、カタログなど幅広く活躍中の人気スタイリスト。メゾンブランドからストリートブランドまでを自在にMIXして提案するモードなスタイリングにファンも多い。俳優からも絶大な信頼を集め、指名が多い。

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