七宝に木象嵌。パテック フィリップ「希少なハンドクラフト 2025」展で発見する装飾工芸
パテック フィリップは4月5日から26日まで、スイス・ジュネーブの本店サロンで特別展「希少なハンドクラフト2025」を開催し、78点の新しい作品を一般公開した。類(たぐ)いまれな装飾工芸技術を発見する貴重な機会に、多くの人が訪れた。
パテック フィリップは4月5日から26日まで、スイス・ジュネーブの本店サロンで特別展「希少なハンドクラフト2025」を開催し、78点の新しい作品を一般公開した。類(たぐ)いまれな装飾工芸技術を発見する貴重な機会に、多くの人が訪れた。
ジュネーブでは4月上旬、世界最大級の国際時計見本市「ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ2025」が開かれた。パテック フィリップはそこで複雑機構を備えたタイムピースを含む15種の新作モデルを発表し、時計製造における傑出した技術力を改めて披露した。
時計製造の技術力に加えてパテック フィリップの卓越性の証しとなっているのが、装飾工芸の技術だ。中には4世紀以上にわたり受け継がれてきた伝統工芸もある。こうした希少な技術を継承しようと、パテック フィリップは七宝や木象嵌(もくぞうがん)、彫金など各分野の職人たちと協力し、毎年新しい作品を発表している。懐中時計、腕時計、ドーム・テーブルクロックのユニークピースと限定品を、世界中のプライベート・コレクターに納品される前に鑑賞できる唯一の機会が、「希少なハンドクラフト」展だ。
今年の78点の作品には、細密木象嵌や手彫金、手仕上げギヨシェ装飾や七宝など、さまざまな技法が盛り込まれた。

異なる色や木目の木材を精密に組み合わせて模様やデザインを作る技法が木象嵌だ。今年は初めて、ドーム・テーブルクロックの作品に応用された。「ジュネーブの港」と題したドーム・テーブルクロックには、41種類の色、質感、木目の異なる木から切り出された2,191枚もの突板(つきいた)が使われた。表現されたレマン湖畔の情景は、木片だけで作られたとは思えないほど、生き生きとしている。

伝統的な技法である七宝は17世紀から時計の装飾に用いられており、金属素材の表面に釉薬(ゆうやく)を少しずつ塗っていき、800度以上の高温で焼き付けて製作する。釉薬の原料の組成により、深みや輝きの異なるさまざまな色の表現が可能だ。七宝には多様な技法があるが、特別展ではそれらのたまものである多くのすばらしい作品が展示された。
極細の筆で何層にもわたってモチーフを描くのが七宝細密画だ。17世紀のオランダの静物画をもとにした懐中時計「花と昆虫」や、ジュネーブの画家ルイ・ボディ(1870〜1960年)の作品にもとづいた懐中時計「レマン湖の帆船」には、限られたスペースの文字盤のキャンバスに精細で美しい絵画が描かれた。


ゴールドのワイヤーで作った囲いの中に異なる色の釉薬を塗り重ねていく技法は、クロワゾネ七宝とよばれる。中でも、「アマゾンの森」と名付けられた色彩豊かなドーム・テーブルクロックには、手作業で成形された全長約17.46 mのゴールドのワイヤー、半透明、不透明、乳白色の59色の釉薬のパレットが用いられたという。


グリザイユ七宝とよばれる、モノトーンの七宝技法を用いた作品も目立った。最近では用いられることの少ない装飾技術のひとつだという。黒色の釉薬の下地に、白色の釉薬を極細の筆で重ね塗りし、モノクロームの繊細な濃淡を表現する。今回、グリザイユ七宝を駆使した、黄道12宮の星座をモチーフにした12点のカラトラバの腕時計が披露された。


手で操作する機械を用いて金属表面に規則的なモチーフを施すギヨシェ装飾。ラベンダー畑にミツバチが飛ぶ、南フランスのプロヴァンスをモチーフにした懐中時計には、あらかじめギヨシェ装飾を施した金属素材の上に半透明の釉薬を塗るフランケ七宝とよばれる技法が用いられた。

手仕事による装飾工芸技術が凝縮した芸術作品の数々。これだけの数の新作を毎年発表しているパテック フィリップに、伝統工芸技術の継承者としての自負が感じられた。
text: Shunya Namba @Paris Office
photos: © Patek Philippe
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