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Mame Kurogouchi【2024年春夏パリコレクション】

今月初めまで開催された、2024年春夏のパリコレクション。パリならではの多彩な新作が披露された。それらの中から、マリ・クレールデジタル編集長の宮智泉が注目のブランドをピックアップ。

デザイナーの黒河内真衣子がショー会場に選んだのは、2020年にオープンした日本の美学や美意識の総合的な体験の場となっている「OGATA Paris」。日本の伝統や文化と、17世紀の貴族の邸宅だった建物が融合する空間で披露されたのは、伊万里に触発された服の数々だ。黒河内は、佐賀県有田町を訪ね、初期の伊万里の陶片から、過去と現代の陶工たちのものづくりをめぐる対話に耳を澄ませ、記憶のかけらと白磁素地の「あわい」から立ち上がるものがたりを、服へと翻訳したという。

全体を通した色調は、かつての陶工たちが恋い焦がれた生み出す過程で生まれた初期伊万里の淡いトーン。アシンメトリーなドレスには絞り染めが施されている。また、文様や柄にも黒河内の思いが込められている。型押しのように浮かび上がる柄は、「陽刻」と呼ばれる、初期の古伊万里に見られる技術のひとつに触発されたもの。

会場には、黒河内が集めた、陶片を含む古伊万里の数々や資料、アイデアが凝縮されたノートなどが展示されていた。服に投影されている黒河内の考え方や感性などの一端を知ることができ、より重層的にMameの世界を感じ取ることができる。

text: Izumi Miyachi

CFCL【2024年春夏パリコレクション】

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