バカラ、ミラノデザインウィークに出展。SF風空間で描く新たな世界観
©Philippe Garcia
4月下旬に行われた「ミラノデザインウィーク2026」にバカラが出展。サイエンス・フィクション(SF)のような演出のインスタレーション「CRYSTAL CRYPT(クリスタル・クリプト)」を展開し、これまでにない世界観で来場者を引き込んだ。
©Philippe Garcia
4月下旬に行われた「ミラノデザインウィーク2026」にバカラが出展。サイエンス・フィクション(SF)のような演出のインスタレーション「CRYSTAL CRYPT(クリスタル・クリプト)」を展開し、これまでにない世界観で来場者を引き込んだ。
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ミラノ・ブレラ歴史地区の中心に、4月21日~25日限定でオープンしたインスタレーション。暗幕をくぐると、外光を断った空間が現れる。キュレーションを担ったフランスのアーティストで振付師のエマニュエル・ルチアーニは、この空間を「宇宙的な大聖堂」として構想した。
1764年の創業以来、260年以上にわたり同じ土地で職人技を受け継いできたバカラ。その工場を「時間が閉じ込められた泡のような存在であり、神聖な大聖堂のような器」だと彼女は解釈する。

演出の中心となるのは、光や音響と呼応する未来的な映像作品だ。西暦5300年の仮想世界というどこか非現実的な映像は、実際の工場で撮影されたもの。溶解、吹きガラス、エングレービング、金彩など、多様な工程を担う約500人の職人が働き、12人のM.O.F.(フランス国家最優秀職人)を擁する現場である。
映像の中では、戦士のような人物たちがクリスタルと対峙(たいじ)する。まるで儀式のように繰り返されるその動きは、日々素材と向き合う職人の所作をダンサーとして再解釈したものであり、そこには力強さと繊細さの両方が宿る。

インスタレーションでは、バカラの技術と革新性を象徴する作品も披露された。英国人デザイナー、ベサン・ローラ・ウッドとのコラボレーションによる「Mille Fleurs(ミル・フルール)」は、19世紀半ばに誕生したバカラを代表するシャンデリア「Zénith(ゼニス)」を再解釈したものだ。

ねじれたアームやプリズムといった象徴的な要素はそのままに、アーカイブに残る花のモチーフを大胆に取り入れた点が新しい。色彩豊かなカラーパレットには、ベサンの感性が色濃く反映されている。

バカラの歴史において、国際博覧会はその名声を広める重要な契機となってきた。今回展示された「Haute Cristallerie(オート・クリスタルリー)」コレクションには、そうした歴史的作品の復刻も含まれる。造形や装飾の美しさに加え、カラークリスタルの豊かな表現もまた、ブランドのアイデンティティとして受け継がれてきたことが伝わる。

ジャポニズムの影響が見られる一対の花瓶「Vol de Jour」と「Vol du Soir」は1878年のパリ万国博覧会で発表されたモデルの復刻版。葛飾北斎や歌川広重の版画に着想を得た自然主義的な装飾は、彫刻、研磨、金彩、彩色といった複数の高度な技術によって支えられている。ブラッククリスタルはほぼ不透明に近い深みを持ち、カットの差異が際立つ。その質感には、どこか漆を思わせるものがあった。

没入感のある総合芸術として提示された今回のインスタレーション。あえて異なる時間軸を行き来しながらバカラの本質を体験する場であった。近年は若手アーティストとの協働にも積極的だ。新しいことに挑戦し、変わり続けることによって進化していく。それがバカラの本質なのかもしれない。
text: Shunya Namba @Paris Office
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