シアスター・ゲイツとHOSOOの展覧会 服と器で「社会を動かす力」を体現

アメリカの現代アーティスト、シアスター・ゲイツと西陣織のHOSOOの協業による作品を展示する「シアスター・ゲイツ:Glorious Robe」が8月30日まで京都のHOSOOギャラリーで開催されている。

アメリカの現代アーティスト、シアスター・ゲイツと西陣織のHOSOOの協業による作品を展示する「シアスター・ゲイツ:Glorious Robe」が8月30日まで京都のHOSOOギャラリーで開催されている。

シアスター・ゲイツは、アメリカ・シカゴのサウスサイドを拠点に活動するアーティスト。陶芸、彫刻、音楽やパフォーマンスなどジャンルを超えた表現を通じて、新しい未来を提案してきた。HOSOOも元禄元年(1688年)に京都・西陣で創業して以来、伝統的な染織文化をバックグラウンドに持ちながら、革新的なテキスタイル作りに取り組んでいる。両者は2024年に東京・六本木の森美術館で開催された「シアスター・ゲイツ展:アフロ民藝(みんげい)」をきっかけに対話を続けてきた。そこから生まれた作品の数々を一堂に展示している。

この展覧会の核心となる作品が「Dashikimono(ダシキモノ)」。アフリカの伝統的な民族衣装である「ダシキ」と日本の「着物」が融合したものだ。ダシキは1960年代のアメリカで公民権運動やブラックパワー運動の象徴としても政治力を持って広がっていったもの。それをHOSOOが古来、神にささげる布としても使われてきたヘンプ(大麻布)で制作。

また、もうひとつの重要な作品が「Obi」だ。3本の帯にはそれぞれ赤、金、銀で黒人解放運動の象徴でもある「フィストマーク(握り拳)」が織り込まれており、力強さも織りによって表現されている。これらの帯の意匠もHOSOOが所有する約2万点に及ぶ図案のアーカイブから引用したものだ。

2025年にロンドンで開催されたゲイツの個展「1965:マルコム・イン・ウィンター:翻訳の試み」で初めて公開されたこれらの作品が制作された背景にあるのが、貴重なアーカイブの存在だ。ジャーナリストで翻訳家の長田衛とパートナーの石谷春日が執筆、収集したマルコムXに関する本や原稿などの数々。ふたりは1965年2月21日、ニューヨーク・ハーレムでのマルコムXの暗殺現場に居合わせた体験をきっかけに、マルコムXに関する記事などの翻訳や伝記を刊行し、ブラックアメリカの解放運動を日本に紹介してきた。長田の亡き後も資料の保存と活用に尽力する石谷の姿勢に共鳴したゲイツが自身の芸術活動を通じてアーカイブに新たな生命を吹き込んだ。今回の展覧会ではその貴重な資料などを展示している。
会場には、ほかにも常滑で陶芸を学んだ経験のあるゲイツが作陶した作品「Vessel(器)」を、茶道の茶入の仕覆(しふく)のように織物で覆った新作や、HOSOOとゲイツの協働のきっかけとなった森美術館の「シアスター・ゲイツ展:アフロ民藝」に出品された作品も展示している。
展覧会のディレクターでHOSOOの社長である細尾真孝さんは「かつて黒人も民芸も隅に追いやられたという歴史もオーバーラップし、こうした素材と身体と歴史が交差する場をぜひ体験してほしい」と話している。
text: Izumi Miyachi
「シアスター・ゲイツ: Glorious Robe」
会期:2026年4月11日(土)~ 8月30日(日)
会場:HOSOO GALLERY (京都市中京区柿本町412 HOSOO FLAGSHIP STORE 2F)
開館時間:10:30–18:00 (祝日・年末年始を除く、入場は閉館の15分前まで)
入場料:無料
電話:075-221-8888
URL: www.hosoogallery.jp
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