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祇園の記憶を継承し次なる寛ぎの舞台へ 「帝国ホテル 京都」が開業

1890年、日本の迎賓館として誕生した帝国ホテル。その135年を超える歴史のなかで30年ぶりとなる4軒目の直営ホテルが、2026年3月5日に京都・祇園の地に幕を開けた。

祇園の路地を歩くような、歴史を活かした建築

帝国ホテル 京都
photo:Masatomo Moriyama

「帝国ホテル 京都」の舞台となったのは、国の登録有形文化財であり、京都市の歴史的風致形成建造物にも指定されている「弥栄会館」。芸妓(げいこ)組合やお茶屋組合の人々の寄付によって建てられ、祇園のランドマークとして長く親しまれてきた場所だ。

その記憶を受け継ぎながら、帝国ホテルならではの安心感と、祇園の非日常感を融合させた新しい舞台が2026年3月5日に誕生した。

外観の象徴となるのは、弥栄会館の建築様式を残した意匠。約1万6000枚ものタイルを一枚ずつていねいにはがして修復し、再び元の位置へ戻した壁面は圧巻だ。

弥栄会館
弥栄会館(提供:八坂女紅場学園)

館内は、弥栄会館の柱や窓枠を保存した「本棟保存」、京都の風情を感じる「本棟」、そして新たに増築された「北棟」という三つの建築構造で構成されている。

ホテル内部は、整然としたホテルのイメージを心地よく裏切る空間といえるだろう。あえて設けられた曲がり角や、街頭のように光が灯る廊下。まるで祇園の路地をそぞろ歩いているかのような気持ちにさせてくれる。

もともとの建物の構造を活かしたこの設計は、「宿泊施設」を超え、建物そのものが物語を語るような温もりを生み出していた。

空間に溶け込む「美」

館内のデザインコンセプトは「帝国、舞う」。

内装を手がけたのは、現代美術作家・杉本博司氏と新素材研究所を率いる建築家・榊田倫之氏だ。素材の選定から細部の仕上げまで、彼らの美学が貫かれている。

象徴的なのが、1923年の帝国ホテル二代目本館「ライト館」に使われていた大谷石へのこだわりだ。ライト館と同時代に採れた大谷石の古材を選定したという。こうした歴史の断片が、アート作品としてではなく、建物の一部として空間に溶け込んでいる。

エントランス
photo:Masatomo Moriyama

また、館内には杉本氏自身の作品が配されているだけでなく、かつての弥栄会館から継承された記憶も息づいている。解体時に損傷を与えないよう慎重に「生け捕り(保存)」された独自のモチーフが客室内など随所に再配置され、新旧の美が響き合う。

さらに、南面と西面のファサードを残したことで階高に制限があったが、水平方向の広がりを意識した設計により、重心が低く、包み込まれるような落ち着きのある空間が実現した。

モダンでありながら自然や歴史と融合したデザインは、訪れる者に深い安らぎを与えてくれる。

宿泊者ラウンジ

三つのエリアからなる唯一無二の客室

全55室の客室は、スモールラグジュアリーの魅力を体現する空間だ。

なかでも特徴的なのが、帝国ホテルとして初めて客室に畳を設えた「北棟」。伝統的な和の寛ぎと、現代的な洗練が調和した空間が広がり、さらに客室の窓の向こうには祇園の町が望める。

北棟グランドプレミア
北棟グランドプレミア

宿泊料金は1泊20万8800円(税・サービス料込、宿泊税別)から。本物志向の富裕層やインバウンドを見据えた価格設定だ。

他に、本棟保存にある弥栄スイートやヘリテージジュニアスイート、本棟のグランドプレミア バルコニー付などの客室がある。

弥栄スイート(リビングルーム)
弥栄スイート
グランドプレミアバルコニー付
グランドプレミアバルコニー付

最上位の「インペリアルスイート(弥栄スイート)」は、128㎡の客室に加え、65㎡のテラスを備える特別な部屋。宿泊料金は約300万円に設定されている(※時期により変動)。

インペリアルスイート
インペリアルスイート(photo Masatomo Moriyama)

また、シャンプー・コンディショナー・ボディーローションなどのアメニティは、英国王室御用達ブランド「ペンハリガン」を採用。

テラスからは東山の山並み、八坂神社や平安神宮をはじめとする街並みを一望。さらに、弥栄会館の象徴だった「鐘塔(ガゼボ)」もあり、プライベート空間として利用できる。祇園の歴史の中心に立つような特別な滞在がかなうだろう。

地下に広がる光と水のサンクチュアリ

プール

地下にはスパトリートメントやプールエリアがあり、館内のなかでもプールは圧倒的なインパクトを放つ。

客室階の華やぎから離れ、洞窟を思わせる暗がりの廊下を奥へ。期待に胸を膨らませてプールの扉を開くと、眩(まばゆ)いばかりの光と水の世界が広がる。壁面には弥栄会館の外壁にも使われている大谷石、そして計算し尽くされた照明により、地下にありながら驚くほどの開放感が漂う。

全長17.5mのプールで体を動かし、併設されたジャグジーで心地よい水圧に身を委ねれば、心身ともに研ぎ澄まされそうだ。

対話が彩る京都の味

オールデイダイニングの「弥栄」では、弥栄カレー(4700円)や石窯で肉を焼いた弥栄バーガー(4100円)など、帝国ホテル伝統の洋食を提供する。

弥栄店内
弥栄店内
弥栄カレー、弥栄バーガー
左から弥栄カレー、弥栄バーガー

カウンタースタイルのフランス料理「練」はコースのみ(3万8000円〜)。ここではシェフと会話をしながら、料理が仕上がる様子を目の前で楽しめる。

料理の主役は食材。大原の朝市や中央市場から届く旬の野菜、京都産の鴨(かも)など、土地の恵みが一皿に表現されている。さらに、ゲストの好みや空腹具合に合わせて味付けや量を調整する、きめ細かなサービスも魅力だ。

練
練 photo:Masatomo Moriyama

また、帝国ホテルといえば「オールドインペリアルバー」が有名。100年以上愛されているオリジナルカクテル「マウント フジ」をベースに、京都では、抹茶や水尾のゆずといった京都の素材でオマージュした「マウント比叡」を提供。カクテルの価格は3000円から。

オールドインペリアルバー
オールドインペリアルバー
マウント比叡(中央)
マウント比叡(中央)

さらに、祇園の夜景を望むバー「ザ ルーフトップ」(宿泊者限定)でのひとときも素晴らしいものになるだろう。

1階には、宿泊者以外も利用できる「ザ ペストリーショップ」もあり、季節に合わせた商品を手土産として、あるいは旅の思い出として。多くのゲストが立ち寄りたくなるスポットになりそうだ。

ザ ルーフトップ
ザ ルーフトップ
ペストリー

人生を豊かにする滞在の舞台

帝国ホテルが130年以上培ってきたおもてなしの精神は、京都・祇園という特別な場所でさらに深まりを見せている。

ラグジュアリーでありながら、祇園の路地を歩くような楽しさや素材の温もりを大切にした空間。非日常でありながらも、日常を感じる。訪れるたびに新しい発見があるホテルだ。

「帝国ホテル 京都」は、人生を豊かに彩る寛ぎの舞台として、記憶に残る滞在を約束してくれるだろう。

text: Tomoko Komiyama

お問い合わせ先

帝国ホテル 京都
開業日:2026年3月5日(木)
所在地:京都市東山区祇園町南側 570-289
料金目安:1泊1室 164,500円〜(消費税・サービス料込み、宿泊税別)
公式HP:https://www.imperialhotel.co.jp/kyoto

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