日常の境界をゆさぶる身体と思考の「実験室」へ 笹本晃の展覧会

彫刻や装置などを用いたインスタレーションに即興的なパフォーマンスを組み込み、領域を横断したアート表現を試みる笹本晃。10代で渡英し、現在アメリカを拠点に活動する彼女の過去20年ほどの活動を振り返る展覧会「笹本晃 ラボラトリー」が東京都現代美術館で開催中だ。その創作の源泉について話を聞いた。

彫刻や装置などを用いたインスタレーションに即興的なパフォーマンスを組み込み、領域を横断したアート表現を試みる笹本晃。10代で渡英し、現在アメリカを拠点に活動する彼女の過去20年ほどの活動を振り返る展覧会「笹本晃 ラボラトリー」が東京都現代美術館で開催中だ。その創作の源泉について話を聞いた。

笹本晃の作品を一言で語るのは難しい。机や配管、日用品などを使った“装置的な彫刻”がインスタレーションとして登場し、動いたり、音を立てたりする。そこに自らの身体が入り込んで作品として立ち上がっていく。今回の「笹本晃 ラボラトリー」の展示では、2005年から今に至る作品を「ラボラトリー=実験室」に見立てて回遊する構成の中に、彫刻やビデオ、身体表現が混在し、キネティック彫刻として動き出す作品も、魚のルアーや罠をモチーフにした新作も、生活の延長線にある行為が作品となったもの。アーティスト兼サーモン漁をする夫や釣りが好きな息子とともに海辺で暮らす日常は、創作の源泉でもある。「食べることから派生して作り、育てることを追求していくと作品に行き着くんです」と語るように、彼女にとって日常と表現は地続きだ。

制作のアプローチは「仮説から導いていくときもあれば、飛び込んでからひらめくこともある。入り口はいつも笹違います」。科学者や音楽家など他分野とのコラボレーションも多く、「答えのないものを他者と探すことが楽しい」。そして、作品を見せる展示は「通りがかりの人が、畳屋さんの作業をガラス越しに見るような感覚」。アーティストが導き出した答えやメッセージを伝えるというよりも、見る人の思考を呼び起こす場を提供し、「私もわからないことを、一緒に考えてもらいたい」という。誰より自分自身がそのプロセスを楽しみたいのだ。
社会における貧富の差や不公平に怒りをもち、日本を出た。やがて数学に興味を持ち、ダンスに夢中になり、アートに収斂していった。作品に通底するのは「ギリギリの線」。「最初は数学の漸近線に興味を持って、でも境界は物理の世界にもあるし政治にも社会にも人と人にもある。ものごとが変化する境界に興味があるんです。最初にのめり込んだダンスも、私自身が変身することでしたしね」

イェール大学大学院の彫刻科専攻長という顔も持つ。「教育は“俯瞰する場所”として、社会と関われます。アートは答えがひとつじゃないし、終わりはない。展示は一時的に見える場所になるだけで、すべては“思考中”のまま続くんです」。実験と観察、生活と創作、問いと遊びのあいだで、彼女の表現はゆるやかに循環し続ける。

ミッドキャリアの集大成となる回顧展
「笹本晃 ラボラトリー」
会場:東京都現代美術館(Museum of Contemporary Art Tokyo) 企画展示室 3F
住所:東京都江東区三好4-1-1
会期:11月24日(月・振替休日)まで
休館日:月曜日(ただし9月15日、10月13日、11月3日、11月24日は開館)、9月16日、10月14日、11月4日
開館時間:10:00 ~18:00(展示室への入場は閉館の30分前まで)。なお、8月・9月の金曜日は21:00まで開館
料金:一般 1,500円/大学生・専門学校生・65歳以上 1,000円/中高生 600円/小学生以下無料 ツインチケット(一般2枚):2,500円 9月13日(土)・14日(日)は学生無料デーとして中高・大・専門学校生は無料
問い合わせ:東京都現代美術館 03-5245-4111(代表)
公式サイト:https://www.mot-art-museum.jp/
避暑がてらアート写真の祭典へ
「浅間国際フォトフェスティバル2025 PHOTO MIYOTA」
軽井沢の隣町、御代田町の自然豊かな高原を舞台に、国内外の気鋭写真家たちの作品が屋外、屋内ともに展示される恒例のアートイベント。今年のテーマは「Unseen Worlds」。日常に潜む見えない世界を写真を通して探る試みだ。アートと自然風景が融合する開放的な空間は、訪れる人々に新たな視点と発見をもたらしてくれる。この夏、五感で感じるアート体験を。
会場:MMoP(モップ)
住所:長野県北佐久郡御代田町馬瀬口1794-1
会期:9月30日(火)まで
休館日:水曜日(8月13日を除く)
開館時間:10:00~17:00(屋内展示の入場は16:30まで、屋外展示は常時観覧可能)
料金:無料/屋内展示鑑賞チケット1,200円
問い合わせ:0267-32-3111
https://asamaphotofes.jp/
【雑誌『marie claire』のPDFマガジンダウンロードページ】
©︎marie claire/text: Mutsuko Ota, All Images©Aki Sasamoto. Courtesy of Take Ninagawa,Tokyo
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