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俳優・伊藤沙莉と作家・原田マハ、もの作りに向き合う二人の共鳴

沖縄県の南大東島で育つサトウキビを使って、ラム酒を作りたい――。そんな夢を追う女性を描いた、原田マハの小説『風のマジム』が映画化される。沖縄で生まれ育った主人公・伊波まじむを演じるのは、伊藤沙莉。実話をもとに、挑戦を明るく温かく描いた本作は、働く女性たちへの応援歌だ。真心を込めてもの作りに向き合う作品を通して、二人が感じたことは?

photo: Seiji Fujimori
hair & make-up: Aiko Okazawa
styling: Akane Yoshida
dress, necklace, earrings: FENDI

小説『風のマジム』は、沖縄産ラム酒作りに奮闘した金城祐子さんをモデルに描いた物語ですね。
原田マハ(以下原田):小説家デビューする前、ライターとして金城さんにインタビューさせていただいたんです。その際、「今から5年経って、金城さんのラム酒が多くの人々に飲まれ、私が小説家になっていたら、『沖縄産ラム酒を作った女性』の小説を書かせてください」と約束して。実現したうえに、その先の未来で沙莉さんが演じてくれた。こんな大きなギフトが人生に待っていたとは! という感じです。試写を見た金城さんはボロボロ泣いて感動していました。

伊藤沙莉(以下伊藤):ホッとしました。実話を発展させて小説が生まれ、さらに映画になっているので、必ずしも金城さんの真似をしなければならないわけではないと思うんです。でも、実際にその人生を生きた人がいるとなると、やっぱり緊張しますね。「違う」って思われたくないという気持ちがあります。

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原田:沙莉さんは表面的ではなく、内から出てくるような表現をする方。演じている感じがなく、まさにまじむでした。役作りをあまりしないと聞きましたが、人物を自分の中に入れて現場で出すことは、沙莉さんにとって自然な行為なんですか?

伊藤:「やってみないとわからない」と思うほうなんです。プランを立てて現場に行っても、演出や相手のお芝居が想定と違うかもしれない。20代前半の頃、ある作品で「こう演じたい」という思いが強く、細かく考えていたことがあって。でも結局、全然思った通りにならなかった。その時に「私は用意するのはダメなタイプなんだな」と気づきました。脚本に書かれている通りに演じて、そこから感じたもの、生まれたものを大切にする。私たち俳優は0から1を作るわけではなく、1からどこまで広げていくかなので。

原田:だから自然に見えるんでしょうね。役を自分の血肉にして滲ませている感じで、説得力があるんです。沙莉さんは見たものや思ったことを自分の中に入れてエクスプレスする、つまり押し出す力を持っている。表現するには、この押し出す力が必要なんだと思います。

伊藤:“はてな”が自分の中に一つでもあると、物理的に動けなくなってしまいます。「どうしてこの人、今立ったんだろう?」とか思うと、頭が真っ白になる。だから、「どうしてここに行くのか」みたいなことは監督とよく話しますね。

原田:最近、初めて映画監督に挑戦したんです。以前はキュレーターとしてさまざまな表現者を融合させて展覧会を作ってきましたが、今回それを映画に求めました。現場には、いろんな職能を持ったスタッフ、個性的なキャストが集まっている。表現者がぶつかり合うところで、自分の軸がぶれることなく、映画を作り上げていくのは相当に大変だと気づきました。『風のマジム』は、芳賀薫監督の素晴らしい指揮のもと、沙莉さんがリズムを与えて、いい風を送っている。共演者と響き合って、いいオーケストレーションになっていますね。

©2025 映画「風のマジム」 ©原田マハ/講談社
©2025 映画「風のマジム」 ©原田マハ/講談社

豆腐店を営むまじむのおばあ、おかあも魅力的です。お二人が憧れるのはどんな女性ですか?
原田:おばあもおかあも、もの作りに誠実に向き合うクリエイターですよね。私自身は年代ごとにロールモデルを決めています。フランスの作家マルグリット・デュラスが50代になった時、文章で書くことに限界を感じて、映画監督を始めたんですよ。その姿勢に励まされました。

伊藤:私の母は波瀾万丈な人生を送っている人なんですが、いつも楽しそうなんです。今ある幸せを噛み締めていて、素敵だなと思います。そういうふうに、幸せを幸せだとちゃんと思える人でありたいですね。まじむは出会いに恵まれている人。チャンスに気づいて、導かれていく。受け入れる余白があるんですよね。私も常に余白を空けておき、縁やタイミングを大切にしたいです。

原田:そういう思いで、まじむを柔軟性のある人に演じてくださったんですね。本当に、沙莉さんにぴったりです。

累計14万部の人気小説、待望の映画化。沖縄・南大東島のサトウキビからラム酒を作りたいと、社内のベンチャーコンクールを活用してビジネスを立ち上げ、契約社員から社長になった女性の実話をもとに、原田マハが描く感動の物語。夢に向かって奮闘する主人公・まじむの姿が、家族や島の人々との絆とともに描かれる。


Profile
伊藤沙莉
1994年5月4日生まれ、千葉県出身。2003年、ドラマでデビュー。2024年度前期NHK連続テレビ小説「虎に翼」で主演を務め、国民的な人気を誇る俳優に。その他、近年の主な出演作に、ドラマ「ミステリと言う勿れ」(22/CX)、「シッコウ!!~犬と私と執行官~」(23/EX)、映画『ボクたちはみんな大人になれなかった』(21)、『ちょっと思い出しただけ』(22)、『探偵マリコの生涯で一番悲惨な日』(23)などがある。10月には映画『爆弾』の公開も控えている。

原田マハ
1962年生まれ。作家、キュレーター。2003年、カルチャーライターとして執筆活動を開始し、2005年、『カフーを待ちわびて』で第1回日本ラブストーリー大賞を受賞、映画化される。『楽園のカンヴァス』『ジヴェルニーの食卓』など美術を題材にした作品をはじめ、多彩な小説を手がける。

KD_「風のマジム」本ビジュアル
風のマジム
出演:伊藤沙莉、染谷将太、尚玄、シシド・カフカ、橋本一郎、小野寺ずる、眞島秀和、肥後克広、滝藤賢一、富田靖子、高畑淳子
監督:芳賀薫
原作:原田マハ『風のマジム』(講談社刊)
製作・配給:コギトワークス
共同配給:S・D・P
特別協力:グレイス・ラム
105分
majimu-eiga.com
©2025 映画「風のマジム」 ©原田マハ/講談社




KD_原作本書影
風のマジム
著:原田マハ
320ページ ¥770
講談社文庫
©原田マハ/講談社




お問い合わせ先
フェンディ ジャパン tel: 0120-001-829




関連情報
【雑誌『marie claire』のPDFマガジンダウンロードページ】
©︎marie claire/photos: Seiji Fujimori / hair & make-up: Aiko Okazawa(Sairi Ito), Yoko Kawamura(Maha Harada)/ styling: Akane Yoshida(Sairi Ito)/ interview & text: Saya Tsukahara

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