西陣織の老舗「HOSOO」が、ミラノのデザインスタジオと協働で生まれた新作テキスタイルコレクションを日本で初公開

マリ・クレール編集長、田居克人が月に1回、読者にお届けするメッセージ。2025年4月に「ミラノ・デザイン・ウィーク2025」で発表された新作テキスタイルコレクション 「Hemispheres Collection」を中心に、西陣織の伝統的な衣装とイタリアの感性が融合した屏風を制作し公開。

マリ・クレール編集長、田居克人が月に1回、読者にお届けするメッセージ。2025年4月に「ミラノ・デザイン・ウィーク2025」で発表された新作テキスタイルコレクション 「Hemispheres Collection」を中心に、西陣織の伝統的な衣装とイタリアの感性が融合した屏風を制作し公開。
[INDEX]
古都京都での海外ラグジュアリーブランドのイベントが今年はことのほか多いように感じます。京都はイタリアのフィレンツェと姉妹都市の関係を結んでいますが、フィレンツェは言わずと知れたルネサンス発祥の地、メディチ家の庇護のもと多くの芸術家が誕生し、活躍した街です。京都もそれに劣らず8世紀から日本の文化の中心として、多くの芸術家たちをひきつけてきました。
そんな京都で8月10日(日曜日)まで西陣織の老舗「HOSOO」の「HOSOO GALLERY」で展示会が開かれています。開催に先駆け内覧会に行ってきました。
この展示会は4月7日から13日まで開催された「ミラノ・デザイン・ウィーク2025」で発表された新作のテキスタイルコレクション「Hemispheres Collection」を日本で初めてお見せするというものです。

「HOSOO」は建築、インテリア、ファッションなどの分野でのテキスタイルの展開を積極的に進めていますが、「ミラノ・デザイン・ウィーク2025」でも現地ミラノのデザインスタジオ「DIMORESTUDIO」とコラボレーションし、新作のテキスタイルを発表しました。
「The Hemispheres」(半球の意)と題されたこの展示会では、細尾家に受け継がれてきた約2万点もの未着彩の帯図案(「アタリ」と呼ばれる)に「DIMORESTUDIO」が独自の解釈で色彩感覚を加えました。日本の伝統的な文様(波、葉紋、菱紋など)に、ヨーロッパ、イタリアの色彩感覚がプラスされ、淡いグレージュやセピア、くすんだブルーやグリーンなど、新たな視点で表現されたテキスタイルが伝統美を見事に現代によみがえらせています。まさに伝統的な日本の職人技に革新的な技術や感性が加わり、掛け合わされ、現代的で洗練された印象のテキスタイルの新作が誕生したといえるでしょう。

西陣とは京都御所の西側5km圏内を指すのですが、西陣の名前の起源は、応仁の乱の時に西軍の陣が御所の西側にあったところから始まりました。そのエリアで、西陣織は1200年前、先染めの織物として誕生しました。公家や将軍家、裕福な商人など、お金に糸目をつけない客の要請に応じ、ひたすら「美」を追求し続けてきました。
「HOSOO」はそんな流れの中で1688年に創業。以降、上流階級や富裕な町人から熱い支持をうけ、織物を作り続けてきました。
時とともに西陣織の需要は低下していきますが、約150年前、フランスのリヨンで発明されたジャカードの技術を西陣織は取り入れ、その生産に応用しました。このような転換で、生産性も認知度も高まり、新たな時代が到来したのです。

また西陣の特徴として忘れてはならないことは、「協業」ということです。西陣を織り上げるための20以上の工程には、それぞれの工程ごとに1人の熟練した職人が付き、その技術が合わさって作られてきたのです。それは1社の内部で行われるのではなく、西陣という織物製作のシステムの中で行われてきたのです。自分たちの職業別組合で仕事を請け負い、それぞれが互いの仕事をリスペクトしながら対等に作業していく──こうした体制が、時代に合わせて進化していくための強力なベースになっていたのです。
そんな西陣でもグローバルに躍進しているのが「HOSOO」です。先代の時代から海外に目を向け試行錯誤を重ねてきたのです。パリで展示会に出展した西陣織を目にした建築家ピーター・マリノ氏から、西陣の技術で「ディオール」の店の内装に使う、コンテンポラリーなテキスタイルを作れないかとの打診を受けたのです。それまでの織機では32cmという幅の反物しかできなかったのですが、周囲の反対を押し切り、1年がかりで150cm幅の織機を完成させたのです。
これを機に「HOSOO」は、一気にテキスタイル事業を拡大させていきます。以降「HOSOO」は、「シャネル」や「ルイ・ヴィトン」といった世界のラグジュアリーブランドの店舗や商品、一流ホテルの内装にも使われ、世界的に認知されていったのです。
12代目の当主、細尾真孝氏は京都を拠点とする伝統工芸の若き担い手たちと幅広いジャンルのコラボレーションにも取り組んでいます。他分野との結びつきを広げることで、伝統工芸のさらなる可能性を探っているのです。
まだまだ日本の伝統工芸は世界では知られていません。言い換えれば、これは今後いくらでもチャンスがあるということです。細尾真孝氏は次のように語ります。「豊かな暮らしに“美”はなくてはならないものだと思います。我々は美の力を信じ、日本が誇る工芸の世界を、世界に伝えたいと思います」と。
2025年7月31日
【雑誌『marie claire』のPDFマガジンダウンロードページ】
©︎marie claire
リンクを
コピーしました