エルメスに学ぶ14㎝プレートの美学【藤﨑聡子のémoi style】
ワインジャーナリスト・藤﨑聡子が語る “émoi style(エモワ スタイル)”。第7回は、美しくバランスよく盛り付ける取り皿について。ヒントはサイズ感にあることをお伝えしていく。
ワインジャーナリスト・藤﨑聡子が語る “émoi style(エモワ スタイル)”。第7回は、美しくバランスよく盛り付ける取り皿について。ヒントはサイズ感にあることをお伝えしていく。
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自身でシャンパンバーを主宰する藤﨑さん。お店で使用する取り皿について、研究に研究を重ねたという。その中から会得した、サイズ感にこだわることで料理のボリュームが調整できるコツを伝授する。
大皿に盛って取り分ける料理のスタイルは、アジア圏で多いような気がする。分かりやすい例でいうと北京ダック。なかなか1人一羽にならないので、大皿に盛られた1羽を切り分けることになる。最初は、すごいのが来たねと喜び、カットしていく様を見るのも楽しい。しかし、問題はここから。自分に渡されるプレートはどんなサイズか、である。大きな取り皿だった場合、一切れ、というのはあまりにも淋(さび)しい。かといって、プレートの大きさに合わせるように、いきなり3切れ渡されても困る。逆に、小さな取り皿では気分も盛り上がらない。要は、食欲を絶妙にそそる取り皿は、プレートにのせる料理を少ない量でもボリュームがあるように感じさせてくれるサイズなのだ。
これは長年の課題であった。何かヒントはないか、盛ったときどうすれば美しく見えるか、今日はそこまで量が食べられないから少しでもバランスよく見せるようなプレートに出会えたらいいな、とどの国に行ってもずっと研究していた。そして「これだ!」と直感的に思ったプレートは、香港のディナーで供されたものだった。
思わずスタッフにメジャーか物差しを貸してほしいと伝えた。サトコ、どうした?!と同席者一同が笑っていたけれど、お構いなし。このプレートのサイズが素晴らしい、大きさを知りたいのよと話して、いざ測ってみた。結果は、直径14㎝。そこからである。14㎝のプレートを探す日々が始まったのだ。かれこれ18年前のことである。
彼らから紹介された、香港のローカルな食器店やブランドショップを時間の許す限り探した。メジャーも買った。こんなに意気込んでいるのに探し出すと見つからない。14㎝にこだわるのは世界中で私だけなのか?!と思うほど。お隣の深圳にも足を延ばした。ヒットしたものがあったが10枚からしか買えない。これは断念、でも深圳にあることが分かっただけでも収穫だった。
帰国してから、訪問する先々のレストラン、百貨店やブランドショップ、どこに行っても14㎝のプレートを見つける日々が続いていた。日本で改めて探し求めていて気づいたこと。14㎝の直径がベスト、実際使うのは11.5㎝ほどの部分がよい。まわりの2.5㎝は余白。このバランスがすごくきれいに見えると確信した。さらにプレート探しのハードルが上がる。中心部に向かって微妙にカーブしているものという、私にしか分からないような感覚。どのくらいリサーチしただろう……この願いがかなうときが来るのか……。
いや、来たのだ。それがこのプレート。エルメス〈Hデコ〉パンプレートである。

思わず歓喜のあまり涙を流したのは言うまでもない。このプレートに出会うまで何年かかっただろう。この〈Hデコ〉パンプレートは色違いがあるところも嬉(うれ)しい。

パンプレートだからパンだけ、という使用方法はもったいない。私は取り皿にも使いたい。自分のなかで、これが一番きれいに見えると思っているから。そうか、エルメスにあるのか! と分かった時点で足繁く通い、チェックするようになる。あるとき、別のシリーズの14㎝も発見した。



〈ウォーク イン ザ ガーデン〉パンプレートは、配色の美しさに目を奪われる。料理が茶色系の仕上がりでも、美味しさをしっかり引き立ててくれる。スイーツやショコラ系のデザートにももってこい。試しに、こちらも購入している。直径17㎝。


14cmと17㎝、比較してみてわかったこと。プレートのサイズは、デザインが最も美しく映えるよう、また柄のバランスが最適となるように作られている。そう思うとこのデザインで14㎝は圧倒されるかもしれない。すごい存在感だから。テーブルセッティングをすると迫力が伝わるかも。

やはり私の好みは14cmだった。以後エルメスで14㎝のプレートを見つけたら買うを繰り返し50枚は軽く持っている気がする。そう思うと深圳で10枚セットをためらっていた自分は何なのか……これからも14㎝のプレート探しは続くと思う。 ただエルメスを超えるものに出会えるかは分からない。エルメスはサイズだけではなく、自分が求めていた中心部分に流れていく角度と余白、これがドンピシャなのだ。
photos: ©Hermès text: Satoko Fujisaki
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エルメスジャポン
tel. 03-3569-3300
藤﨑聡子

ワインジャーナリスト・撮影構成ディレクター。世界中の食とワインのペアリングについて編集者歴25年以上ならではの目線で追求し続けている。わかりやすい言葉を綴(つづ)ることで長年のファンが多い。SM Entertainmentグループの韓国を中心としたカルチャー情報サイト・PIVImではスーパーバイザーとしても活躍中。
韓国情報⇒pivim.jp
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